座敷童
「うちのクラス、最近うなぎ上りだね。」
「そーね。私なんてテストで100点とったのよ!」
一希は何点だった?と聞かれたので、私も100点だったよ、と答えた。
「一希にも幸運の女神がついてるのね。」
「こーら。一希はちゃんと予習復習をしてるからだ。勉強しないでいい点が取れるか。」
「取ってるじゃない、ほら。」
ヒラヒラ〜と100点のテストを見せる美樹ちゃん。
しかしまぁ、本当最近このクラスはいい感じ。いい感じすぎて逆に怖い!
「ぬーべー先生。」
「一希。どうした?」
「ここ最近の状況が気になって。」
ある時は広くんのサッカーチームが三連勝したり(まぁ、広くんがいるから当たり前だけど)、またある時は郷子ちゃんのよい歯コンクールで一等取ったり(郷子ちゃんに不可能はないから当然か)、またまたある時は晶くんが県の美術展で金賞とったり(晶くんに創作で勝つ人はまずいないけど)…。
「これも5年3組の日頃の行いがいいからなのかな?」
「あれだよ、あれ。」
チョイチョイと指差す方を見れば、
「市松人形?」
「やはり一希には見えるか。あれは人形じゃなく座敷童だ。」
「座敷童?」
じゃあ最近運がいいのはあの子のおかげなのか…。
ぬーべー先生を見ればため息はいてる。どったの?
「このままじゃあいつらは努力しないダメなヤツになってしまう…!」
「ぬーべー先生……。」
まず生徒を信じてみようよ…。
「鵺野先生。」
「あ、リツコ先生だー。」
「一希ちゃん、久しぶり。」
「はーい。」
いや、まぁ、私も元5-2の生徒だからリツコ先生とは仲良しよ?ぶっちゃけ、あれからよくお話しとかするし。
だからぬーべー先生、あんまりジロジロこっち見ないでよ。しかもなんか小声で「いつからそんな仲に…?」って聞こえるんだけど。そんなに意外か?
「それよりもリツコ先生。ぬーべー先生に用があるんじゃないの?」
「ええ。実は映画のチケットもらったんですけど一緒に行きませんか?」
その瞬間、ぬーべー先生の顔が壊れた。
そりゃあもうニヤケ顔の涙目。漫画の主人公じゃとてもじゃないが出来ない顔だ。
まぁ、いいや。下校だし帰ろう。
「ぬーべー先生、リツコ先生。さようなら〜。」
「さようなら、一希ちゃん。」
郷子ちゃん達が待つ、玄関に急ぐ。
「あ、一希!遅ーい!」
「えへへ。ナンパされてたんだー。」
「はは、誰にだよ。」
そりゃぁもちろん、リツコ先生にだよー。
あ、でもなんかぬーべー先生を逆ナンしてたしなー。
「あ、そう言えば!駅前に新しいゲーセン出来たの知ってる?」
「本当?太鼓の超人あるかな?」
「あるわよ、きっと。」
よーし!なら日頃ウィーyouで鍛えた腕を発揮させなきゃ!
「先に行ってる!カバン持ってて!」
カバンを郷子ちゃんに投げつけ道路へと出た広くん。
パァァァァアァァア
「広!」
「広くん!」
激怒しそうなトラックがスレスレのところで避け、それに積んである丸太が広くん目掛け落ちてくるが運良く広くんには当たらず無人車に刺さる。道路は一瞬にして大惨事だ。
「広くん?広くん!」
でもどうしよう広くんが見当たらないよ…!
「一希、こっち!」
「え……?」
振り向けばマンホールから頭を出す広くんが。
しかも悠長にびっくらこいた、なんて言って。
「うー…。」
「一希?どうしたんだ?」
「どうしたんだ?じゃないよ!こっちは心臓が止まるかと思ったんだよ?せっかく……!せっかくお友達になれたのに…!危うく友達を失うところだったんだからね……!」
「一希……。」
分かっている。この奇跡は全部座敷童のおかげだって。
彼女がいなかったら広くんは……、
「ごめん、一希。」
「ふぇ…?」
「俺、約束するよ。もうお前を泣かせないって。お前も5年3組も。だから許してくれ、な?」
広くんの約束に、郷子ちゃんの涙を拭う優しい指に、この人達と友達でよかった、って心から思える。
だから、
「ん。」
小指を立てて指切りするっきゃないでしょ。
その瞬間、ぬーべー先生からガサリと音がした。
−−−−−−−−−−
広夢ではない。
あくまで、友情だ。
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