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◆Main
臆病な2人






「全然変わってないな……」



マサラタウンとトキワシティの間にある道とも言えない道。



「あ…」



記憶を辿りながら川沿いをずっと歩いていたら、探していた景色が目の前にあって立ち止まった。



「たぶん、この辺だ……」



ここで、俺は



あいつに出逢った。





2






ーーーー10年前のあの春を、俺はずっと後悔している。






数日前タケシから、久しぶりにみんなで集まるからサトシも来いよと連絡が来た。



いわゆる同窓会だ。



俺は17歳のときに帰ったとき以来、この10年間一度もカントーに戻っていなくて、そろそろ戻ろうかと考えていた時期だったから、懐かしい仲間の誘いにOKの返事を出した。



この10年間、俺は昔の仲間たちに連絡すらほとんどしていなかった。



たぶんみんなはいつものことだと思っているはずだ。



だから笑って悪かったと言えば、みんなは許してくれると思うけど、たっぷりと嫌味を言われるんだろうな。



…理由を聞かれたらなんて言おうか。



「ん…?」



川の近くを歩いていると、岩場の上に人影が見えた。



こんなところに人なんて来るのか。



「…え」



その人影はずっと見ていなかったはずの、昔なら見慣れていた後ろ姿で目を見開いた。



どうして。


なんでここに。


どうしよう。



頭の中に問いかけだけがぐるぐる廻る。



…今ならまだ気付いていない。


俺、どうしたら…。



後ずさりした瞬間、いきなり勢いよく風が吹いて、舞い上がった葉っぱがハラハラと散って反射的に目を閉じた。



「サ、トシ…?」



次に目を開けたら、大きな瞳をまん丸く見開いた



「カス、ミ…」



彼女がいた。



「よ、よう!お前全然変わってないな!」


「あの、え…?」


「お、おいおいカスミ。まさか俺の顔忘れたのか?!」



動揺を隠すため取り繕うとする俺と、まるで奇妙なものを見ているような表情をしているカスミ。



…ていうか、なんかカスミ変わってなさすぎにも程があるくらい変わってないような…



「えっと。サトシ……なの?
サトシにお兄ちゃんはいないはずだし…。
でもどう見ても、あなたはサトシより年上で…」


「え?」


「それに…サトシは昨日1人で旅に出たはずです。あの、どなたかとお間違えじゃないですか?」


「はぁ?」



なに言ってるんだカスミのやつ。



いやでも確かに、カスミがかなり幼い気はするけど……



「お前、今いくつだ?」


「え…17ですけど」



……え?






ーーーーこんな不思議なことがあるのだろうか。






「じゃああなたは、未来から来たサトシなんですか…?」


「あーえっとー、そういうことになる…のか?」


「……」


「なんだよ」


「春って……変な人が出るっていうわよね」


「あのなぁ……」



ジトーっとした目で俺を見るカスミに思わずガックリと項垂れる。



そんな俺を見てふっとカスミが噴き出してクスクス笑った。



「こういうの小説とか映画で見たことあるけど、ほんとにこんなことが起こるなんて不思議ね。夢だとしても妙にリアルだし…」



…そうだよな。
これはたぶん都合のいい夢だ。

夢から覚めたら、またただの日常があるだけに違いない。

あ、そうだ。



「なに?……っていっひゃい!」


「いや夢だったらこれで覚めるだろ?」



ゴンっと足に衝撃が入り、今度は俺がいってー!と叫んだ。



「もうっ!つねるなら自分の頬っぺたつねりなさいよね!」



カスミが恨めがましい視線を俺に向けながら頬っぺたを撫でている。



俺も足がジンジン痛むのを感じる、ってことは……



「2人とも痛いってことは、これ夢じゃないってことじゃないか?!
すげーなこれ!タイムスリップかな?!」



昔時渡りに合ったけど、こんなところにセレビィがいるとは思えないし!



思わずワクワクし始めた俺に、カスミもつられて目をキラキラし始めた。



「タイムスリップ…
フフ、ますますファンタジーみたいね!
ねぇ、未来のあたしはどうしてる?」



キラキラした目を向けられた問いかけに、俺は胸がチクンと鳴って締め付けられた。






ーーー未来のお前は……






「向こうで俺と一緒に暮らしてる」



俺は、



「付き合ってんだ、俺ら」



嘘つきだ。





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