Resurrection extend Metamorphose
extend Refrain(2)
綿瀬未空(わたせ みく)もまた、綺良、深香と一緒に退院していた。
綺良、深香と同様、マンションにひとり暮らしである。二十八歳で恋人はいない。かつて何人かの男と付き合った経験はあるが、それも長続きしなかった。その理由としては、自身の潔癖症に問題があるのではないかと分析している。異性との体液の交換が苦手であった。
キスだけでも怯んでしまう。
過去に精液を顔にかけようとした男は即時付き合いを断ったし、あろうことか小水をかけようとした男は、とっさにではあるが、思い切り股間にパンチを打ち込んで悶絶させ、そのまま逃げてしまった。よく傷害で訴訟を起こされなかったものである。男としても「顔に小便をかけようとして殴られた」とは言い難かったのかもしれない。逆に訴えられる可能性もある。性的嗜好以外では悪いところはなかったので、機能不全になっていませんようにと願うばかりである。
しかし、久魅に犯されたとき、体力的にはきつかったが、体液に関してはなんともなかった。むしろ、ヌルヌルがより興奮をもたらしていた。
未空は、綺良と深香の関係を見ていて、「早くどちらかが告白して付き合えばいいのに」と思っていた。あのふたりのあいだでは秘められていたことも、第三者の未空から見れば両想いであることがみえみえだったのである。
未空はべつだと思っていたが、入院中、自分も同性に対して特別な感情を持っているのかもしれないと考えるようになった。綿瀬久魅が同性と呼ぶにはあまりにイレギュラーな存在なので、まだ判断はつかないが。
未空は自宅にもどると、待ちきれないといったように歩きながら服を脱ぎ棚の奥の箱を取り出した。
箱には男性器を模したディルドやバイブレーターが入っていた。
潔癖症といっても性欲がないわけではない。未空の場合むしろ強いのではないかという自覚があった。
(今日は……これ)
一番大きなディルドを手に取った。挿入する部分だけでも二十センチはある。ローションの入ったボトルも持ったが「いらない」と箱にもどした。すでに下着はぐちょぐちょに濡れており、スカートに染みていないか帰り道に心配していたほどであった。
未空はベッドに乗ると下着まで脱ぎ捨てた。
脚を開いて膝をつき、躰を丸めてディルドの先端を秘裂にあてがった。
割れ目に押しつけながら前後になぞって、ディルドに愛液を塗りつける。
すでに太股の内側から膝まで濡れている。
ぬちぬちと音をたててすぐにすべりがよくなった。
「うぅ……ひさしぶりだから、きつい」
体内に押し込もうとすると少し痛みがある。
二週間の禁欲生活のあとである。「大きいから」と、もともとあまりつかっていなかったものを入れるには無理があった。
それでも少しずつ出し入れをくり返していると、一番太い亀頭にあたる部分がグボッと入った。
「うっ……きて、奥まで……きてぇ」
そのままグイグイとねじ込んでいく。
「かはぁ!」
まるでピストンのシリンダーを押し込まれるように、口から息を吐き出す。
(まだ、これくらい……久魅ちゃんのにくらべたら)
「はぁう」
ついにディルドが奥に到達した。
ゴリッと奥をこすると、今度は引き抜きはじめる。
カリ首が見えるほど出したら、また挿入を開始する。
愛液はあふれかえり、一往復もすれば出し入れはスムーズになった。
「おおっ、おおっ……いいっ、ひさしぶりの挿入イイッ!」
未空はベッドの上に顔からうつ伏せに倒れ、尻だけを高々と上げて抽送をくり返した。
(く、久魅ちゃん……犯して! 久魅ちゃんの、大きいのでっ……犯してぇっ!)
こんな無機質な作り物ではなく、久魅の熱く脈打つモノが恋しかった。
苦手だったはずの他人の体液だが、いまはそれで中も外もどろどろにしてほしい。
(ああっ、久魅ちゃん! 久魅ちゃんのがほしいよう)
「ミクちゃん」
「ひっ」
未空は突然女の声で名前を呼ばれたので、肩を震わせて固まった。激しく動いていたディルドを握る手もぴたりと止まった。
オナニーをしているすがたなどけっして他人には見られたくない。
固まったまま、目だけを動かして部屋の中を探る。
「そんなんじゃ、ものたりないでしょう?」
声はすぐ背後から聞こえた。
未空の肩越しに、長く艶やかな黒髪がファサッと流れてきた。つづいて、背中にやわらかいものがふたつ押しつけられた。それは先端の小さな突起だけが硬くなっている。
「く、久魅……ちゃん?」
聞き覚えのある声、話し方である。未空はおそるおそるたずねた。
「こんなものじゃ……」
挿さったままのディルドを握る手に、細いしなやかな指が触れた。
「ひっ」
指はディルドの端をつまむと、ゆっくりと未空の中から引き抜いた。
「ミクちゃんはぜんぜん満足できないでしょう?」
放られた粘液まみれのディルドが、未空の顔の横にボトリと落ちた。
すっと黒髪が持ち上がり、背中に密着していたふたつのふくらみを離れた。かわりに、腰の上に、ぺたん、ぺたんと手のひらが置かれ、秘裂には熱く脈打つモノが触れていた。
未空は首を曲げてふり返った。
予想通り、綿瀬久魅だった。
どうやって部屋に入ったなど考えるだけ無駄だ。彼女はもう我々とはちがう生き物になっているのだから。
その象徴が脈打ち未空の秘裂を叩いている。
「久魅ちゃん……」
久魅は、ニィと淫猥な笑みを見せた。唇の隙間からは発達した犬歯がのぞいていた。
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