■笹目和美が学校を休んでる事は元部長の佐伯雉鷹にも伝わっていた。 最初は彼女のも伸び悩みの時期なのだろうとそっとしておく事にしたが事情を聞きたい教師達が学科が違うにもかかわらず何かと話しかけて来るので少々イラついていた。 自分は自分でやりたいことがある、だからと言って笹目の事はないがしろにしているつもりはないが・・・・・・・・自分は彼女の事をひとりの一個人として尊重しているつもりなのであの学祭以降は特に何もする事無く過ごしていた。 礼拝堂で気持ちを一度落ち着かせたかったが今のイライラした気持ちでもし他の生徒・・・・特に”彼女”でも会った日には何を言われるか分からない。 そんな事を考えながら佐伯はいつもの指定席で本を読んでいた。 そしてふとあることを思い出した・・・・・・そういえば・・・・・・・・。 そして雉鷹は携帯を見やる。 宛てた先は義兄(あに)のところであった。 ----- 実のところ”佐伯雉鷹”は佐伯家の本当の子ではない。 本来は今の両親の娘。義兄の姉に当たる女性の息子であったが。 ソレがいろいろ合って彼がまだ幼い頃に他界し。 今の両親の所で息子として生活している。 戸籍上は実子ではなく”養子”である。暫く前までは教会のある孤児院に世話になっていた。 その”兄”が。確か先日”学祭”に来ていたはずである。 その時確か笹目と会話を交わしたことを聞いたような気がした・・・・・・・・ 「こういうのは・・・・・・・若手の俺より長いものに巻かれた方がいいのかもしれないな・・」 何気ない気持ちでそのことを報告する。 兄はどこかの劇団とも精通している尊敬できる人物で。こういう場合もしかするとなんだかんだで顔の広い彼の方が役に立つかもしれない。 それに・・・・・・一緒に住んでいるわけではないので滅多に会うことは無いがとぢらかといえば自分より彼の方が笹目と趣味があるような気がする・・・・・・・・お洒落な車に乗り部屋にはそちら側の趣味が取り揃えてある自分の憧れの存在。 今は他校の生徒を相手にSPのようなことをしているが普段は本当に優しい”兄”である。 そして彼はこう切り出した「笹目和美に会いに行ってくれないか。」 できれば様子を見てきて欲しいが・・・それなりに面識はあるだろうと思ってはいたが急に家まで行かせるのもどうだろうか。そんな事を思いながらも”心配”しているソレを少々語ったから彼は落ち着いた優しい声でソレを承諾してくれた。 そして電話を切ったところでましろが現れる。 「きじたっちゃーん・・・・!人づてに聞いたんだけれども笹目ちゃんが暫く学校を休んでるとかなんとか・・・・・・!」 そう言ってやってきたそれに持っていた本をばさりとかぶせ雉鷹はその場をあとにした。 「笹目もきっと伸び悩みの時期何だ。・・・・こういうことは学生の俺達よりプロの世界を知ってる”大人”に任せたほうがいいだろう・・・・・」 「へ?大人?」 それは誰の事か分からなかったが。ましろは頭にかぶせられ本を手にとってそれをみた。 「あー・・・この小説!!今映画化して流行ってる奴だ・・・!!!!!観たい・・・貸して・・・!!!!!!!!!」そう言って彼を追いかけるましろに雉鷹は言った。 「そうだな。さわりだけ教えてやる・・・・・」 そう言って少々意地の悪い雉鷹は山場のネタバレをしてやった。 そんな昼下がりの事である。 ■NEXT■ [*前へ][次へ#] [戻る] |