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エンジェル様




「ねーねー。エンジェル様って遊び、知ってる?」
「エンジェル様?」



放課後、教室で本を読んでいたら美樹ちゃんが聞いて来た。うしろには郷子ちゃんや他の女子がいる。



「んー。聞いた事ないなぁ。」
「じゃあこっくりさんは?」
「それなら辛うじて知ってるよ。」
「エンジェル様って言うのはこっくりさんみたいな遊びよ。まぁ、呼び名は色々あるし、地方によってはやり方も違うらしいけど。」



今から四人でやって見せるから一希は見学ね、って………。混ぜてくれないの?



「じゃあ、始めるわよ。」



こっくりさんみたいな感じで紙にあいうえおだの、数字だの、英文だのを書いて十円玉を使わなきゃいけないらしい。でも五百円玉なら確実なのが来るのでは?と思う今日この頃。



「エンジェル様、エンジェル様。ハートの周りをお回りください。」



そしてこのエンジェル様。決まり事があるらしい。

・使った紙は細かく千切って捨てる事。目安はだいたい48以上。
・そして、十円玉は24時間以内に単独で使わなければいけない。
んー。まぁ、持ってたら持ってたで呪われそうだが…、なんせ今は10円ガムでさえワンコインで買えない時代。なんて無茶振りだ。



「じゃあ、次は稲葉郷子が結ばれるであろう男性の名をお教えください。」



美樹ちゃんがそう言えば十円玉はズズズと動いた。



「ひゃあ!動いた!」
「さっきから動いてたわよ。」



まじでか。全然気付かなかった。てか見てなかった。
十円玉はズズっと「ひ・ろ・し」の文字に動いている。



「ひ、ろ、し?え、郷子ちゃん広くんが好きだったの!?」
「あら、一希知らなかったの?周知の事実なのよ。」
「完璧に出遅れた。」
「ん?」



あーもう!私が広くんよりも先に郷子ちゃんに出会ってたら!そしたら私は郷子ちゃんと親友以上の関係になれたのに!
自分の遅すぎた出会いに後悔をしていて気付かなかったが何やら郷子ちゃんと美樹ちゃんが揉めてるもよう。止める勇気はありません。




「ったく、こっくりさんは禁止のはずだ!誰だ、言い出しっぺは?」



郷子ちゃんと美樹ちゃん、ぬーべー先生に激突したのか。二人の首根っこをつかんで怒っている。



「でも先生。これこっくりさんじゃなくてエンジェル様だって、美樹ちゃんが…。」
「そーよ、ぬーべー。こっくりさんは悪霊だけどエンジェル様はいい霊なのよ。知らないの?」
「ほぇ?そうなの?」
「一希、騙されるな!そんなの迷信だ。」



め、迷信なのか。危うく騙されるところだった。先生がいてくれてよかった!



「一希、帰ろっか。」
「あ、うん。じゃあ先生。さようなら。」
「ああ。一希、気を付けて帰るんだぞ。」
「私は?」
「お前は反省しろ!」



美樹ちゃんは「ちえー」と言っていたがまぁ、反省は必要だよね!あ、郷子ちゃんも言ってる。
その後、紙を細かく破ってどうやって十円玉を使おうか、と考えてたんだけど美樹ちゃんが何か公衆電話に用があるみたい。



「電話?どこにかけるの?」
「お友達に?携帯かそうか?」
「十円玉処理機。てきとーにかければいいでしょ。」



これまた本当にピポパとかける美樹ちゃん。
……イタ電だけはしちゃダメだよ?



「あっは〜ん。あたし25歳OLよ。今とっても淋しいのぉー。」
「あんたいつもこんな事してんの…?」
「み、美樹ちゃん、おとなー。」
「うん。違うからね。」



あー、違ったかぁー。と考えていた次の瞬間。

ガチャン!
美樹ちゃんが叫びながら物凄い勢いで電話を切った。



「い、今なんかダミ声で…。」
「どうしたの?」
「変なとこにかけちゃったみたい!」



その後、不思議な光景が。
チャリンと十円玉が戻って来たのだ。



「あ、十円玉返してくれるんだー。」
「バカ!使い切らなきゃダメなのよ!」
「でも何で戻ってくるわけ!?」



それからちょっと奮闘。今じゃ駄菓子も買えないだとかゲーセンの十円コーナーで使っても戻って来たりとか。画面に人の輪郭が映った時は驚いた。まぁ、何とか募金をして十円玉を手放したけど……。




翌日、
美樹ちゃんが泣きながらぬーべー先生と話ししてた。



「美樹ちゃん?どうしたの?」
「あ、一希!聞いてよ、実は昨日の十円玉が…!私を殺そうとしてるのよっ!」
「おいおい。エンジェル様はいい霊だから大丈夫なんじゃなかったのか?」



そのあと、美樹ちゃんは先生にごめんなさいとか若気の至りだとか言ってたけど。先生言いくるめられてるよ?
そして放課後。
美樹ちゃんに取り憑いたエンジェル様の除霊が始まった。え、何で私もここにいるわけ?美樹ちゃんが一人じゃ淋しいから郷子と一希も来てーって言ってたけどぬーべー先生頼りになるよ?



「十円玉に取り憑きし霊よ、姿を現せ!!!」



十円玉がカタカタ動きガラスがパリンと割れ妙な音が聞こえてきた。ポルターガイストらしい。
そして現れたのは、



『我こそはエンジェル。神名にある国常立日昇之尊である!』

「やだ、いい男。」
「一希、あんなのがいいの?」
「やだなー、ものの例えだよ。」


次の瞬間、このソース顏のイケメンが醜く歪んだ。



「やだ、みにくっ。」
「あんた手のひら返すの早すぎ。美樹といい勝負ね。」
「ものの例えだよー。」



そしていつの間にか除霊は済んでいた!なんてこったい!
なんでもあのエンジェル様、本物じゃなくて偽物らしい。低級な動物霊の悪知恵ならしい。なんだっけ?はぐれメタル?はぐれ刑事?そんな感じのやつ。
まぁ、後日談の美樹ちゃんはと言えば、いつの間にか先生と約束してたトイレ掃除一ヶ月をこなしたわけだが……、



「バーシャル ナターシャ云々。郷子の好きな男子を云々。」


チャネリングと言うのにハマったらしい…。
ああ、郷子ちゃんとぬーべー先生が呆れてる…。



「何で宇宙人がそんな事知ってるのら?」



まことくん、的確すぎ。


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単行本郷子ちゃんの萌え袖にキュンと来たが翌日パーカー袖まくりでシュン…とした。

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あきゅろす。
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