☆ササメモリアル☆
■追跡!:笹目和美@■

■その舞台のラストシーンは本来ならこう語られるはずであった。

王子の結ばれる事の無かったその”少女”は王子のために身を投げ出そうとする。しかしそれを王子が発見し。止めに入るとその場に現れた王子の”姫君”が逆上し”人魚”の持つその剣で王子の事を刺し殺しててしまう・・・・・・・。声の戻った人魚姫はそのまま海に身を投げるが、やはり人魚。どんなにそれが重く辛いものでも彼女にはどうすることもできなかった。ただただ波間に身を任せてゆれていると遠くの方で声がする。

私はずっと貴方を見ていた”王子”です。・・・・・・目の前に姿を現した大きな鳥は岩場に立つととソレはまた美しい王子の姿へと変るのであった。
そして”純粋な貴方の歌声をもう一度・・・聞けるこの日を待ち望んでおりました”
鳥の王子が人魚に口付けをすると人魚はたちまちまた人間の二本足の姿を取り戻した。

さぁ行きましょう”姫君”。私と一緒に・・・今度は素敵な空の世界を貴方に差し上げましょう。
そう言って空高く上っていく人魚とは真逆に失意の中の姫君は持っていた剣で身を投げ泡と消える。

切ないようで純粋なようでどこか猟奇的なそのシナリオは笹目が考えたシナリオに雉鷹が脚色を加えたものだった。

しかし舞台の最終幕。・・・・”人魚姫”である笹目の姿は舞台上には無かった・・・・・・。


その数分前のことである。

「あの・・・・・・!!!!」
演劇部の公演会場、舞台裏に1人の少女が駆け込んで着た。

櫻葉 渚(さくらば なぎさ)、カトリック科の一年生。その少女である。

「あの・・・三年の・・・部長の佐伯(さえき)先輩にお話があります・・・・・!!!」
慌しく駆け込んできたその少女はまだ幼さの残る体ではぁはぁと肩で息をしながら現れた。
そして。

「あの・・・・今日の舞台・・・・公演に上がってるはずの笹目先輩が・・・カトリック科の校舎付近で誰かに連れ攫われていくのを目撃したのですが・・・・・・!!!!」

一瞬その場の空気が固まった。

”少し・・・休憩を取って気持ちを切り替えてこようと思います。”

それは妙に思いつめた顔をした笹目の最後の言葉だった。

遡る事数十分前。舞台は一旦昼の休憩へと突入する。
笹目は”部長”への気持ちを伝えるべきかどうかで悩んでいた。

それは数日前のこと。偶然・・・・それは必然ともいえるだろうか不意に惹かれるように二人きりで出会ってしまった笹目和美と宮代 歩(みやしろ あゆむ/でいいのかな?^^;)。

その関係は以前・・数週間前のことであるそのあたりから少し拗れかけていた。
そんな中で渦中の彼が笹目に”部長への告白”を後押ししたのである。

「俺も見に行くから。ちゃんと”なごちゃんの気持ち”あの人に伝えなよ?」

そう言って去って行った横顔がどこか別れを思わせるような寂しさを秘めていたものだから。笹目は今日の公演で・・・・本当に彼が来てくれるか心配であった。
なので一般生徒や一般入場者も含むその中から”歩”の姿が見えないかとちらりと探しに行ったのである。

といっても休憩もとてもじゃないが長いものではない。笹目は次の衣装のまま出て行ったので目立つと思い舞台の裏の方から彼を探し始めた。しかし姿が見つからない・・・・・
もしかして・・・来ては居ないのかもしれない・・・・・。
そう不安に思った笹目であったが・・・もしかしたら”あの場所”に・・・・いるかもしれない・・・・・・

”礼拝堂前の石垣のフェンス”二人のその”思い出の場所”思い出というにはいいものではなかったが。もしかすると彼はそこにいるかもしれない・・・・・・・。

そう思い笹目は舞台のことも忘れて一生懸命そちらに走った。

しかし”歩”は居なかった・・・・

代わりに”大学生かなりたての社会人”・・・・そのくらいの風貌をした男二人が物騒な話をしていた。
笹目はそれを聞いてしまったのである。

目立つ格好。その衣装姿では隠れていても見つかってしまう。
どうやら男二人は社会に不満を持つ若人のようで今日まで今日の公演日に爆弾を仕掛けると何度も学校側に脅迫状を送りつけたらしい。しかし舞台は何事も無く開場した。それが気にくわなかった二人はこの有名なマンモス校の象徴的なあのカトリック科の校舎に放火を考えていたらしい。
礼拝堂の近くにいたのは近くに人影が無いかと探して歩いていた途中だった。
誰かに見つかっては困る。

もしもの場合は・・・と彼らはスタンガンを用意していた。
それが笹目に向けられたのである。

「それで・・・笹目先輩が・・・・」
なぜ渚がそれを見ていたかというと彼女は礼拝堂の建物の中である少女と一緒にいたからである。
最初にソレ気づいたのはそのとある少女の”犬”だった・・・・・・・・

そして見てしまったその現場・・・・彼女はその男二人が校舎の方に去っていたのを確認するとすぐさま演劇部の舞台裏にかけこんだのである。

そこで劇は中断した。変りに低いトーンのナレーションが館内に響いた。

「只今。現在演劇部の諸事情により舞台”人魚姫”は一度その幕を下ろさせていただこうと思います。

その代わり・・・・・」

ジャーン・・・・!!と大きな音がして舞台の幕が上へと上がる。
本来は文化祭での演奏を予定して練習していた中川 奏斗(なかがわ かなと)/畑 雄司(はた ゆうじ)そしてバンドメンバーとともに天才音楽家の東雲 千秋(しののめ ちあき)が舞台上へと現れた。

「演劇部の”演目、人魚姫”の再開まで暫し彼らの演奏をお楽しみください。」
雉鷹はそこまで言うとマイクの音声を切った。

「笹目を探しにいくぞ・・・・!!!!」
「探すってどうやって・・・・!???」
佐伯のその発言に黒川 梨々花(くろかわ りりか)が反応する。

「まずは誘拐犯たちの逃走経路の封鎖だ・・・・・!!!」カトリック科の校舎の方に向かったという事はまだそのあたりに居るかもしれない・・・・・!!!!!

今日は日曜日。・・・・・・・・礼拝堂は普段から開いているが校舎には誰も居ない。
例え男二人といえども目立つ衣装を着た笹目をつれての逃走は難しいだろう。
笹目に何かが起きるかもしれないしそのままどこかへ捨てられるかもしれない。
しかし
「一般客をこのまま帰したらそれに乗じて逃げられるかもしれん・・・!!」
それから”梨々花”は二年の塔野 雫(とうの しずく)くんを呼んで来い・・・・!!
「え・・・!???」

彼女の記憶が鮮明なうちに似顔絵を描いてもらう・・・・・・!少々時間がかかるかもしれないが闇雲に探すよりは早く見つかるかもしれない。
もちろん”彼女”というのは”渚ちゃん”の事で。梨々花は八重花(やえか)ちゃんと仲のいい都合上雫ちゃんのことは知っていた。

只・・・・・・・・・

「今行ってもいいけれども・・・多分傍には八重花ちゃんたちがいると思うけど・・・・」
少々不安そうに見つめる梨々花嬢。
あのハイテンションガールの一言で事が周りに漏れたりしてもいいのだろうか。
少々不安がよぎったが「お前の得意の演技と実力で上手く彼女を納得させて劇場封鎖を手伝うように伝えてくれ・・・!」
俺は行く場所がある・・・・・!!!!!!

そう言って雉鷹は観客席の方へと走っていくとお目当てのその男を見つける。
「悪い、みことくん。暫し俺に付き合ってくれないか・・・・・・」

「え・・・・?」
丁度双子のまことちゃんのほうは休憩時間という事で俗に言う”お花を積みに”行ってしまったようで彼には都合よくみことくんが1人でそこに座っていた。

雉鷹は出演者の一部でナレーションの自分がこの場で目立たぬようにと気を配りながらも低い声でこう述べた。

「笹目が攫われた・・・・・・君に。一緒に来て欲しい・・・・・・」

そう言って雉鷹はみことくんの手をとると礼拝堂の方へと駆けていくのであった・・・・・・・。

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