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淫獣たちの森
4.仲間の選び方(2)

 家に入るなりおかしな感じはしていた。
 猫型亜人種の知覚は人間のそれよりも高性能である。
 最初に異変を感じたのは嗅覚だった。
 性行為をしているときのような生臭い空気がタレイアの部屋に入る前から漂っていた。
 最初はタレイアの両親のものかと思っていた。
 そっと部屋を開けると臭気が強くなった。
 続いて聴覚に乱れた息づかいが聞こえてくる。
 薄暗い部屋のベッドに横たわる人影があった。

 「サリー……」

 ニケは親友を子供の頃からの愛称で呼んだ。
 小さな声だったが、ベッドの人影のニケと同じような三角形の耳がぴくんと動いた。

 「ニケ……?」

 影がわずかに揺らぐ。
 たったひと月振りだが、妙に懐かしい顔がそこにあった。
 ニケ同様、中性的ながら愛くるしい顔立ちである。
 どうやら、話せるくらいには元気なようだ。
 ニケは少しだけ安心した。
 それにしても、ますます強くなるこの臭いはなんだろう。
 まずいところに入って来たのだろうか?

 「サリー、具合悪いの?」

 「ううん、平気よ。どこも悪くないの……ねぇ、もっとこっちに来て」

 「うん」

 少し艶っぽい声と上気した顔を見ると、やはり取り込み中だったのかもしれない。
 あるいは、多少熱があるのだろうか。
 ニケは親友に歩み寄ろうとした。
 しかし、異変に気付き足を止めた。

 「サリー……なんで、縛られてるの?」

 タレイアの両腕は縄で縛られ、それぞれベッドの左右の脚に括られていた。
 見れば両足もその通りである。
 大の字にされ身動き出来ないようになっていた。

 「ああ、これね……なんでも無いのよ」

 タレイアは手首に掛かった縄を煩わしそうにグイグイと引っ張った。

 「いいから、早くこっちへ来て」

 じれたように口調がやや強くなる。

 「でも……」

 ニケは躊躇した。
 恐らくは家族がやった事だろう。
 何か理由があるはずだ。
 しかし、どんな事情ならこんな状態になるのか、まったく思い付かなかった。


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あきゅろす。
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