■「兄さん。」 中学教師、荻野白刃は珍しくその場に居た。 ここは華桜校長厳武の住まうマンションの一室。 悪趣味で絢爛豪華な装飾品の飾られたその部屋で白刃は兄と向かって話していた。 「・・・・・・・・・引退する気は無いんですか?」 「何をだ。白刃。」 そう言って椅子に座ってパソコンに目をやる厳武。 「・・・・・・何って。今の職業ですよ。」 ・・・・・・・・・・・。何を思って言っているのかは大体は察していたが厳部はソレにこたえる気はなかった。 そのまま口を閉じていると白刃がソレに言葉を続けた。 「学校側での不正やスパイ活動やその他の職権の悪用・・・・・・・・このまま続けるのは一教師として見逃せません。」 正義感溢れるその目にじろりと目線を合わせたが・・・・厳武はそのまま黙っていた。 「・・・・僕が・・・・ソレを公表しないと思っているんですか?」 流石に母親が違うといえど異母兄弟の自分の兄。 それ故にそれ以上手を出す事が出来ない事は白刃自身もわかってはいたが自分も一つのクラスを背負う中学教師としてこのまま進学を目指すかもしれない生徒の進路を護りたい意志があった。 特に。クラス委員の早乙女蘭姫。彼女は確実に華桜校に通う事は目に見えていた。 何故なら白刃もまた彼女の生い立ち事情を知る人間の1人だからである。 「白刃・・・・・」 頬杖を着いて厳武が白刃を見やる。 せめて・・・・ 「ならせめてスパイに使う生徒だけでも解放してあげませんか?」 彼が使っていた生徒はカセンの他にも沢山いた。 特別クラス。生徒会長華桜麗姫の在籍する精鋭クラスは殆どが彼の息のかかる生徒だった。 そこから卒業した生徒はまたスパイとして社会的に彼に貢献する。そのために育てられた特別クラスである。 「そうだな・・・・・・」 なら・・・・・・・ 「”なら白刃・・・・・”」 お前が・・・・・・・ 「”その代わりになるか?”」 「”え・・・・・・・?”」 その代わり。・・・・その一言には驚いた。 彼の息のかかったスパイにはカセンのように男女関係のある者もいた。 ソレを含めての ”その代わり” である。 「お前がスパイとして情報を割る気がないなら・・・・・・・・・・”脱げ・・・”それで・・・・・・・・・・・・・・”代役”の変わりに奴らを解放してやる」 「・・・・兄さん・・・・・・・?」 流石にそれには驚いた。だが厳武は大事な恋人を見やるような目で自分の下へと近づいてくる。 「分かりました・・・・・兄さん・・・・その代わり・・・・・・”生徒”たちの解放を願います」 白刃その唇を受ける事にした。 完全な近親相姦であるが以降はご想像におまかせします(ぇ -------- しくしくと泣き出すカセンに戒が拳を強く握る。 「”摘発しよう・・・・・・!”」 ・・・・・・・・もしかするとソレは辛い別れになるかもしれない・・・・・・・・・ そう思い戒が麗姫にメールを送ろうと携帯を見やる。 「いやまて。」 その数分前に携帯が鳴ったダイナからの一報である。 「・・・・あの校長。尻尾を切りやがった・・・・・・・。」 ”厳武”が校長を辞めたらしい。 その通達が入ったのである。 それは速報として雪鷹のSNSにも入っていた。 「・・・・・・・・次の校長は・・・・・”!????”」 ”荻野・・・白刃・・・!???” 「え・・・!???」 その言葉に真っ先に反応したのは中学生の蘭姫であった。 「白刃先生が高校の校長に・・・・・・!????」 どうやら厳武は自分の汚職の全てを彼に任せて引き継がせることにしたのである。 愛する”弟”を手に入れた・・・・・それに対しての”褒美”だった。 「兄さん・・・・・」 僕はそんな汚れた名誉要りません・・・・・・!!!!!!!!! 汚れきった身体で白刃はそう言ったが 「・・・・本当は近々切るつもりだったんだ」 ”お気に入り”の裏切りは知っていた。 だからこそ早めに自分の尻尾を切る必要があったのだ。 そこに丁度良く現れた代役。 ソレに自分の全てを注いで。切り捨てることにしたのだ。 「分かりました・・・・兄さん。僕はこの”条件”を受け入れます」 だから・・・・・・・・ だから ”もうこんな真似はしないでください・・・・・・” くもった眼鏡の先から白刃が厳武を見やる。 すると「あぁ」と厳武は微笑んだ。 その微笑がどういったものだったのかは分からないが・・・・・白刃にはそれが初めて見せた兄の本心の笑顔のような気がした・・・・・・・・・ そして 「もう華桜さんたちには手は出さないでくださいね。」 そう言うと白刃は極度に披露した身体をだらけさせ眠りに着いた。 ■NEXT■ [*前へ][次へ#] [戻る] |