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- Maid in the Dark -
2.性奴の章(3)


 「心配しないで、あなたには耐性があるのよ。あたしたちだってここに来たときに一本ずつ打ったのよ。お嬢様により良いご奉仕をするためにね。あなたが今日までいた施設の食事、その中に耐性をつけるための成分が混ぜてあったの。あなたはあたしたちより一年長く施設にいたから、耐性はより強いものになっているわ」

 「なぜ……」

 「そんなことをするのか? それは、いま言ったようにお嬢様にご奉仕をするため。ヘルズゲートを三本打った結果どうなるかは、あたしにも……」

 沙織は口ごもり背後の暗闇を振り返った。

 「手順通りにやれば問題ないわ」

 沙織の視線の先から声がした。
 先ほども聞こえた少女の声だった。

 「一度、躰の機能が停止するけど大丈夫よ。生まれ変わるためだから」

 ……機能が停止する。

 「口を」

 「あ、はい」

 闇からの声にうながされて、沙織は持っていたリングを香織にわたした。

 「ちょっと我慢してね」

 香織は真奈に言いながらリングを咥えさせ、両側から伸びている紐を頭の後ろできつく結んだ。

 「あが……」

 意識がぼんやりとしている真奈はされるがままだった。

 「そろそろかしら」

 闇の声が言うと、ドクン、と真奈の心臓が鳴った。
 そして突然、躰がバネのように跳ね上がった。

 「きゃっ!」

 「な、なに!?」

 「真奈!?」

 かたわらにいた香織と詩織はひっくり返り、足もとにいた沙織は蹴り飛ばされた。
 手首を拘束されたままで
 これまでの躰の震えとはくらべものにならないくらいの激しい痙攣。
 それはとても人間の動きとは思えなかった。

 「うごごごごごごごごご!」

 リングを咬まされた口から大量の涎とともに獣のような声が漏れる。
 見開かれたまぶたの中で眼球は裏返り、涙がぼろぼろとこぼれた。

 「うぅ〜っ! うぅ〜ぅ!」

 うつぶせになり尻を高く上げると股間からブシュブシュと勢いよく潮を噴いた。
 身体中の穴から体液を噴き出しながらのたうちまわる。
 まるで悪魔にでも取り憑かれているようであった。

 「ひいぃ」

 「真奈ぁ……」

 香織と詩織がそれを涙目で見つめている。

 「やばいよ……沙織ぃ」

 「お嬢様、真奈が!」

 香織に声をかけられて、沙織が蹴られた脇腹を押えながら闇に向かって叫んだ。

 「感覚の異変にようやく意識が追いついたのよ」

 闇からの声は落ち着いていた。

 「猿轡(さるぐつわ)が間に合ってよかったわ。あやうく舌を噛むところだった。すぐにおわるからあなたたちも落ち着きなさい。ヘブンを使うといいわ」

 三人の先輩メイドたちはどうすることもできず、震えながら見守っていた。
 眼前の事態から目をそらしたいがため、言われたとおりにワゴンからヘブンズゲートを持ってきて自らの首筋に押し当てた。
 地獄の責め苦のような光景は十分ほどでおわった。
 真奈は仰向けになりぐったりとしていた。
 呼吸が乱れ、胸が大きく上下しているのが生きている証拠だった。
 詩織がおそるおそる近づいて、口のリングを外した。
 真奈はもう声を出すことすらできなくなっていた。
 やがて、躰が完全に動かなくなり、睡魔が襲ってきた。
 床下から伸びた手が髪を掴み、意識ともども地の底へ引きずり込んでいくような、それは眠気というより死を予感させた。



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