■前略。雨の中をお散歩していたところテツが突然走り出して目の前を歩いていたお嬢さんの突撃してしまったの。 それで転んでしまった素敵なお嬢さんのところにハンカチを出して駆け寄ったら素敵な衣装が汚れてしまった上から何故か演劇用のカツラでしょうか。ソレがずれて地毛が見えてしまっていたからつい私も同類の人間なのかと思って「大丈夫ですか?」と、それを直して差し上げましたらそのお嬢さんが突然泣き出すのが雨越しにでも分かったのでそのまま抱きしめて近くのコンビニのイートインにかけこみましたの。 もちろんテツは雨の中少々肌寒いかもしれませんが犬用のレインコートを着せているので大丈夫だろうと思いコンビニ脇に繋いでおりました。それなりに行儀のいい子ですが流石にお店側に申し訳ないかと思いながらも彼女の汚れた服を拭いて謝ったらそのままテツを連れて帰ろうと思ったのですが。 椅子に座った彼女に服の裾をつかまれて今に至ります。 そして。 「死んでしまいたい・・・・」 そういい始めた彼女に不安を感じた私はもう少し彼女の傍に居て差し上げることにしました。 「・・・・どうなさいましたの?」 そう言って顔を合わせるように覗き込むと涙を流しながらも彼女は何かの感情を押さえ込むように口元をぎゅっとつぐんで首を振りました。 「・・・好きな人が・・・・居るの・・・・・」 そう話した彼女に「それは素敵な事ですね」と笑顔を向けたのですが敵意は無かったつもりですが「そんなんじゃない!!!」と振り払われてしまいました。 それから 「・・・・・どこかに行ってしまいたい・・」 そういう彼女の真剣な表情に少し不安になった私は携帯で警察を呼ぼうかと思いましたがそれは逆効果かもしれないと思い彼女を連れて家に帰ってまいりました。 マズは汚れた服を洗濯してお風呂に入れて差し上げようと思いつれてきましたの。 幸いお婆様も何かを察したのか優しく彼女を包み込むように迎えてくださいました。 ソレが彼女の心の底に届いたのか、彼女は緊張の糸を解くと一緒にお風呂場まで着いてきてくれました。 「体・・・・洗ってさしあげましょうか?」 そう聞く私に「いいです・・・。・・・・素敵なお家ですね」少しだけささやかな気持ちを返してくださったその方に警戒心を解くように「私も一緒に入ります。」 そう言って服を脱ぎました。 そして今に至ります。<え!????? 場所は笹目家大浴場。郊外の小民家ですけれどもお風呂場だけは広いものを設置しています。 少し距離を置きつつも今の私は彼女の隣で一緒に湯船に使っています。 白い肌に綺麗な青い髪。緑ががった瞳の綺麗なその彼女ですが。私が黒のタイツを脱いだ瞬間に少しだけ表情が曇りました。 昔の古傷が・・・目に入った模様です。 「これは・・・・」訳を正直に話そうかと思ったのですが 「いいです。・・・・・貴方も同じなんですね。」彼女は何かを感じ取ったのかかすかに笑みを向けてくれました。 そして二人で浴槽に使って談話が始まります。 「・・・・・どこかに・・・・・・とは。どこに行きたいのですか?」 そう聞いた私に彼女は「ここじゃないどこか・・・・」 そう言って・・・・ちらりと私の顔を見ると「どこか別の学校に・・・・行きたい・・・・・・」 そう小さな声で話しました。青毛の短い髪型から察するにもしかすると彼女はどこか別の学校で性別などを偽って通っているのかもしれません。 ・・・・これは私の推測です。演劇部なので少々脚色かかっているかもしれませんがなんとなくそう感じた私は「ならうちの学校に来ます?」と答えてみました。 ・・・先日。華桜高校の生徒会長にうちの高校に来ないかと誘われたばかりでしたが、まさか私までそんな話を他者に話すことになるとは思いませんでした。しかし。彼女は以外にも瞳を大きく開かせて「どこ・・・・・・?」と聞いてきました。 「桜聖学院高等学校です。」 私がそう答えると彼女は更に目を大きく開かせて「カトリック科のあるところ・・・・!????」と頬を染めてこちらを見てきました。 もしかしたら彼女はそちら側の人間なのでしょうか? でも・・・ 「好きな人が・・・・居るんですよね・・・・?」 そう聞いた私に彼女はびくりと肩を上げましたが少し頬を染めるように俯いて肯定の頷きを致しました。 「変な・・・・気持ち・・・なんだ・・・・・・・。」 ”なんだ・・”とはなんだか可愛らしい彼女には似合わない感じがしましたが、コレがいつもの話し方なのでしょう。 「変な気持ちですか・・・?」 そう私が答えると彼女は更に頬を赤くして「貴方が・・・好き・・・・・」 何故かいきなり私に告白を致しました。 「・・・・・・」少しの沈黙の後に「私も貴方が好きですよ?」 と答えると、彼女はコチラに顔を向けると初めて自分の名前を明かしてくれました。 「私は・・・・・カセン・・・カセン・F・フィルフォーレ・・・・」 そう言ってまた目線を下に向けると今度は 「好きな人が居るんです・・・・・・・」 今度は女性らしい喋り方になりました。 どうやら彼女の中には男性の自分と女性の自分が混同しているのかもしれません。 複雑な事情があるのかもしれません。 そして彼女は私にその”好きな人”の事を話してくれました。 ■NEXT■ [*前へ][次へ#] [戻る] |