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Access 3 絶対なる自信

あれから一週間…
俺は何事も無く日々を暮らしていた。

χが言った
"僕から離れて"
その言葉が忘れられない。
奴は何故そんなことを言ったのだろうか。
あいつにはどんな秘密があるのか…。
兎に角今は奴から目を離してはいけない気がしていた。

俺は京助に言われた通りになるべく単独行動を避けて過ごしていた。心のどこかで
(俺に限って命を狙われるなんて事はない)
そう言う気持ちがあったのだろう。
そしてそれが間違いだとも知らずに…。


――――――

「ねぇアスラ…あれから二宮君に会ったの?」

ボロアパートの一室…アスラのもとを訪ねて来たのは黒い革のつなぎを着た派手な印象のある女性だった。
アスラはにこやかな顔で畳の上に並べられた色とりどりのトイレットペーパーを眺めている。

「まだだよ」
「まだなの?!あんた、二宮君に何かあったらどうすんの!」
「大丈夫。まだ時間はあるから」
「時間って…」

女はファスナーを胸元ギリギリまで開け、壁に凭れ掛かると腕を組んだ。

「依頼の期限はあるかも知れないけど、相手が動き出したら話になんないじゃない。これならやっぱりあたしが受けた方が良かったわね」

黒いサングラスを掛け、長い紫の髪をかき上げる。そう、この女こそかの有名な女アサシン、ルーシレンス・アランである。

「報酬は百万、期限は一週間。その決められた時間内にちゃんとやるさ。相手は簡単に動いてこない、何故ならその患者の"A"のタトゥーの意味、俺は知ってるからね」
「え!?アスラ知ってるの!?」
「まぁね。ルーシィ、デュークが近くの本屋で立ち読みしてると思うから、呼んできてくれないかな?」

相変わらず笑顔のまま話すアスラ。
溜息をつき、ルーシレンスは渋々玄関に向かう。そしてくるりと振り返り、眉を顰めた。

「分かったけどトイレットペーパーを部屋に並べないでよ!トイレの匂いがするじゃない!」
「まだトイレに入れてないのに!?」
「そうよ!」

バタンッとドアを閉めれば室内が微かに揺れる。アスラはルーシレンスの後ろ姿を見送り、暫しまたトイレットペーパーを眺めた。


――――――

カツ カツ カツ

廊下を歩く今の俺は凄く酷い顔をしているに違いない。

"二宮君、君には今後、地元の小さな病院で働いてもらう。地元に戻れるんだ、君も有り難いだろう。あの患者は私たちが責任を持って面倒を見るから安心しなさい"

突然の異動命令。
確かに俺は正直嬉しい気もしていた。
何せあいつは危ない秘密を持っている筈。そいつと関わらなくて済むなら有り難いことだ。
だが今俺は好奇心で満ち溢れている。
あいつを手放したくない。

"…嫌です。もう少しここにいさせてください"
"無理な要求だな"

何を言っても無駄だった。
恐らく上はχの秘密を知っている。
ならば余計に気になってしまう!

その場は言葉を呑み、俺は院長室を後にした。だが俺はこれから奴を連れ出す。
そして一人で奴の秘密を探る…。
まるで物語のような設定だが、何だか俺にはその作戦が成功するとの絶対的な自信があった。…満ち溢れていたのだ。

「待ってろよ…χ…」

廊下の寒ささえも今の俺には味方に思えていた。







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