■笹目の元にメールが来たのは突然の出来事であった。 送り主はカセン=F・フィルフォーレ 他校に通う一個下の後輩であった。 内容は「笹目先輩助けてください!!!」 ・・・・・その文面に笹目は何かに予想がついたのかまたかと思いため息をついた。 そして返事を返すとその足で彼女が住む部屋に向かう。ドアを開けるとすぐに焦げ臭い臭いとともに彼女が抱きついてきた。 「うわーん・・・笹目せんぱーい・・・・!!!」 どうやら彼女は炊飯器でチョコケーキのようなものを作ろうとして失敗したようである。 ざっと部屋を見渡すとオーブンらしきものはソコには無かった。 時期が時期だけに大体の察しはつく。 「カセンさん・・・・とりあえず・・・・オーブンを借りに行きませんか?」 そして助けを求めに入ったのが隣の部屋。早乙女蘭姫の住むその部屋である。 ----- 「あ。めーちゃん!!!こんばんわー・・・!!!!!!!」 とインターホンを鳴らすと現れた彼女。 「それに。あ。カセンさん。どうしたんですか?」 しくしくと泣きながら笹目の後ろに隠れていたカセンが下を向きながら話し出す。 「アイツ・・・・・・チョコは毎年生徒会長から立派な包みの高い奴をもらってるみたいなんだって・・・・・・」 しくしくと泣きながらその対抗心に手作りのレベルの高い焼き菓子を作ろうと試みたのだが家には炊飯器程度しかなく仕方なく試行錯誤をしながら自己流でケーキに挑戦してみようとしたのだが失敗したらしい。 そこで笹目に泣きついてきたのが事の次第である。 オーブンは笹目の家にもあったのだが今は恋人兼、旦那の雪鷹が居候をしているので自宅に招待するわけには行かなかった。何故なら笹目もそれの準備をしようと思いながらも家に帰れば同棲生活。 どうやってバレンタインを過ごすかで悩んでたわけである。 と、そこにやってきた一通のメール。 出来れば自分もここのオーブンを貸してもらいたかった。 季節はもうすぐバレンタイン。その当日にさしかかった金曜日。 「明日の土日。よろしければこちらをバレンタインの調理場にお借りしてもよろしいでしょうか?」 そう言って笹目がお願いすると蘭姫は「いいよ」と二つ返事で返してきた。 「私も明日学校で配るチョコブラウニーやチョコクッキーを作ろうと思ってたんだ」 にこにことそういう彼女は”本命”のいなくなったその学校へ休む事無く通っている。 只本当に”渡したい”その人は遠くて近いその場所にあるのだが。 「チョコブラウニーに・・・チョコクッキー・・・・・・・」ハイレベルなお菓子の名前にカセンは驚きの表情を隠せずに居た。 「うん、毎年お兄ちゃんと乱鬼と友達に作ってたんだけどカセンさんも一緒に作ります?」 そう言って蘭姫が笑顔を向けるとカセンはブンブンと首を振った。 「私が作りたいのはチョコケーキなの・・・!!!!ケーキ・・・!!!絶対ケーキを作るんだから!!!!」 何にこだわってるのか分からないがカセンはチョコケーキが作りたいらしい。 「ならスポンジはどうします・・・・・?市販の元を買ってくるか既に出来上がったスポンジを使うか・・・・・・・・」笹目がそういうとカセンは「全部最初から自分で作るの!!!!!!!」 と勢い良く首を振った。 何が彼女をそうさせるのかは分からないがカセンはチョコケーキが作りたいらしい。 「じゃぁ。本を買ってくるところから始めましょうか。」 笹目はカセンの手を引いて本屋へ向かう事にした。 ■NEXT■ [*前へ][次へ#] [戻る] |