ビアンキ、来る!
沢田家、伊織宛に一枚の手紙が届いた。
差出人は笹川京子。内容は・・・、
「伊織ちゃん。京子ちゃんから今日の午後、調理実習でおにぎりを作るから是非おいで、って招待状が届いてるわよ♪」
「行きましゅ!」
もちろんこの招待状、昨日のうちに作り(手作り)今日の朝、沢田家郵便ポストに京子自らが入れたのだ。
「じゃあ、はい。この招待状を持って。幼稚園が終わったら並中の京子ちゃんのクラスまで行くのよ?招待状を京子ちゃんに渡せば大丈夫よ。」
必要最低限の物(エプロンなど)は京子が準備するため、この招待状だけを持ってくればいいと書いてあった。
「じゃあ、気を付けて行ってらっしゃい。」
「あい!気を付けて行ってましゅ!」
今日も元気にニコニコ登園の伊織に奈々は笑顔で手を振り見送った朝。
(いつものように獄寺、山本と登園)
昼になり(早いって言わないで)スキップをしながら並中へ。
京子のいる教室へ行き(途中、教師達に聞きながら)招待状を京子に渡す。
「伊織ちゃん、いらっしゃい!」
「あい!しょーたいじょー、あいがとうごじゃいましゅ!」
奈々に教えてもらった言葉を言えば近くにいた女子達はみな、伊織の頭を撫で回す。
「おっ!伊織!朝ぶりなのな。」
「十代目!いかがなさいましたか!?」
女子の騒ぎを聞きつけた獄寺と山本が伊織を見付けそれぞれ言葉を交わす。
「ふふ。私が招待したの。」
「笹川が?」
「うん!今日の調理実習、伊織ちゃんにもおにぎりを作らせようと思って♪」
そしてあわよくば餌付けも…、と言う言葉は飲み込んだ。
母親である奈々の料理は絶品だ。絶品料理に慣れた舌を餌付けするのはかなり難しいのだ。
そう思い二人をチラッと見てみる。
山本はニコニコしているが何故か獄寺はプルプルしている。
そして京子の肩をいきなりガッと掴み、
「笹川・・・、テメェやるじゃねーか。」
何故か涙目だ。京子は若干どん引きし、山本は「やっぱ獄寺キモいのな…。」と呟き、実はこっそり見ていたリボーンはもう本当こいつどうしようか、と悩んでいた。
「さ、伊織ちゃん。調理室に行こっか。」
獄寺をムシする方向で調理実習は始まった。
「京子姉たん、出来たの!」
「わぁ!いっぱい出来たね!」
丸っこく、小さなおにぎりだが沢山出来、やりきった感はあった。
「この二つは?」
タッパー二つにおにぎりが分けてあった。
「こっちはきょーちゃん!こっちはママ達!」
「そっか。喜ぶよ、きっと。」
「…こっちはみんなにあげゆの。」
「みんな?」
「京子姉たんのクラスのみんな。」
京子の目尻に熱いものが込み上げて来た。
でもそこはグッと堪えてとびっきりの笑顔でお礼を言った。
「なかなか、女を落とす術を持ってるじゃねぇか。」
唯一の天然癒しに、リボーンでさえもちょび、泣きそうになった。
物陰に潜む物体を見るまでは。
「(あ、あいつは毒サソリ!?標的は……伊織か!?やべぇ、何とかしねぇと!!)」
「今日は調理実習で作ったおにぎりを男子達にくれてやるー!」
男子陣達はみな、嬉しそうに雄叫びをあげている。
「そしてこれは伊織ちゃんから!クラスのみんなにお裾分け!」
みんなそれぞれ一つづつ食べては伊織にお礼を言いながら頭をワシャワシャ撫でる。
獄寺に至っては涙を流し頬擦り。
「伊織ちゃん。」
「京子姉たん!」
「一つ、どおかな?」
京子は自分の作ったおにぎりを差し出した。
普通の大きさではなく、伊織でも食べられる大きさだ。
「食べりゅ!」
「ふふ、はいどうぞ。」
おにぎりに手を伸ばしたのとリボーンが教室の扉を勢いよく開けた瞬間とが重なった。
そして、伊織の手にあるおにぎりを見てギョッとした。なぜならそれは、
「(愛さえあればどんな料理でも食べれるはずよ!)」
「伊織!そのおにぎりを食うんじゃねぇ!」
パクッ
「(なっ…!遅かっ、た!)くそ!」
あまりにも遅過ぎた事にリボーンはどうしようもなく、苛立った。
こんな事なら愛人を作らなきゃよかった。そもそももっと早くビアンキがいる事に気付いていれば!
「伊織ちゃん、美味しい?」
「あい!おいしーれしゅ!」
「いっぱいあるからね!」
「「え?」」
(ふ、普通に食べてる、だと…?)
(私のポイズンクッキングが効かないなんて…!)
その後、応接室に行き雲雀におにぎりを渡して帰路についた。
ビアンキはなぜかリボーンに引っ張られ沢田家へ連行。事情を大方説明し、ビアンキにも家庭教師の仕事を手伝ってもらう事を条件に居候するのだった。
「ふふ。伊織ちゃんの作ったおにぎりは美味しいわ♪」
「まぁまぁだぞ。」
「ランボさんにもー!」
「これが愛の味ね。」
「あい!」
−−−−−−−−−−
別に味覚音痴とか特別な舌じゃありません。
ビアンキも言っている通り愛ある料理にはポイズンクッキングも無効なのです。
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