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Resurrection extend Replay
前編

 白い殺風景な部屋に彼女は居た。
 『黒い女』に襲われたあの夜、なんとか一命は取り留めたものの、いまだ彼女の意識は夢とも現実ともつかぬ世界をさまよっていた。
 虚ろな目はなにも見ておらず、小さく開いた口はなにも語らない。
 ただ、質素なパイプベッドの上に、白いガウンを着てぼんやりとした表情で座っている。
 四方を囲む壁には窓が無く、いまが昼なのか夜なのかもわからない。
 唯一、廊下に面した壁にだけ扉があり、鉄格子付きの小さな覗き窓がはめ込んであったが、そこから見える景色も、おなじような扉とただ白い廊下がつづいているだけだった。
 そもそも、彼女は外界に興味があるようには見えなかった。
 ただ、黙って座っているか眠っているだけである。
 ある時間帯を除いては。



 様々な機器に囲まれた部屋で、白衣を着た二十代後半から三十代半ばの三人の女たちが仕事をしていた。
 三方の壁には大きなガラスがはめ込まれており、外からも中からも見通しが良い。
 外側の壁には「ナースステーション」の文字が光っていた。

「そろそろはじまるわね」

 壁に掛かった時計に目をやり、ひとりが言った。
 時計の針は二十四針付きで、午前一時五十五分を指している。
 ほかの女たちも寄ってきて、幾つかあるモニターのひとつを覗き込んだ。
 どこか愉しげで、楽しいテレビ番組がはじまるのを待っているようにも見える。
 モニターは四分割されており、ひとつの部屋を四方向から見れるようになっていた。
 白い壁に囲まれたその部屋には、シングルのパイプベッドくらいしか物がなく、その上に白いガウンを着た長い黒髪の若い女が座っていた。
 モニターの上には「B303 綿瀬久魅(わたせ くみ)」と表示されていた。



 Resurrection extend

 Replay



 時計の針が午前二時を指したとき、モニターに映る久魅に変化が現れた。

「毎度、時間通りね……」

 看護士のひとりがつぶやく。
 べつの看護士がつまみを調節しボリュームを上げると、先程までのぼんやりとした姿からは想像もできないような激しい声が聞こえてきた。
 それは、悲鳴にも似た喘ぎ声だった。
 画面では、久魅が髪を振り乱し、躰をときに大きく、ときに小刻みに揺さぶっている。
 音声だけを聞けば、激しい自慰とも思えるが、自ら性感帯を弄ることはほとんどなく、躰の動きはまるで見えない何者かに犯されているようであった。

「今日はいつもより激しいみたい」

「いったい、誰にやられてるのかしら?」

 その動きの激しさ卑猥さに、看護士たちはモニターを見つめながら、ゴクリと唾を飲んだ。
 ひとりが手を伸ばして、画面の横のスイッチを操作すると、ドアのロックの状態が表示してあるパネルに「解除」の文字が点灯した。
 日課として、このあと、久魅が落ち着いたら、彼女の躰を拭いてガウンを替え、寝付けさせなければならないのだ。
 現場では長いパスワードを入力しなければならないが、ここからだとボタンひとつで鍵を開けることができた。

「いまのうちから開けといて大丈夫?」

「大丈夫よ。久魅ちゃん、いい子だから外へ出たりしないし」

 あの状況では鍵が開いたことにも気づかないだろう。
 それに、いつも通りなら、一時間程の間にエネルギーを使い果たし、動きまわることなどできないくらいぐったりとなってしまうはずだ。
 看護士たちはふたたびモニターに見入った。

「……やっと見つけたわよ、クミ」

 突如、背後から声がして、看護士たちは飛び上がった。
 やましい思いもあったが、なにより、現在このフロアには自分たちしか居ないはずであった。
 振り返ると、女が立っていた。
 全裸である。
 褐色の肌、黒い癖のある髪。豊満な胸を包むように腕を組んでいる。
 濡れた唇の端を吊り上げると、発達した犬歯がちらりと見えた。
 よく見れば、完全に人間の女とは言えない部分もある。
 なによりも異様だったのは、頭部に突き出た二本の角。
 そして、股間からは巨大な男根がそびえ立っていた。

「い、いつのまに! あなただれ?」

 女は看護士の質問には答えず、長い舌でぺろりと唇を舐めた。



 時計が午前二時を指したとき、綿瀬久魅の正面の空間が一瞬、ぐにゃりと歪んだように見えた。
 いつのまにか、あの黒い女が一糸纏わぬ姿で目の前に立っていた。
 ちょうど、鼻の先に散々久魅の中を突きまくった巨大な肉茎がそびえ立っている。
 視線を上げると、浅黒い顔が唇の端から発達した犬歯を覗かせて笑いながら見下ろしていた。

「ア、ア……」

 久魅の躰があの夜のことを思い出して、ぶるぶると震え出した。
 女は久魅の髪を掴むと頭を引き寄せ、すでにとろとろと透明な液体があふれ出している肉茎の先端を唇の間にねじ込んだ。

「うぶっ……!」

 むせる久魅には構わず、さらに深く突き入れ髪を掴んだまま前後に腰を動かす。

「えぼっ……おげぇっ!」

 久魅は涙と涎で端正な顔をぐしゃぐしゃにしながら、胃液の逆流を堪えていた。
 女は数度久魅の口内を楽しむと一旦引き抜いた。
 久魅の唾液でぬらぬらと光るそれは、より一層大きさと硬度を増してそそり立っている。
 女は満足げにそれを見下ろすと、ふたたび久魅の口内へ押し込む。

「むぐぅっ……!」

 どういうわけか、久魅はそれに抗うことができなかった。
 どんなに苦しくても、決まったストーリーをなぞるように躰が女のものを受け入れてしまうのである。

 ……どくっ!

 やがて、喉の奥で最初の噴火が起きた。
 女は久魅の頭を上から抑えつけ、びくん、びくんと腰を震わせる。
 その度に肉茎が跳ね上がり、先端から大量の白いマグマを噴き出した。

「おごごっ……おごぅ……」

 久魅が激しくむせる。
 大きく開いた唇のわずかな隙間から、白い液が逆流し、顎を伝って膝や床に溜まっていった。
 女がようやく一度目の射精を終えて、久魅の口を解放した。

「がはぁっ……!」

 久魅は大量の白濁液をまき散らしながら床に手をついた。

「げほっ、げほっ……おげぇ!」

 足もとが白く染まっていく。
 しかし、それがモニターに映ることはなかった。


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あきゅろす。
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