■「ほう・・それでお前ら結婚したのか。」 もっしゃもっしゃと黍団子を頬張りながらダイナが言う。 「えぇ・・・・正式な式はまだですがそんなものですね」 ダイナより少し年上の雪鷹がそう言った。 たとえ相手が年上であってもダイナはダイナである。 「それで今日はご挨拶に来たんですけれども。今日はカセンさんはお隣に居ますか?」 笹目がそう聞くと 「あぁ・・・・」とダイナがニヤつきながらそういった。 どうやら彼女の方は彼女の方で何かがあるようである。 -------- 「はぁ・・・・」 カセン。ことカセン=F・フィルフォーレは来るバレンタインに向けて眉を顰めていた。 「バレンタイン・・・・どうしよう・・・・・・」 前回クリスマスに戒と恋仲になった彼女であるが元は彼女の通う高校の校長の恋人として生徒会にスパイとしてやってきたエージェントである。 それが校長。こと厳武にバレとっさに「スパイ活動の一環です。」と答えつい厳武の口付けを受けてしまった自分を悔やんでた。 「厳武様になんて答えたらいんだろう・・・・」後ろめたい。 本当はスパイ活動ではなく本当の恋仲なのである。 だがそれを語ってしまえばもしかすると自分は出身地の海外へと引き戻されることになるかもしれない。 その上から来るバレンタインシーズンである。 もう何をどうすればいいのか分からない。 とりあえずクリスマスにいつも間にか枕元においてあったプレゼントのお礼はしたい。だが厳武への裏切りの心がとてもいたたまれない。・・・・上から考える本心は改めて。 ”戒の事が好き”なのである。 「どうしよう・・・・・」カセンは泣きそうになりながら困っていた。 とそこに”ピンポーン”と、インターホンが鳴った。 こんな時間に誰だろう。そう思って覗き込むとドアの外に笹目が居た。 戒と同じ高校3年生。一個上の先輩である。 「笹目先輩・・・!?????」 カセンは勢い良くドアを開けた。 するとその笹目の隣には見たことのあるような無いような高身長の男性が立っていた。 「誰あんた・・・・・・・!」 カセンがおもむろに睨みつける。 「笹目さんの恋人です。」 にこにことそう語る男性にカセンは咄嗟に「笹目先輩は私の物です!!!!」と彼らの間を引き裂くように間に割り込み笹目に抱きついた。 と。そこに 「相変らずだな。と。」やってきた隣の部屋の主ダイナ。と 「カセンさん黍団子食べませんか?」とにこにこしてやってきた蘭姫と乱鬼。 それから・・・・・「カセン、お前2月22日が誕生日だって本当か・・・!??????」 急遽呼び出しをされて現れた戒の顔が見えた。 その瞬間「か・・・・戒のバカァ・・・//!!!!!!!!!」 カセンは思いっきり泣き出した。 溜めていたものがぷつんといったのである。そして思いっきり今の立場を吐き出した。 困っている助けて欲しい・・・・それから自分は・・・・・・・・ 泣き出す彼女に戒が手を差し伸べ頭をなでた。 「お前の立場は俺も知ってるだから泣くな・・・・・」 そう言って抱きしめられると今度は背筋に悪寒が走った ”知ってる・・・・・・?” 私が”スパイ”だって事・・・・・・・ ”いつから・・・・・・・・・?” 震える目で見上げると涙が零れた。そんな彼女の気配を察知したのか戒が寂しそうに眉を顰めた。 「悪い・・実は俺も麗姫も・・・”お前”の事は知ってたんだ・・・・・」 そういった戒にカセンは無理やりその手を解いた。 「帰って・・・・!!!!!!」 そう言ってドアを閉める。 ”知られていた・・・・自分の全てを”・・・・・”戒に” そう思い涙した。 来るバレンタイン・・・・ソレに向けて自分はどうしたらいいんだろう。 カセンの泣き声がドア越しに聞こえる。 実はダイナはカセンの部屋の合鍵を持っているのだがそれは仕事上守秘義務があった。 彼もまた厳武側への理事長からのスパイである。 逆スパイとして厳武の元で活動をしているが実際は理事長側の人間。カセンの保護も自分の役目であった。 だが。それを今目の前でするわけにはいかなかった。何故なら。 ”戒が本当に心配しているからである”自分の親戚のソレの初めての”想い人”その気持ちは大事にしてやりたいと思った・・・・だがこればかりはどうしようもない。 ”なるようになるしかねぇのかな・・・・”そう思ったダイナの視線を雪鷹はしっかりととらえていた。 「(なるほどそういう事ですか・・・・・・)」 特に何かをするわけでないがことの次第を察した彼は笹目にこう言った。 「笹目さん。彼女の事を宜しくお願いいたしますね。」 「え?・・・・あ、ハイ//」 よくは分からないが笹目は雪鷹に見つめられ頬を染めた。 「・・・・・・・」 戒が怒りを隠せずに居る。 そんな波乱の予感の節分である。 ■NEXT■ [*前へ][次へ#] [戻る] |