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サキュバス日記
淫魔の食卓

○月×日
 不覚にも熱を出して寝込んでしまった。
 サキュバスが心配してめずらしく料理(おかゆ)を作ってくれた。

「オイシイ?」

「ああ、意外と食える」

「よかった。あたし、料理とかやったの十年以上前で、それも何回かだけだし」

「十年前は十歳だからな。回数こなしてないのはしかたない。お前はこういうのは食べないの?」

「食べないわけじゃないけど……」

 それ以上言葉が返ってこないのでサキュバスを見ると、彼女はテーブルに重そうな胸を乗せ薄ら笑いを浮かべてこちらを眺めていた。

「なんだよ」

「ううん。自分が作ったものを食べてもらえるって、なんだかいいなあって思って。普段は自分が出したものを飲んだり飲ませたりだから」

「食事中にそんな話はよせ」

「はぁい」

 食事をすませ、風邪薬を飲んでふたたび横になると、サキュバスが不安げな表情で顔を覗き込んできた。

「大丈夫? おっぱい揉む?」

「なんでおっぱい揉むんだ……」

「前にあたしのおっぱい揉んで気分が良くなったとかだいぶ気が紛れたって人がいたから……」

「……いまはいい」

「ごめんね、あたしこういうところは十歳のままだからどうしていいかわかんない」

「……静かにしててくれ」

「はい……じゃあ、邪魔にならないように出とくね。帰ってきたとき死んでたりしてたら嫌だよ」

「死なねえよ」

 サキュバスはベランダのガラス戸をカラカラと開けると夜の闇に溶けていった。


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