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09


今更だな今更今更、と心の中で唱えつつ、ネームプレートを見る。


荻野目 嚆矢
添鳩 香黒



「おぎのめ……かぶらや?」
「こうしって読むんよ」



突然の声に後ろを向くと、背の高いチャラ男と背の低い美少女がいた。
いや、男子校なんだから男か。びっくりだが。



「荻野目嚆矢、か?」
「そー。俺が嚆矢。で、こっちのちっちゃいのが、」
「嚆矢!……僕は英千里。隣の部屋なんだ。よろしくね。君が噂の転入生?」
「……噂?」
「なんでもここの難しーい編入試験を、ほぼ満点でクリアしたって聞いたんけど?当たり?」
「……まあ」



一応肯定しておくと、英はぱあ、っと表情を明るくした。



「すごい!羽陽の編入試験は難しいことで有名なんだよ!」
「そう、なのか」
「これで俺らの定期試験は安泰やなー」
「嚆矢っ」
「試験って、荻野目も頭いいんじゃないのか」



荻野目の言葉に首を傾げる。
パンフレットによると、羽陽学園は成績順にクラスと寮部屋が割り当てられるらしい。そして301号室は一年生の中では一番早い番号だ。
つまり俺と同じ部屋の荻野目は学年二番手のはず。



「まあなー。でも中等部までは学科試験のみやったからなんとかなっとったけど、高等部からは法術学入るからなー」
「嚆矢、法力は強いんだけど、あまり上手く扱えないんだ」
「英は?」
「僕は普通だよ。……それより添鳩君」



英は、こちらを上目遣いで見ていた。
美少女顔でこれはもはや兵器だ。



「名前呼んでほしいんだ。あと、よかったらでいいんだけど、名前で呼んでもいい?」
「あ、俺もー。そんで俺のことは嚆矢って呼んでー」
「わかった」



了承すると、英――千里は、はにかんだように微笑んだ。



「なあなあ、かぐちゃん。中に入らん?立ってたってしゃーないし、荷物整理せなあかんのやろ?」
「あ、僕も手伝うよ」
「ああ……ありがとう」



笑って礼を言う。
途端、千里の顔は一瞬で真っ赤になった。
隣の嚆矢も驚いた顔をしている。



「あらー……これはまあ……」
「よ、予想外だよね、嚆矢」



何がだ。

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あきゅろす。
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