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サキュバス日記
淫魔と霊媒師

○月×日

「お、テレビだ」

 カーテンの隙間から外を覗くと、たまたまテレビ番組の取材班のような一行が通っていた。
 サキュバスが居着くようになってからは、全裸で部屋の中をうろつくので基本的にカーテンは一日中閉めている。

「テレビ、どこ?」

 俺の背にドスンと重い胸をあずけて肩越しにサキュバスも覗く。

「取材みたいだな」

「なにかあったのかな?」

「あの和服の人、見たことある。有名な霊媒師だ」

「レイバイシ?」

「霊とか視える人」

「へえ! 悪魔も見えるのかな? あたしのこと見えるか聞いてみようか?」

「お前、たぶん普通の人にも見えてるぞ……そういえば、この先に『出る』って噂のマンションがあったな」

「ホント? 近くなの? コワ!」

「悪魔でも霊とか怖いのか? なんでも、ひとり暮らしのOLが衰弱しきって発見されたんだけど部屋中ありえないほど体液まみれになっていたとか、そのあと運ばれた病院で意識不明のまま消息を絶ったとか」

「なんだ、それモロに淫魔の仕業じゃない」

「淫魔ってそんなにいるのか?」

「うーん。いるんじゃない?」

 はっきりしない返事だった。
 霊媒師が足を止めた。
 こちらのアパートを見ている。

「やばい、こっち見てるぞ、隠れろ」

「悪魔だから?」

「全裸だからだよ!」

 取材班一行はベランダのすぐ下まで来ているらしく、息を潜めていると話し声が聞こえてきた。

「ここではないのですか?」

 霊媒師は緊迫した声でスタッフに尋ねていた。

「いえ、もっと先になりますが……ここもなにか感じられますか?」

「か……」

「え?」

「帰る!」

「ええっ!? ちょっと先生!」

「あれれ、戻っていっちゃった。どうしたんだろ? 急にお腹痛くなったのかな?」

 サキュバスは霊媒師の後ろ姿を見送りながら少しがっかりしたように言った。

「……そうかもな」

 それがこの淫魔のせいでないこと、そして後々騒ぎにならないことを願うばかりだった。


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