*ShortStorieS* (1) 「お姉ちゃん」 姉が登校のしたくをすませて部屋を出ると、妹が声をかけてきた。 同じ高校に通う三年生と一年生である。 「今日、決めるんだね?」 妹の問いに対し姉は力強くうなずいた。 「下調べも十分やったし、ばっちり決めるてくるわ」 「ああ、これであたしもやっとお姉ちゃんの性欲処理係から解放されるのね」 「いいじゃない、フェラくらいしてくれたって。姉妹なんだから」 「それ、いろいろおかしい!」 「まんざらでもないくせに」 「あるわ! あたし精液の味も臭いも苦手だから」 「あんたゆうべ寝言で『ザーメンおいしい!』って言ってたわよ」 「隣の部屋まで聞こえるようなでかい寝言言うか! 百歩ゆずって言ったとしても『ザーメン』じゃなくて『ラーメン』だわ」 「彼氏ができたら飲んであげなよ」 「うるさい! しね!!」 姉妹はいつも通り騒々しく家を出た。 放課後。 文学部の部室である。 後発の読書部ができたため読書好きはそちらに移籍してしまい、現在は惰性で残っている者と幽霊部員の数でかろうじて部として成り立っている。 いま部室にいるのは部長の男子生徒と副部長の女子生徒の二名だった。 彼らが部長・副部長なのは、部室に顔を出すのがもっぱらこのふたりしかいないからだった。 「ねえ、あたし新しい言葉を思いついたんだけど」 少女は椅子を動かし同じ長机に向かう男子生徒に躰がくっつかんばかりにすり寄って声をかけた。 「え、な、なに?」 少年はどぎまぎしながらたずねた。 部室にふたりきり、少女が予想した通りの反応である。 「おちんちんのこと『男根』っていうじゃない」 少女の口から突飛な言葉が出たことに少年は驚いたようだったが、何しろ文学部であるから、真面目な話の可能性もあるので平静を装っていた。 「う、うん、言うね」 「男だけじゃ変でしょ、だから『女根』って考えたの」 「じょこん……?」 「女の根って書いて『ふたなりちんぽ』って意味なのよ。どう?」 「いや、どうって……」 「読みは『にょこん』のほうがいいかしら? 『めこん』はメコン川と混同するから却下ね」 「う、うん、まあ、新しい言葉だけど、使うことあるかな……一部のエロ小説くらい?」 「そうね、一部のエロ小説と……あたしとあなたの間で」 「え?」 少女は少年の手を取ると自分の股間に導いた。 そこにはあるはずのない膨らみがあった。 [次へ#] [戻る] |