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恋をしたのは・2・
※R18指定







君から欲しいのはたった一言。



ただそれだけなのに。



笑った顔で、俺の名前を呼んで、



俺が“好き”だって、



君からその一言が聞けたら



他には何もいらないのに。













「サトシ君お疲れさまー」


「サトシ君今日のバトルもよかったよ!明日は写真撮影よろしくね。」


「はーい。ありがとうございました、お疲れ様でしたー。」






一人になって、椅子にもたれて息をつく。



用意された部屋のテーブルの上に目をやれば、俺宛に届いた花束やたくさんの手紙の山。



(またすごい量だな・・・)



手紙の山から一通を手にとって中身を見る。



どうやら女の子からの手紙のようだった。



そこには熱烈な応援メッセージと一緒に、俺への好きの言葉が飛び交っていた。



どうにも照れ臭くて、ぽりぽりと頭を掻く。



今までこんなにチヤホヤされる機会もなかった俺は、未だにこういうのに慣れなくて、とにかく照れくさくてむず痒くて仕方がなくなる。



送ってくる手紙の大半は女の子からのものが多くて、中には本当にラブレターのような内容の手紙もあったりして、正直かなり戸惑う。



それでも、手紙を読むのは止めない。
必ず最後の一通まで目は通すようにしている。



この子たちと会ったことはないし顔も知らないけど、俺に好意を寄せてくれて手紙を書いてくれたんだと思うから。



まぁきっと女の子たちもファンとして好きってことなのかもしれないけど。



だけど。





「好き・・か・・・。」





ーーもしも。



もしもこの子たちの“好き”が、俺がカスミちゃんを想うのと同じくらいの“好き”だったら。





そう思うと途端に他人事じゃなくなって、適当にあしらうこともできなくて、



その気持ちに応えられない代わりにちゃんと目を通そうと思ってしまう。



気持ちが届かないことが、どれだけ悲しいのかを知っているから。



だから外でも、ファンの子から声をかけられたら笑顔で応対するようにしている。



たぶん、カスミちゃんを好きになっていなければ、鬱陶しがっていたかもしれないし、もらった手紙を手にすることすらなかったかもしれない。



だけどカスミちゃんが俺を変えた。


カスミちゃんに恋をして俺は変わった。



だけどカスミちゃんは・・・





「さて、と・・」



少しの期待を込めて携帯を開いてみるが、カスミちゃんからの連絡はない。




「はぁ・・。
今日、会、える、?会い、たいっと。」




ため息を一つ吐いて、カスミちゃんにメールを送った。




連絡をするのはいつも俺からで、少しでも時間が作れたら、会えるかどうかすぐに連絡をする。



「この前断られたから、今日はたぶん会えるよな・・。」



ーーそして、いつも3回に1回は断られる。



その間に誰とどこで何をしてるのか考えたくもないけど、部屋を見る限り誰かを部屋に上げている様子はない。



もしかして部屋に上げるのは俺だけなのかなって思うと、不覚にも喜んでしまう自分がいて、それがとても情けない。



(そもそも本当にそんな相手がいるのか謎なんだよなぁ・・・)



知れば知るほど、カスミちゃんがそういうことをするような子とは思えないし、



だけどただ嘘であってほしいと願ってるだけなのかもしれないとも思う。



カスミちゃんは綺麗だし、どこか儚げで、俺みたいに虜になる奴はいっぱいいるはずだ。



バイトと家にいる時以外は、彼女は一体何をしてるんだろう・・。



俺から連絡がきたときは、どんな顔をしてるんだろう。



夜眠りにつくときは、どんなことを考えているんだろう・・



俺、知り合って1年も経つのに、カスミちゃんのことほとんど何も知らないんだよな・・。



それなのに、なんでこんなに好きなんだろう。




『サトシ君』




瞼を閉じると一番最初に顔が浮かぶ人。



滅多に見せない笑顔で、優しく名前を呼ばれるだけで、体の中で嵐が起こったみたいに掻き乱されて、鷲掴みにされる。




「会いたいな・・・」




思わず声に出た自分に笑ってしまった。




声が聞きたい。

早く顔が見たい。

思いっきり抱き締めたい。




カスミちゃんの細い身体から伝わる体温に触れると、なぜかとても安心出来て、家に帰りつけたようなそんな気持ちになる。




それに実際カスミちゃんの家には、話したこともないのに俺の好きなジュースやCDが置いてあったり、俺が昔から使ってたのと同じ歯磨き粉があったりして、


それを知った時は、運命かもって思った。



そんなこと言ったら、カスミちゃんはきっと笑うだろうけど。



それでもーー・・・そうだって思っちゃったんだから仕方ないじゃん。



「あっ返事だ。」



“お疲れ様。待ってるね。”と書かれたメールに、自然と口許が緩んでいく。



きっとカスミちゃんだって、俺のことを少しは特別だって思ってるはずなんだ。



だって、俺を呼ぶ時はいつも、
何とも思ってないんだからねって感じで、
少し寂しそうに、大事そうに、俺の名前を口にするから。



時々そうやって少しだけ、カスミちゃんからの気持ちを感じられる。



俺への気持ちを隠していたいのか、認めたくないのか分からないけど。



少なくとも、俺に対しての気持ちが少しずつ感じられるようになってきた。



俺のこと、いい加減“好き”だって言ってくれればいいのにーー・・・




「い、てて・・」




携帯を閉じて立ち上がろうとした時、いつもの軽い頭痛がして頭を抑えた。



元から頭痛はよくあるけど、最近頻度が増えてきた気がする・・・




ここのところ働きすぎなのかもしれない。


少しバトル以外の仕事は減らしてもらうよう頼んでみよう。




そう思いながら、足早に部屋を立ち去った。





to be continued





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あきゅろす。
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