■板脇家の朝は早い。シノが朝早くから畑に作物を取りに行き笹目も自分のお弁当を作って登校するからだ。 ・・・本日は学祭の振り替え明け。笹目が朝起きて洗面所に向かっていくとしゃこしゃこといい音を立てながら歯磨きをする見慣れぬ女性が立っていた。 「・・・・・おはようございます。笹目さま。本日より桜聖学院の方に勤めに参りました猫忍メイと申します。」 笹目の気配を感じた猫忍は深々と歯ブラシを取って挨拶する。 良く見るとその歯ブラシは笹目のものだった。 「え・・・あの・・・・・・・。えっと・・・」 それに驚いて笹目が困っていると 「あ。失礼致しました。私(わたくし)こういうものです」 と今度は名刺を渡してきた。 ソコには神風家の住所と鳳太のメイド兼世話係と書かれた名前が入っていた。 「え・・あ・・ああ・・・・・神風くんの・・・」笹目はまだ納得しない頭で一応返事を返した。 そしてついにその言葉を口にした 「あの・・・その歯ブラシ・・・・・・・」 ”私のなんですけど。” 笹目がそういおうとするとソレを制止するように猫忍が言った。 「素敵な物を見つけたのでつい使わせていただきました」 有難うございます。 そう言って猫忍は歯ブラシを自分の懐に忍ばせるとそのままさっと忍者のように天井裏に消えて行った。 「あ・・ちなみに私ここの居候ではなく寮のほうの人間ですから・・・・」 捨て台詞に言って消えた彼女から歯ブラシが帰ってくる事は無かったという・・・・・。 ------- 「おーい・・・・雉鷹ー・・・!!!!!!」 煩いのがきた。・・・と佐伯雉鷹は眉を寄せる。 暫く前まで生徒会と文化祭の準備で忙しく姿を見せることも無かったそれが目の前に現れた。 「ちゅーしようぜー・・・!」 笑顔でなにかイカれた事を放っている。 「誰がお前なんかと・・・・・・」 「あ。間違えた。ちゅーじゃなくてポッキーゲームだ・・・・!!」 ”11月に俺やりそびれたんだよ・・・・!”そう言ってポッキーを振り回しながらかけてくるましろ。 「・・・・・・・・ましろ。そういうのは男同士でやるものではないと思うぞ。」 とりあえず雉鷹はましろから距離を取るように後ずさりしてそう言った。 「なんだよ初心(ウブ)じゃないんだからちょっとくらい絡ませろよ・・!」 そう言ってまた数歩進んでがしっと雉鷹の肩を掴む。 「・・・ところで雉鷹さんよぅ・・・・・・・・・文化祭じゃぁ演劇部の女性部員を連れまわして歩いてたそうじゃないかよぅ・・・・」 にやにやとそう言って笑みを向けるソレが物凄く憎たらしい。 が。それでも大事な幼馴染だ。主の与えた試練か何かだと思いながら雉鷹は答えた。 「悪いが俺は笹目とは何も・・・」 「あ!やっぱり女性部員って笹目ちゃんかぁ・・・!!!」 ”今度紹介してくれ・・・!”そう言って手を合わせるそれの頭を本で叩いた。 スパーン・・・・!!! 物凄いいい音がしたがこれが彼らの日常である。 ------- 「げ・・・!!!メイ・・・!!!!」メイが寮に戻る途中ご主人様の息子に出会った。 「・・・・おはようございます。鳳太さま。今日も元気そうで何よりです」 ぺこりと頭を下げるメイに鳳太はげんなりする やっと日本に来て煩いのから離れられたと思ったのに・・・・・・・・・・・・ そう思いながら後ずさりして逃げようとすると。 「そういえば笹目さまの歯ブラシはとてもいい香りがしましたよ。」 と言われ鳳太は”!?????”となった。 「まさかメイ・・・お前笹目和美の歯ブラシを使ったんじゃ・・・・!!!!」 彼女は気に入ったものがあるとすぐ手に入れたがるストーカー体質。 自分のソレも半分はメイの影響だったのだが。はぁ・・・とため息をつきながら鳳太は言った。 「日本じゃそれは捕まるぞメイ・・・・・」 どこでもそれは異常行為であるが・・・・。 「今度は笹目さまの残り湯を頂にお風呂をお借りしたいものです」 さも当然というようにメイはきりりとマジメに答える。 「だからー・・・・・・・・」 そう言って頭を抱える鳳太を後にしてメイは”引越しの片付けがあるので”と言って去って行った。 どうやら文化祭明けからこちらに転入が決まったらしい・・・・・・・・・ 物凄く寛大な桜聖学院に感謝である。 ■END■ [*前へ][次へ#] [戻る] |