■映画が終わると雪鷹が笹目と蘭姫にランチをおごってくれた。 「どうでした。映画。楽しかったでしょう?」 そう言ってニコニコと向いに座る雪鷹に蘭姫は緊張しながら「はい」と答えた。 実際”映画”は楽しかった。素敵な歌と音楽に絢爛豪華な衣装。ストーリーも申し分なかった。 只雪鷹と笹目の間に挟まれて少々居場所に困ってしまった。 なぜなら笹目と雪鷹は・・・・・・ そう考えると自分が一緒にいるのが邪魔ではなかったかと思ってしまう。 ラブストーリーも踏まえたその映画は本当は二人きりで見るべきものだったんじゃなかろうか。 「はい。」と答える蘭姫だったが心のソコではそんな事を考えていた。 「蘭姫ちゃん!食事が終わったらショッピング行きましょう!!! 可愛いぬいぐるみ専門店とか色々回ってみませんか?」 そういう笹目に蘭姫は少々困ってしまった。 「え・・でも・・・・」 14歳になる少女には専門店とか言われてもお小遣いとのにらめっこに少々困るものがあるのだ。 「大丈夫。今度は私が買ってあげますわ!だって今日は・・・・」 ”蘭姫ちゃんの誕生日ですもの!!! そう言ってにこにこ言う笹目だったが蘭姫は申し訳ない気持ちでいっぱいだった。 --- 「今日は”あの子”の誕生日ですね・・・・・・・」 華桜邸では14歳になる秘蔵っ子の成長を願ってぽつりと父親である月代が呟いた。 先日プールに遊びに来てくれたときは元気な姿が見れて幸せであった。 色々な諸事情があってダイナのところに預けているがいつかは自分の実子として家に迎え入れてあげたいとは思っている。 姉の麗姫も兄の里利もそのことは知っていて彼女を大事に思っている。 それだけは変わらない事実。 「できれば私から・・・・・何かプレゼントがしたいのですが・・・・・・・・・」 そう言って電話をしたのは同系列の中学校長のシンドバットのところであった。 「ほうほう・・・そうか、そうか。・・・・なら”プレゼント”はアレがいいんじゃないかろうか。」 電話口から聞こえてくるはずの声が何故か自分の後ろから聞こえた。 振り返ると相変らずもっしゃもっしゃと何かを食べながら似合いもしないスマホを片手に侵入した着物の男性が立っていた。 「相変らず神出鬼没ですね・・・・」 はぁ。とため息をつきながら月代が振り向く。 「そうじゃのう・・・・・・・・使用人の目をかいくぐるのは至難の業じゃのう・・・・」 そういう彼に 「普通に客人としてやってきてください。」 と月代はため息を付いた。 --- 夕刻、華桜高校校長。”荻野白刃”に連絡が入ったのは夕日も落ちかけた薄暗いその時だった。 「生徒会長の華桜麗姫に書類を届けて欲しい」 華桜低から書類を届けに来た使用人は印の入ったそれを丁寧に彼に渡した。 「なにも実の娘なんですから家で渡せばいいものを・・・・」 そう思いながらも律儀なそれを思い浮かべながら白刃はソレを受け取って「では学校が始まったら真っ先に私にいきますね。」と伝えたが使用人は「できれば今日中に私に行ってください。」 と首を振った。 ・・・・それはいくらなんでも不正なんではなかろうか。白刃はそう思ったが使用人から居場所を聞いてなんとなくその旨について理解した。 「あぁ。そういうことですか。」 それはサプライズな届け物ですね。 と、微笑を返すと笑顔でそれを受け取った。 ■NEXT■ [*前へ][次へ#] [戻る] |