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「さてー、せっつんの美味しい緑茶を飲んだことだしかぐちゃんの荷物開きといきましょかー」
「整理って言ってもそれ程ないぞ」
「どのくらいなの?」
「二箱」



二人の動きがぴたりと止まった。
振り返った顔にはありありと「信じられない」の文字。



「二箱って……標準二箱?」
「ああ」
「あかーーん!」



突然嚆矢が壊れた。



「かぐちゃん、それはあかん!高校生として腐っとる!」
「喧嘩売ってんのか」
「服は!?ゲームは!?漫画は!?プレイヤーは!?何で二箱しかないん!?」
「服は箱半分。漫画もゲームもない。プレイヤーは携帯電話派だ」
「服が半分って……後は何が入ってるの?」
「本と工具」
「工具?」
「機械弄りが趣味だから」



まだ後ろでぎゃあぎゃあ騒ぐ嚆矢を余所に、とりあえず割り当てられた部屋に入る(寮なのに一人部屋付きとか突っ込むのは止めた)。

最初に目に入ったのは、積み上がった五箱のダンボールだった。



「……?」



一度閉めて、隣のドアを確認する。
「Koshi」と書かれた手作りのネームプレートが下がっている。明らかにこっちが嚆矢の部屋だ。



「五箱……?」
「五個、あったよね……?」




身に覚えがない。ないのに倍以上に増えてる。
もう一度ドアを開く。
五箱ある。

しかもよく見るとその内の三つは特大サイズ。
俺の送った箱が上に小さく鎮座していた。



「んー、この二箱がかぐちゃんが言ってた箱ー?」
「ああ」



いつの間にか復活した嚆矢が上の二箱を下ろし、勝手に箱を開ける。



「わ……」
「何これーすげー」
「……」



家に残してきたパソコンだった。
上に乗っている紙を開くと、見覚えのある字で、

『こんな恐ろしいもの
 家に置いて行くんじゃねぇ

           父  』

と書いてあった。
佳さんはこれをなんだと思っているのだろうか。



「んー?パパ上からの手紙ー?」
「恐ろしいものって……爆発するの?」
「しない」



それはもはやパソコンですらないだろう。

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