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恋をしたのは・6・
※R18
『サトシ君、しっかりして!!』
『すぐ救急車呼ぶからね!大丈夫だから!!ねぇサトシ君!!』
『どうか、あたしのことは忘れて・・・』
恋をしたのは・6・
「サトシ!!おいしっかりしろ!サトシ!」
「サトシ、大丈夫!?」
「聞こえる?わたし達が分かる?」
・・・タケシに、・・ヒカリ・・ハルカ・・?
「あぁ・・・」
「よかった。わたしお医者さんに目を覚ましたって伝えてくる!」
ハルカが部屋を出て行って、どうしてここにいるのかと俺は身体を起こした。
「っ・・・いてて・・・」
「気分はどうだ?」
「・・頭が割れそうに痛ぇ・・。ここ・・病院?」
「あぁ。」
「俺なんで病院に・・・」
ハッとして俺は顔を上げた。
「カスミちゃん・・・!そうだ、カスミちゃんは!?」
「サトシ!お前記憶が・・!」
「記憶・・?・・そうだ、アルバム・・・」
「アルバム?」
「タケシやヒカリにハルカもみんな・・カスミちゃんと一緒に写ってて・・・そこに俺も−−−・・」
あれは、どういう−−・・?
ズキっと刺すような痛みが頭を走った。
「痛っ・・・・・」
「無理に思い出そうとするな。脳に負担がかかる。」
「カスミちゃんは・・・今どこにいる?」
痛みに耐えながらタケシを見上げれば、タケシの横にいたヒカリが肩を落とした。
「・・・思い出したわけじゃないのね。」
「だな・・・。」
「カスミならもう帰ったよ。」
ドアを開けてハルカが答えながら、俺のそばまで来てベッドに腰掛ける。
−−−頭が痛くてまともに考えられない。
だけどハルカの口からカスミちゃんの名前が自然と出たことで、少し意識が呼び戻された。
「サトシ、身体は平気?」
「あぁ・・。それより、一体何がどうなって・・・」
「うん・・・」
ハルカはタケシとヒカリと目を合わせてから、1つ息を吐いて、
「事情説明はわたしたちがすることになってるの。」
意を決するようにそう言い、
「どういう、こと・・?さっきから3人とも何を言ってるんだよ。」
「信じられないかもしれないけど、まずは聞いて。」
俺の知らない“俺の記憶”を話し始めた。
−−−−−−・・・
−−年6月
『でさ、昨日は久しぶりにセレナがバトルを観に来てくれたんだ。
すぐ帰っちゃったんだけど、お前にも会いたいって言ってたし、2人ともたぶん気が合うと思うから、今度−−−・・』
『−−−好き』
『え?』
『あたし、サトシのことが、好きなの・・。』
『・・・・』
『な、なんか言って・・。』
『・・・・えっ、えっ何?ドッキリか何か!?』
『へ?・・・』
『だって、カスミがそんなこと言ってくれるなん−−−・・て、って・・・カスミ?』
『・・・っ』
『え・・っと・・・。好きってもしかして・・・・・そういう意味?』
『・・・・・・・困る、よね。』
『え?』
『ごめんね急に、こんなこと言って・・・あっ、今のは忘れて!ね!何も聞かなかったことに−−・・・』
『あ、いや、ちょっとタンマ!』
『え?』
『いや、その・・・なんつうか・・・俺、正直カスミのこと、どう想ってるのかとかそんなの考えたことなかったんだけど・・。
今その・・・・−−−嬉しくて。
嬉しい自分に混乱してるっていうか・・・。』
『え・・・・』
『あ、でも、返事するのは少し時間もらっていいかな。ちょっと今混乱してるし、落ち着いて考えてから・・・・
って、えぇ!?なんでカスミ泣いてんの?ごめん、俺なんか無神経なこと言った!?』
−−年1月
『カスミ見て。ここに写ってるカスミ、顔がすげぇ緊張してる。』
『そ、そんなことないもん。』
『アハハ、このカスミかわいいな。付き合った記念に写真撮りたいって言ったのカスミなのに、言い出した本人が照れてやんの。
・・あ。なぁ、今からもう一回写真撮ろうぜ。』
『え、ここで?』
『いいだろー。今日で付き合って6ヶ月の記念日なんだしさ。』
『・・・覚えてたんだ。』
『バーカ。一生忘れねぇっつの。』
−−年7月
『カスミ・・大丈夫?痛くない・・?』
『っ・・・ぁ・・大丈夫。早く・・きて。』
『もー・・・だから煽んなっつの。それより、顔見たいから電気つけちゃダメか?』
『・・お断りします』
『触るのはよくて明かりはダメってよく分かんないんだけどなぁ・・。』
『だ・・って・・』
『ほーら、息止めないで』
『・・・ん・・』
『明日もジム戦あるんだろ?だから無理させたくないんだ。』
『でもっ・・』
『お前は恋人だけど、ライバルでもあるんだぜ。俺のせいでライバルが本調子でバトル出来ないのは嫌だからな。大切にさせてくれよ。な?』
『・・・・分かった。』
『なぁカスミ、20歳になったら一緒に暮らそう?そしたら毎日一緒にいられるし、帰らなくて済むだろ。』
『ちょっ・・・こん・・な時に言うこと・・じゃ・・。』
『お前が一番素直になるのはこの時だって知ってるからな。・・な、カスミ。一緒に暮らそうぜ。』
『・・・ほんっと、ズルいんだから・・・』
『えー、お互い様だろ?』
−−−・・・・
「−−−−・・・10歳の時に出会って、旅をして、恋人になって、一緒に暮らしてた・・?
俺と・・・・カスミちゃんが?」
「お前さ・・旅に出た日のこととか、本当に今でも思い出せないのか?」
「えぇ?忘れるわけないだろ!ピカチュウと出会って親友になった日だぜ?自転車を借りて、ピカチュウと一緒にオニスズメから逃げて・・・」
「誰に」
「え・・?」
「誰に自転車を借りたんだ?」
「・・・・タ、タケシ、に・・・?」
−−−−いや、違う。あれは・・・
『どうしてこんな怪我させたの!?早くポケモンセンターに連れて行かなきゃ!』
『自転車を弁償してもらうまで、ついて行きますからね!!』
【どうか、あたしのことは忘れて・・・】
「・・・っ痛・・!」
「タケシ!具体的なことを思い出させようとしちゃダメかも。話すなら、事実だけを端的に説明しないとだよ。」
「そうか、悪い・・。俺もどの程度まで説明すりゃいいのか・・・。」
「っじゃあ・・・何だよ。俺は−−−・・記憶喪失だとでも言うのかよ。」
・・・違うと、言ってほしい。
だけど俺の投げた半信半疑の問いかけに、タケシたちは眉を下げた。
「今から6年前、お前は事故にあった。その後遺症で、記憶に何らかの障害があるのは間違いないんだ。」
事故・・・?
「そうだ・・。1度事故にあったのは覚えてる・・・。」
確か道路に子供が飛び出してきて、とっさにかばったら車と接触して・・・
その後仕事を休む羽目になって大変だった。
−−−だけど
「俺・・・何であんな所に・・?」
「・・詳しいことはわたしたちも知らないけど、事故に遭う前、サトシはカスミと会ってたらしいの。」
「カスミちゃんと・・?」
同棲してたのに、会ってた・・・?
タケシが目を伏せて、言いにくそうに口を開く。
俺はさっきから、まるで自分の話ではないような、だけど何かが紐解かれていくような感覚で、話を聞いていた。
−−−・・ねぇカスミちゃん
「別れ話をしてたって、俺は聞いてる。」
俺たちの間に、何があったの−−−・・
to be continued
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