人形姫(四)
 僕は何処に迷い込んだのだろう。白兎の穴に落ちてしまったのだろうか。
 何者かわからないものに支配されている、恐怖。それに加え、この閉じられた在り得ない空間に存在する自分。そんな事から、僕の精神は極限に達しようとしていた。

『一体、何時になったらこのバスは停まるんですか?』

 思い切って、僕は運転手に訊ねた。

『停まりませんよ。このバスに目的地なんてありませんから』

 運転手は、何が不思議なことか、と言いたそうな口調で、唇に低く冷たい声を乗せてそう、答えた。

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