Resurrection extend Metamorphose
extend Refrain(4)
本庁では「なにもなかった。引きつづき監視をつづける」ということになった。
「カウンターにもなにも出なかったんだな」
監視員はオペレーターにたずねた。
「極々微量の数値が出ていますが、綿瀬未空は入院前に魔と接触した可能性があるのでそれが残留しているのかもしれません。まだ細かいところまで測定できるようにはなっていないので誤差の範囲かと」
「ほんとうに役に立つのかね?」
監視員は今度はオペレーターでなく、となりに立つ長身の男に聞いた。男もトランシーバーのような機械を持っていた。
「私も技術者ではないので詳しい説明はできませんが、鬼がいれば針は振り切りますよ。それは確認済みです」
「そうは言ってもやつらは個体差がありすぎるだろう。そっちでオーケーでもこっちではまったく効かないなんてこともあるんじゃないのかね」
「たしかに。それを知るために所持してもらってますので」
「つくづくやっかいな連中だ」
監視員は身内と言い争ってもしかたないと、すべて鬼のせいにして話を切り上げた。
ぽつんと残された未空は自分の手を見つめていた。
かすかだが小刻みに震えている。握りしめても力が入らない。
ベッドの上は体液で冷たくなっている。シーツを替えなければならないが、気だるくて動く気になれない。
「またエッチなことしましょうね」
去り際に久魅がささやいた言葉を思い出す。
「つぎは……そう、お尻に入れてあげるわ。最高にエッチでしょう?」
「お尻なんて……」
そう言いながら期待している自分がいる。
「それまで、栄養のあるものいっぱい食べて待っててね」
どうして、最後にセックスと関係ないことを言ったのか。
(精気を吸われてるんだ……)
だから、全身に力が入らないし、なにもやる気が起きないのだ。
(それがわかったとしても……)
もう久魅なしでは生きられないと思った。
これが、魔に魅入られるということなのだろうか。
とりあえずシャワーくらい浴びようと、未空はズルズルと滑り落ちるようにベッドから降りた。
いまはなにも考えられない。気持ちいいんだからいいじゃない、という投げやりな感情も湧いてくる。
よろよろと立ち上がった。過去最高に躰が重い。
未空は肉体を引きずるようにしてバスルームに向かった。
綺良と深香は、リビングからベッドルームに、ソファからベッドの上に移動していた。
綺良は深香の膣内をさんざん突きまくって、やっとペニスバンドを外した。
「ふう」と息をついて、どさりとベッドの上に仰向けになる。
「本物とちがって萎えることはないが、結局、体力がもたないな」
となりで深香も仰向けになっていた。躰はビクン、ビクンと痙攣し、そのたびにガニ股に開いた股間からぴゅっ、ぴゅっと潮を吹いていた。深香は潮吹き体質だった。
「ベッド……汚して……ごめんな……さい」
断続的にその言葉をくり返している。
「気にするなと言ってるだろう。一回吹いても十回吹いてもシーツを替えるのは一度だけだ。つぎからは防水シートを敷いておくよ」
深香は痙攣を抑えるようにしばらく深呼吸をしていた。呼吸が整うと、ずっと大きく開いたままでぎくしゃくしている股関節をゆっくり閉じた。
「綺良様は……イけましたか?」
「あ、ああ……何度かな。なかなか具合がよかった」
「でも、中イキはまだです」
「中イキ? いや、いいんだ気にするな」
「不調法ですが、今度は私が」
「本当にいいんだ。私は深香が気持ちよくなれば満足だから」
綺良は深香が伸ばした手から慌てたようにペニスバンドを取りあげた。
顔が真っ赤になっていた。
「……そうですか」
それを見て、深香はあきらめてまた仰向けになった。
深香は考えた。綺良はずっとレズビアンで男役(タチ)だったから挿入されることに慣れていないのだろうか。あるいはポリシーかプライドがあって挿入させないのか。慌てぶりからすると、もしかしたら処女なのかもしれない。
追及するのもはばかられたので、深香は話題を変えた。
「淫魔が出現したので、来年の予算は上がりますね」
「ああ、まちがいない」
「飛鳥尽きて良弓蔵(しま)われる」
「そうだな、皮肉なものだ」
綺良は天井を向いたままシニカルな笑みを浮かべた。
「私が綺良様とこうなれたのも」
「なにもかも淫魔のおかげか……いや」
綺良は笑みを引っ込めて真剣な表情になった。
綿瀬久魅は行方不明のままだ。淫魔の影響で人間でなくなるということが本当にあるのかどうかはわからないし、彼女が生きているとして必ずしも不幸になっているとはかぎらない。
だが、彼女の家族は見つかるまで探しつづけるのだろう。
人間に大きな影響をあたえる『魔』は、管理されなければならない。
あいつらを野放図にしておけば、これからもこんなことが起こる。きっとこれまでもくり返されてきたのだろう。
綺良は上体を起こした。
「やつをどうやって封印していたか、調べておく必要があるな。おなじ手にかかるかどうかはべつとして」
「そうですね」
深香も仕事の顔になっていた。
しかし、手にはしっかりとペニスバンドを握っていた。
綺良はそれを見てまたボスンとベッドに身を沈めた。
まだ数日は自宅療養期間である。大事なことは本庁のほうでやってくれているだろう。もうしばらく楽しむ時間はあるはずだった。
「しかたないな、処女はお前にやるよ。大事にとっておく理由もない」
深香はそれを聞いて嬉しそうに、ニィ、と口を横に広げた。これまで見せたことのない淫猥な笑みだった。
綺良はそれを横目で見ながら「まるで淫魔のようだ」と思った。
Resurrection extend
Refrain
END
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