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いちばん




偶然にも衝撃的な出会い方をしたあたし達は、
ただ自転車を弁償してもらうため一緒に旅をすることになり、



気付いたら友達になっていて、気付いたら仲間になっていた。



あたしの大切なこの友達はこれから、たくさんの人たちのヒーローになるんだろう。



君が世界のどこにいても、何年経っても、
誰かに君のことを聞かれたらあたしは迷わず
彼は最高だって笑って答えるよ。



だから、いってらっしゃい。


さようなら、サトシ。













「ほんっっとに、ポケモンリーグの戦いってスゴイのね!!スッゴく興奮しちゃった!」


「あったり前だろ。なんたって世界で1人のポケモンマスターを決めるバトルだぜ?」


「四天王の強さも分かってるつもりだったけど、やっぱり1回見ただけじゃスゴさはわからないわね!歴代のバトル見てたら、あたしまで熱くなっちゃった!」


「だろっ?部屋戻ったら、次のシーズンのポケモンマスターのバトル見せてやるよ。あのファイナルバトルは見ないと人生絶対損してる!」


「本当?あたし今まですっごく人生損してた!」



冬の高い空の下、息が白くなるほど寒いのに、興奮冷めやらないあたし達は夢中になって話をしていた。



「しっかしポケモンリーグのバトルを見たことなかったとか信じらんねぇ。毎年テレビであんな盛大に取り上げられてんのにさ。」


「だって今まで全然興味なかったんだもん!」


「そんなこといばるなっつーの。」



ピュウーと音を立てて冷たい風が吹き抜けていき、2人して身体を震わせた。



「ここベランダが大きい分、風がよく通るみたいね・・」


ー寒ぃっ。ていうか、本当に流れ星くるのかよ。さっきから1個も通らないじゃん。」


「タケシが今日だって言ってたもん。」


「うし座、なんとかだっけ?」


「しし座流星群っ。」


「あーそれだ。」



冷たい風にまた身体を震わせて、あたしはマフラーに顔を埋めた。



「とりあえずもうちょい待ってみて、来なかったら部屋戻るぞ。」


「はーい・・。」



空気が冷えているから、澄んだ綺麗な夜空が広がっている。



「お願い事したかったなー・・」


「何を言うつもりだったんだよ。」


「うーん、何だろ。」


「・・決めとかないと絶対間に合わないと思うぞ。」



サトシが呆れたようにそう言いいながら、空を見上げた。



「流れやすい方向とかないのかよ?」


「分かんない。ていうか、北ってどっち?」


「俺が知ってるわけないだろ。」


「えー、じゃあもうダメじゃない。」



吹き出すようにして笑い合った後、サトシが夜空に向かって真っ直ぐに手を伸ばした。



「・・カントーは、どっちだろ。」


「どっちなんだろうね。
・・・ねぇサトシ本当に、ポケモンマスターになるの?」


「おう。」


「10代でポケモンマスターになった人っているの?」


「1人いたよ。」


「へー!」


「でも年齢とかそういうの関係ねーよ。
強い奴が行くところだ。」



そう言い切ったサトシの横顔は、期待と自信に満ち溢れた顔をしていた。



「俺はもっともっと強くなって、絶対にあそこに行く。
んで、スッゲー活躍する。
1番強い奴らばっかのとこで、1番になる。」


「1番のとこで1番・・・」



サトシの言葉を反芻して、あたしはニッと笑った。



「っあたしも!あたしも水ポケモンマスターになる!」


「お?俺にバッチとられたくせに言うじゃん。」


「あれはお姉ちゃんが渡しただけでしょ?バトル自体はあたしの方が有利だったもん!」


「俺の方が有利でしたー!ピカチュウが出てくれたら俺が勝ってたね。」


「何よ!いっぱいいっぱい練習して、サトシよりうーんと強くなって、あたしの方が先に水ポケモンマスターになる!」


「俺の方が先だっつーの!」


「あたしが先よ!」


「俺だよ!」


「サトシがポケモンリーグに来た時は、先輩としていろいろ教えてあげてもいいわよ?」


「言ったな!上等だぜ!」


「どっちが先だか競争だ!」
「どっちが先だか競争よ!」



その瞬間、夜空を流れ星が走った。



「「あっ!!」」



2人して空を見上げて思い切り声をあげた。



「「ポケモンマスター!!!」」




ーーー本当にびっくりした。



世界で1番になんて、考えたことがなかったから新鮮だった。



君が本気でそう思っていることも。



君ならなれると、あたしもなりたいと思った自分にも。



ーー・・あの日の言葉が、もうすぐで現実になる。



光の中心で幸せに、正しい道を歩いてほしい。



手にするものに、間違いなどないように。



間違いなど何一つないように。




「いっ・・・!」



手首に食い込む手の力が痛くて、自然と声がもれた。



でもそれもサトシに深く口付けられて飲み込まれて行く。



乱暴に抑え込まれた身体は動かなくて、抵抗は諦めた。



ーーなんでこんなことになってんのよ。


ーーバッカじゃないの・・。



「カスミ・・・」


「気、済んだ・・?」



自分でも驚くほど落ち着いた声が出た。



サトシの目からは怒りが消えていて、戸惑うように揺れた瞳であたしを見つめてくる。



「俺は・・気とか・・」


「いいよ・・・もう何でも。」



あたしの言葉に、サトシが顔を歪める。



「あたしだからよかったけど、もうバカなことしないように気をつけるのよ?
無理矢理キスして押し倒すなんて、そんなことしたらどれだけ叩かれるかーー・・」


「カスミ!!」



遮られて、怒りに満ちた顔で凄まれた。



こんなに怒ってるサトシ、初めて見た。



「なに?また無理矢理キスするの?あんた全然楽しそうじゃなかったけど。」



サトシの顔が歪んで、握りしめた拳が床を殴った。



「・・・俺は謝らないぞ。」



そう言い捨てて、サトシは部屋を出て行った。


でも家を出たわけではなく、リビングに行ったようだった。



「・・・謝りなさいよ。」



そしたら許すから。

何もなかったように振る舞えるから。



「あたし別に、本当にそう思っただけで・・。
なのにこんなことになって。」



ーーこんな日に、したかったんじゃないのに。






to be continued
中途半端ですが続きを書く時間がなかなかとれなくて、とりあえず分けてアップします!


メールをくださった葵様★
こんなところですが返事を書かせていただきます(^-^)
メッセージ受け取りました!いつもご覧いただきありがとうございます(^-^)
久しぶりにメールをいただいたので、すごく嬉しかったです(^-^)
小さくなったサトシの話、思う存分サトシを可愛くかけてわたしもすごく楽しくなっていたのを覚えています笑。この題材ならあざといサトシでもアリかなって思いました笑(^-^)
これからも楽しんでいただければ幸いです!!

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あきゅろす。
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