人形姫(十)
 けれど、元々体の弱かったあの子は、出会って三年目に僕の前から消え去った。花畑で眠るように、息を引き取った。それはまるで、お伽話の茨姫のように、再び目覚めの時がやってくるのを待っているかのように思えた。

 何故、今頃になって?

「誰も、私のこと思い出してくれないの。花畑で眠ってしまってから。だから、誰もここに会いに来てくれないの」

 いまの彼女はあの時のままだ。目の前で、花束を広げ、花飾りをつくっている。時間の干渉を全く受けていない。

「あれから、ずっとこの森でひとりぼっち」


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