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◆Main
ボクもキミも



さっきまでは友達だった。



でも俺にとって、カスミはずっと昔から特別だった。



ある日そんなカスミに告白をされて、キスをされた。



ビックリしたけど、俺には願ったり叶ったり。
・・・なんだけども。



「・・・カスミ、手早すぎ。」


「え、ご、ごめん!」



でも俺は素直じゃなくて、なんなら俺からキスしたい気持ちもあったから、言い方が少しだけキツくなってしまった。


こういうところよくないよな。
自分でもそう思う。


なのに。



「あたし、舞い上がりすぎだよね・・・えへへ。」



カスミはどうしてこんな俺に、こんな可愛い顔をしてくれるんだろう。


しかも俺の恋人になってくれて。


本当に奇跡だと思う。



「わ、さむい・・・」




急に冷たい風が吹き抜けて肩を竦めたカスミに気づき、ドキドキする気持ちをこらえ、カスミの手を取った。



「暗くなってきたな。帰ろうぜカスミ。」


「あ、うん!」



自然と手を取ったつもりだけど、やっぱりなんか照れ臭い。


カスミをちらっと見ると、カスミははにかんだ顔で、青色の目をキラキラさせながら俺を見上げていた。



「なんだ?」



・・・本当に、可愛いなこいつ。



「サトシ寒い?」


「いや、そんなに。お前あったかいし。」


「あたし?」


「手が温かい。」



カスミってお世辞じゃなくて、男なら誰でも見惚れてしまうくらい綺麗な顔をしてると思う。


しかも、水ポケモンには愛情深くて、勝ち気だけど真面目で、仲間思いで、俺に対しては無防備に気持ちをぶつけてくれる。


顔もだけど、カスミは内面がすごく綺麗なことを俺は知ってる。


しかも、俺の前ではめちゃくちゃ可愛くなることも俺だけが知ってる。


そんなの、好きにならない方がおかしいよな。



「・・・はぁ。なんかあたし暑くなってきた。」



「じゃあ俺寒いからもっとくっつけよ。」



「フフ。くっつけってなんか可愛い。サトシって実は甘えん坊?」


「はぁ?なんでそうなるんだよ?」



まずい。俺、浮かれてんのバレたかな。



「んー、なんとなく?」


「なんだそれ。変な奴。」



いつも通りの顔をしようと努力して、それでも手はずっと離さないままでいた。


ずっとカスミと恋人として手を繋ぎたかったんだ。だから出来ればまだ手を離したくない。


さっきまでとは違うカスミとの距離。


―――俺、カスミの特別な人になれたんだ。


そう思うと、胸がキュッと締め付けられた。


これから何があったって、俺からこの手を絶対に離したりなんかしてやんないからな。


だって、俺はずっと――・・



「なんか・・・やっとすごく実感わいてきた。」


「何が?」


「今日からサトシの全部が、あたしのものなんだなぁーって。フフ、あたしだけのサトシかー。誰にも渡さないんだからね、覚悟してよ?」



カスミにそう言われて、同じことを考えていたことに驚いた。



「・・・・・その台詞、俺もそのままお前に返すよ。」


「え?」


「お前も今日からおれのものなんだからな。他の人にフラフラするなよ。」



こういうこと、俺もう言っていいんだよな。
まさかカスミに、こんなこと言える日が来るなんて信じらんないけど。



―――『昨日カスミが片想いの青春ドラマについて話し出してさ。』


『なんつー話をしてるんだよ。』


『で、友達に恋をしたことあるか?っていう話になってな。』


『うん。』


『友達を好きになったのか?って聞いたらさ、肯定も否定もしないんだよカスミのやつ。可能性とかってにごしてたけど、あれは明らかに恋をしてるな。』


『カスミが友達に?』


『お前だよお前。』


『へ?俺?』


『あぁ。』


『カスミがそう言ったのか?』


『お前が、ただの友達に好意を持たれたらどう思うかって気にしてたぞ。』


『なんでタケシに聞くんだ?』


『乙女心わかってやれよ。』


『乙女心・・・』



げ。俺が一番苦手な分野だ。



『告白すればいいのに。』


『え?』


『だって確実に両想いだろお前たち。』


『ば、ばか!声大きいって!』



そんな気はしてたけど、タケシには俺の気持ちはバレてたらしい・・。



『今すぐにでも、「俺はお前を愛してる!」って言えばハッピーエンドだろ。』


『ふざけんな。』


『じゃあ切なく2人とも片想いを続けるのか?奥手すぎるのもほどほどにしないと損するぞ。』


『・・俺はタケシと違って突っ走らないだけだ。それに今は俺もカスミも夢を叶えることが一番だから、良くも悪くも支障が出ることはしたくない。』


『ったく。頭が硬いなサトシは。』


『タケシはもっと頭固めろよ。』


『ていうことは、今度のリーグ戦の後かな。残念な結果でも、付き合ったらお祝いしてやるよ。』


『・・縁起でもないこと言うなよな。』


『それにしても、自分の夢に支障が出るって思うほど好きとはな。』


『・・・・・』


『カスミの前では、いつものサトシも形なしか。』


『・・・うるさい。』


『ちなみにカスミのどこがいいんだ?たしかに顔はいいしスタイルもいいけど。』


『知らね。』


『性格?サトシの前では好きがダダ漏れのところ?』


『・・わかんないってそんなの。』


『ふはっ。よく分からないけどなんか好きって一番厄介だよな。お前もう末期だよ。』


『・・・ほっとけよ。』


『お、噂をすればオレンジ頭を発見。』



『んなっ』



ギョッとして顔を上げると、カスミがドアから顔を覗かせていた。



『お、噂をすれば。カスミ、何をコソコソやってるんだ?』



カスミが部屋に入ってきて、俺は視線を斜め下に下げた。



・・・やば。聞かれたかな。



『おはよう。何かお取り込み中だった?』


『まぁな。俺たちにとってすごく大事なことを話してたんだ。』



・・・っタケシのやつ!



『え?何それ?あたしにも教えてよ!』


『ちょっタケシ・・・!』


『ダメダメ。まだその時じゃないからカスミには話せないな。』


『えー!内緒話とか寂しいんだけど。』



むくれるカスミの前で、タケシが耳元にコソコソと話しかけてきた。



(よかったな、サトシ。聞こえてないみたいだぞ。たぶん。)


(・・・・・・)



・・・ニヤニヤしやがって。タケシのやつ、後で覚えてろよ。



『てゆうか、こんな早くにどうした?今日は朝から雨だからまだ外には出ないぞ。』


『知ってるもん。それよりすっごく大事な話って何?』


『しつこいなぁ。サトシと今度のポケモンリーグ優勝者の予想当てしてただけだよ。』


『え?なーんだそんなことかぁ。』


『俺たちには大事なことだろ?もしサトシとこんど・・』


『あのね!あたしサトシに話があるんだけど。』


『え?俺に?』



やっぱ聞かれてたんじゃ・・・



『ほう、遮るか。カスミカスミ、俺に用は?』


『特にないっ』


『かぁぁ!お前可愛くないぞっ!』


『可愛くなくて結構でーす。』



タケシに髪をくしゃくしゃにされたカスミが逃げると、タケシがしょうがないなーと笑った。



『はいはい。俺は先に朝食頼みに行くから、2人で心ゆくまでごゆっくりー』



タケシが部屋を出てって、カスミが俺の隣に座った。



『変なの。どうしたのかなタケシ。』


『・・・し、知らね。』



俺は頑張って平常心に戻ろうと気持ちを落ち着けてた。



『あたしとサトシが仲良しだから嫉妬したのかしらね?』


『べ、別に俺お前と仲良しじゃないし・・っ』



・・・あ。やっちまった。
タケシのせいで、つい過剰に反応してしまったじゃんか。



『そんな冷たいこと言わないで、あたしと仲良くしといた方がいいわよー?』



怒らせたかなと思ったけど、カスミがニコニコしていてホッとした。


昔から変にひねくれてるところ、なんとかしたいって思ってるんだけどなぁ。



『じゃーん!これ見てサトシ!』



これじゃカスミだけ大人になって、俺だけ置いてかれてるみたいじゃん・・・って、これは!!!!



『うっわ!行きたかったコラボバトル大会のチケット!』


『すごいでしょー?』


『なんで持ってんの?しかもこんなアリーナのいい席!』


『サクラ姉さんがもらったんだって。でもサクラ姉さんはあんまり興味ないから、ほしいって言ったら譲ってくれた。
でね、ちょうど今週末にあるんだけど。』


『マジ?ちょうどいいな!』


『行きたい?』


『すっげえ行きたい!!』


『でもサトシはあたしと仲良くないらしいし?一緒にいってもつまんないよね。やっぱりチケット返してくれる?』


『さっ・・・さっきのは嘘だ!超仲良い!』



うん。こういうところもよくないな・・・。



『ふっ!あははは!そうだよねー!』



いつまでたっても、どうなっても子供な俺を、カスミは笑顔で受け止めてくれる。



『じゃあ一緒に観に行こうね。』



不思議なんだよな。


そんなに俺は優しくも出来ないのに、なんでそんなに笑えるんだよって。



『あ、そうだ。サトシ、ついでにこれもあげる。』


『何だ?これ。』



カスミは俺のことが好きなんだとタケシは言ってたけど、そもそも何で俺なんだろうって思う。



『ほら前に、ガムは好きだけど最後苦くなるの苦手って言ってたでしょ?
これね、あたしのオススメなの。』



そう言って俺にガムを差し出してきて、その拍子に後ろにあるカバンの中身が視界に入った。


・・あれ?


カスミの背中越しにカバンから飛び出してるガムがいくつも見えて、もしかして、と思った。



『・・・・・』


『ガム特有の後味って感じがしなくて、むしろ噛めば噛むほどおいしくなるの。』


『・・・お前それ俺のために買って試したのか?』


『だからこれ食べてみて、って・・・へ?』


『それ。』



俺が指差すと指さされた方を見て、カスミの顔がみるみる赤くなった。



『あ、えっと、試したっていうか、これはその・・・』 


『もしかして、タダでチケットもらったってのも嘘か?』


カスミがしどろもどろになってて、俺はすかさず聞いた。


『そ、それは本当よ!人魚ショー主演2回で手を打ってもらったもん!』


『条件付きだったのかよ。』


『あっ・・・。』



カスミの瞳がまた焦りでゆらゆら揺れる。



『い、今のは聞かなかったことに・・』


『いやもう聞いたし。なんで言わねぇの?』


『だ、だって条件付きって聞いたら、サトシ純粋に喜べないでしょ?だから言わないことにしたのに・・。あたしって口軽い。』



・・・なんだそりゃ。


お前はなんなんだ。

意味がわかんねぇ。



そんなのもうさぁ・・・可愛すぎるんだって。



『観戦の日、ご飯おごる。』


『えっ。だからそういうのいいって。』


『カスミに拒否権はない。』


『えぇー』



なぁ・・・・やっぱりタケシの言う通りなのか?



『どこ行きたいか考えとけよ。あと、そのショーの日決まったら教えて。』


『え?もしかして観に来てくれるの?』


『当たり前じゃん。そんなのチケットのことがなくても、カスミがやるなら行きたいに決まってるじゃんか。』


『やった。気合い割り増しで頑張るね!』



――お前俺のこと、好きなのか?



『・・・チケットとガムありがとな。すげぇ嬉しい。』


『それならよかった。』



そうだったらいいなと、嬉しそうな笑顔を見せるカスミを横目に、俺は心の底からそう願った。



その週末、2人で観戦に行った後、バトルを観た後ってのもあって話が盛り上がり、帰り道ファミレスに入った。





『最後のあの弾丸攻撃はマジ凄かったな!!』


『一撃であの素早いピジョットに当たったもんね。』


『それを受けたケンタロスがまたさぁ!』


『うんうん!ピジョットが体制立て直す間あえて身体を張って前に出て、ピジョットの敵への風の追い討ちの中でもバランスも崩さずに、そこからの2頭の快進撃が凄かったね』


『そうそう!いやすげぇ熱いコンボバトルだったなぁー!!!はぐっ・・・ゴクン。それでさぁ!』



腹も減ってるけど、でももっと話もしたい俺は行儀が悪いけどどっちも同時に進行する。
そんな俺を見てカスミは笑い始めた。



『もう食べるか喋るかどっちかにしなさいよー。でもま、そんな顔を見れたなら連れてきた甲斐があったわ。』


『そんな顔って?』


『んー?心底楽しそうな顔。』


『はぁ?なんだそれ。』


『要するに、可愛いなーって。』


『可愛っ?!お、お前、男に可愛いとか言うなよな。』


『あれ?ダメなの?本当に可愛いのに。』



いやいや、可愛いはお前の専門だろ。



『だからもう言うなって。』


『ねぇ口元にソースついてる。』


『え?どこ?』


『もっと左よ。』


『どこだよ。』



口をゴシゴシと拭いてたら、カスミが手でぬぐってくれた。



『むしゃむしゃ食べてるサトシもかーわいっ』


『だからもう言うなって!』



可愛いのはお前だって言ってんだろ。


言ってないけど。



『ねぇねぇサトシ。手をパーってして。』


『はぁ?なんだよ?』


『いいから。』



渋々と差し出す俺の手に、カスミが手を近づけてきた。



『・・・サトシこんなに手大きかったっけ?』


『さぁ。自分じゃ分かんないけど。』


『でもあたしとそこまで大きく差はないか。』


『おい、嫌味かよ。』


『違うよー。あたしの手も大きければ、サトシに何かあった時は受け止められるかなって言いたかったの。』



・・・・・あ、また。



『まぁあのケンタロスほどはたくましくないけど、あんな風に支えられたらカッコ良いよね。』



俺のため。



『でもあれだね。そんなに大きくなくても骨がゴツゴツしてる。このカルシウムがもっと身長にいけばよかったのにねー。』



カスミが柔らかい手でニギニギと俺の手を握ったり触ったりしてくる。


自分で気づいてないだろうけど、優しくてどこか切ない顔してる。



『また嫌味言いやがって。』


『あははは。手が冷たいねサトシ。』




あー・・・




お前のこと早く、俺のもんにしたいよ。




その瞬間、手を握り返してしまった。


途端に驚いて離れるカスミ。




『あ、ご、ごめん!急に指が動いたからビックリして・・。』


『散々握っといて、俺が手を握り返したらダメなわけ?』




ーーー・・・なぁカスミ。
今ここで好きって言ったら、お前どうする?




『やっいいんだけど・・・・握り返されるのは予想外だったから。』


『お前なんで顔赤いんだ?』


『な、なんでって言われても・・・』




抱きしめたり、キスしたりしたら、




『あはは、変な顔。』


『な、何・・・?!』




お前はどんな顔見せるんだ?




『・・・・もっとすげぇ可愛いんだろうな。』


『へ?!何て言ったの?何が可愛い・・・うわっ』



あーあ。触っちゃったよ。


俺って堪え性ねぇな。


まぁいいや。

ついでに頭もやっとこ。


・・・・あともう少しの我慢だ。


カスミの髪をぐしゃぐしゃーっと掻き撫でた。



『ほらさっさと食えよ。冷めるぞ。』


『えっ?あっ、うん・・・』



やば。・・・・もっと触りたい。


ペタペタと柔らかい頬っぺや腕に触れてみたい。


サラサラの髪をもっと撫でてやりたい。


もっと言えば誰も知らないカスミの体中の温もりを肌で感じてみたい。


こいつのこと、ぐちゃぐちゃにして、全部俺のものにしたい。



・・・俺が何にも知らない昔のお子ちゃまのままだと思ってるカスミがこんなこと知ったら、


お前は俺のことどう思うのかな。




―――そんなことを胸に秘めながら数日後に迎えたリーグ戦の帰り道。




俺は決勝まで上り詰めて、現ポケモンマスターに敗退した。



セキエイリーグは俺にとっては念願で、今度こそ優勝するはずだったけど、まだまだ上がいる。


死ぬほど悔しいけど、だからこそ俺はもっともっと強くなれるんだ。




次こそはと誓ってセキエイスタジアムから離れた、手持ち無沙汰な帰り道。




「実は最近ね、サトシがあたしの恋人だったらなって思うんだよね。」




カスミに先を越された。




「自分でもびっくりなんだけどね、一緒にいるのが楽しすぎて、独り占めしたいなって思ったり、もういっそ付き合えたら最高なのにって思ったり。」




ほんの数秒前までは、セキエイリーグが終わってしまった喪失感で頭のなかがぼんやりしてたのに。




「辛そうなときや、落ち込んでるとき、思いきり抱き締めたいなって思うの。そんなとき、サトシがあたしを求めてくれたら幸せだなって。」




欲は怖い。


急速に違う場所の歯車が走り出した。




「変なこと言ってるよねあたし。サトシがこんなときに―――・・」



「別に。」




俺にたいしてそういう感情を持ってることを、冗談っぽく、謝って終わらせようとしたから遮って否定した。




「お前は変なこと言ってない。」




なに驚いてるんだよ。


綺麗な目玉さらにとろとろにさせて。




「中途半端に言い逃げかよ。最後まで全部伝えろよ。」




先を越すのなら、俺に全部伝えてくれ。




「あ、あたし!本当は友達のままでもかまわないって思ってたの。友達だったから一緒に経験できたこともたくさんであったから。
でもほんのちょっとだけ欲が出てきちゃって、それ以上に好きが上回ってきちゃってもうどうしようもなくって。」




全部、受け止めるから。




「いっぱいあたしに構ってくれるの嬉しいし、頭撫でてくれるのすごく大好きだし、サトシのことを全部独占したいって思うようになって、いつのまにか誰かにとられたらどうしようって怖くなってるし、でも今の関係が無くなるのも怖いから告白もできなくて。」




―――・・・今日やっと。




「サトシのことが好きすぎて、毎日胸が苦しい。でも、もしサトシが受け入れてくれたら・・・この苦しいの全部なくなる。」




お前が手に入る―――・・・




「大好き。ずっとあたしの隣にいてほしい。あたし、サトシがほしくてたまらないの。」




目を潤ませながら俺をまっすぐ見つめてそう言ったカスミを引き寄せて、前髪を撫で上げた。




「俺もずっと、お前がほしかった。」


「ほ・・・ほんとに?」


「ほんとだよ。結構前から、頭んなかお前でいっぱいだった。」




かわいいお前も、泣き虫なお前も、今日から全部俺のもんだ。




「じゃあ・・・今日からあたしとサトシは恋人同士?」


「そうだな。ほらもう泣くなよ。」


「だ、だって・・・」


「緊張した?」


「うん。死ぬかと思った。」


「よしよし、えらいえらい。頑張ったな。」


「うん。」


「ていうか、お前から言われるとはな。同じ気持ちだろうなとは思ってたから、近いうちに俺が言おうと思ってたのに。」


「・・・・じゃあご褒美もらう。」


「え?」



カスミに手を強く握られて、次の瞬間にはキスされてた。



「・・・カスミ、手が早すぎ。」



そう言いながら、たぶん俺の口元はちょっと緩んでたかも。



それにそんなことを言っておいてなんだけど、カスミと手を繋いで歩いてたら、もっとくっつきたくなるし、俺からもキスをしたくなってくる。



これじゃ俺の方が手が早いって言われそうだ。



「だってあたし毎日思ってたもん。サトシとキスしたい。抱きつきたいって。サトシは、思ったことない?」




考えたことない?ってそんなもん。




「・・・なくは、ないけど。」




触りたくてしかたなかったっつの。




「よかった。同じこと考えてたんだ。」




そうだよ。俺ってカスミが思ってる以上に、独占欲もあるし、カスミへの気持ちも強いんだよ。



ホッとしたように笑うカスミを横目で見て、俺はまたかわいいと思ってることも言わないけど。




「ねぇ、もしあたしの気持ちが重すぎたら言ってね。あ、重いって言われてもそれは直せないんだけどね。」




・・・それはこっちのセリフだ。



きっとこれからは全部隠せなくなってくる。



だってこんなにカスミが“大好き”だから。




「ふはっ。なんだそりゃ。」




こんな気持ちになったのはカスミが初めてだから、コントロールするなんてたぶん無理だ。


でもきっとカスミなら受け止めてくれる気がする。



これからカスミがもっと、俺がカスミを好きなのと同じくらい、俺を好きになってくれるといいな。




end

まりん様

リクエストありがとうございます(^^)少々お待ちくださいね(^^)読み直ししてくださるなんてとても嬉しいです★これからもよろしくお願いいたします★

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