☆ササメモリアル☆
■イベント企画:まに祭!G■

■部長と別れた後笹目はふわふわした足取りでほわほわと1人歩いていた。
本当にいい”演目”を見させていただいたと思う。正確に言えば”曲目”なのだが笹目にはその空間全てが”一つの表現”として美しく見えたのだ。こんなにも心躍る表現に出会えたのは久々のような気がする。
公演が終わった後その”表現者”の”最も感動したあの彼女”から祝福のキスを頂いた。
流石に部長もいきなり額にキスされたときは驚いたようだったが。暫しの硬直の後「あぁ・・・」と少々頬を赤らめながら言葉を返した。

笹目もそのあと祝福を受けてそのまま泣きそうになった・・・本当に慈悲深い聖母の方ような存在に見えたのだ。
「貴方方の未来に幸多からんことを。主のお導きに祝福が舞い降りる事を、私からも祈っているわ」
その言葉が今も耳からはなれない。私もそんな祝福を誰か渡してあげたい気分だ。

と。そこに「和美ちゃんかい・・・・?」
と誰かが寄って来た。背の高い見たことも無い男性だがもう一人若い女性を連れている。
身なりのきちっとしたその二人に笹目は呼び止められた。

「こちらは神風鳳太の父親と母親・・・といえばいいのか。そういった関係のものだが・・・・・」
その言葉に驚いた。会った事も無い二人が何故私を知っているのだろうと思ったが。許婚のような話を両親としていたのだがら知っていて当然かもしれない。・・・・・が、一気に笹目の高揚感は急降下した。

何を言われるのだろう・・・・・・・そう身構えていると身なりのいいその男性が口を開いた。
「さっき隣に座って賛美歌を聞いていた男性は彼氏か何かかい?・・・・もしかしてその彼が居るから君はうちの息子を振ったりしたのかい?」

「え・・・・?」賛美歌と聴かれて驚いた、どうやら同じ空間に彼らも一緒に座っていて笹目たちの動向を見ていたらしいのだ。
「君は・・・・世間体・・・という物を考えて生活しているかい?うちは鳳太自身からそれを聞いて納得しようと思ったが・・・・・その翌日に彼氏を連れて出歩いているのは鳳太に失礼じゃないのかい?」

「そ・・・・・そんなつもりじゃ・・・・・」
そもそも部長は”彼氏”ではない。以前は想い人として憧れていたこともあったが今はそういった気持ちは一切無い。・・・・・・特に生島さんとのやり取りを見て尚更笹目にはあの二人の”仲”が仲むつましく思えたほどだ。

「じゃぁどういうつもりなんだい。ここは日本だからそれほどでもないが君の行いでうちの世間体は丸つぶれだよ」

そう言われて笹目は困ってしまった。
”世間体”といわれてもそれだけでやっと”友達”としてやっていこうと決めた彼とどうこう先を考えるわけにはいかないのだが・・・それに自分には夢や希望や”好きな人”もいるわけで・・双方の両親に対しては申し訳ない子としたと思ってはいるがどうしたらいいのかわからない。

「ねぇ、和美ちゃん。もう一度君のほうから”あの話”復活させてくれないかい?」

「・・・そ・・・そんな・・・・・」

そう言って笹目が困っていると

「あの賛美歌を聴き会場に一緒にいたというわりには・・・随分と不穏な空気をお持ちですね。」
と遠くから近寄ってくる誰かの声がした。
その声に笹目は反応する。
緑色の髪に眼鏡姿の少々色づいた唇を持つスーツ姿の男性だった。

「それは・・どういう意味だね?」鳳太の父親が振り向いて尋ねる。

「あれだけの素晴らしい合唱の後にどうしてそんな空気を纏えるのかが不思議で仕方ありませんが・・・・・・・・・主の祝福が貴方方に届いて無いようでしたら。・・・・・・・校舎の方で配られていたこのお守りを貴方方に差し上げますが?」
「----さん・・・!!!!!」
それは笹目の想い人だった。まさかこんなところでその姿を見ることができるとは思わなかった。

「何だね・・・君は・・・・?」その声に反応して鳳太父が少々眉間に皺を寄せる。

「私は・・そうですね。他校の中学の学校関係者と言ったところでしょうか。」

「・・・・中学関係者ぁ・・・?教師か・・・・?・・・・・・・和美ちゃんの方は君を知っているようだがどういった関係の人間なんだい?」

「そうですね。・・・・関係といわれると時折彼女の舞台公演を見に行く程度のような気がしますが・・・・・・・・”彼女”の舞台に憧れる一ファンと言っておきましょうか。」

「舞台・・・・・?・・・それが・・・何だというんだ。」
「あなた・・・・!!」流石に黙っていた鳳太母が反応した。

「私は・・・・・」
笹目が口を開いた。
「鳳太くんの事は好きだと思います。実際ちゃんと話すことが出来たのは本当に最近のことですが・・・・でも彼は貴方方が思っているような価値の低い人間じゃないと思います。」

「そんな事は言っては居ないが・・・・・・」鳳太父が反論しようとすると「私にもそう聞こえましたが」と眼鏡の彼が言う。

「だから私は1人の人間として鳳太くん個人の考えを尊重したいですし。”夢”もあります。・・・・・・・・・・・それに”好きな人”が私には他に居ますので。そのお話はもう一度家に帰って彼と話してあげてください。」

「好きな人・・・さっきの”彼氏”の事かい?」


「違います・・・・。私の好きな人は・・・・・・・・」
ちらりと笹目が彼の方を向くと何かを察したのか鳳太母が「あなた。行きましょう・・・・・・」と父のほうの腕を組んだ。「ここでそんなことを言っている暇があったら大事な我が子との大切な時間を過ごしてあげましょう・・・」彼女は何かを察したようである。”鳳太父は笹目の方ばかり向いていて当の鳳太を見ていない”・・・・世間体ばかり気にして”そんな風に見て取れるのだ”。

どうやら鳳太母は先にソレに気づいたらしい。「・・・・そうだな。確かに鳳太の話は電話一本で結果しか聞いていない。その前のプロセスをちゃんと聞くのも親の仕事だろうな・・・・・・」
そう言って「すまなかった。和美ちゃん。君のほうが鳳太の方をみていたかもしれない。・・・・だがもし君に”鳳太”への気持ちが少しでもあるのならいつかはちゃんとその答えを聞かせて欲しい・・・・」

そう言って彼らは去っていこう・・・・としたが。その横から彼が「貴方方に主のお導きがあらんことを」と。祝福のお守りを手渡した。

「・・・・・フン。・・・お前さんはシャクだが確かに賛美歌は素敵だった。・・・和美ちゃんの舞台もいつかみてみたいものだな」と受け取って去って行った。

「・・・・大丈夫ですかね。あの二人・・・・・・」
笹目がそういうと「きっとあの祝福のお守りが彼らを良い方向に導いてくれるさ」と。彼は告げた。

「・・いいんですか?」
「何がだい?」

「----さんのお守りがなくなっちゃったら----さんへの祝福とお導きが無くなってしまうんじゃないですか?」
笹目がそういうと「ソレはどうかな」と彼は微笑んだ。
「導きはもう達成しているよ。・・・こうやって笹目さんに会えたのがその導きだったのかもしれない。」
そういわれて笹目はかぁぁと赤くなった。

「・・・・・・・・これで君が僕に祝福をしてくれたら・・・・それでことは済むんじゃないのかな?」
女子高生に対してソレはなにやら危険な誘いのような気がする作者の突っ込みは放っておいて・・・・
「祝福・・・ですか?」

「そうだね。」と言って----は笹目の手をとるとその手の甲に口付けた。

「・・・・・・・・・・・・・・君たち二人があの歌姫の祝福を受けているのを見ていたら僕もこうしたくなってね。」
実は前々からのファンで楽屋に差し入れをしてこようと思っていたんだ。

そう言って微笑む彼に笹目は少し嫉妬心を抱きそうになったが・・・・・・・
「それじゃぁ私も----さんに祝福しますね。」

かがんでください・・・・と膝を突いて座らせると笹目はその額にキスをした。

「素敵な賛美歌でしたよね・・・・・」

「あぁ・・・・。それでは君にも主の祝福があらんことを・・・・」
そう言って----さんは去って行った。


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あきゅろす。
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