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黒い手袋




それは給食の時に感じた、所謂 違和感だ。




「お?一希は左利きなのか?」



左利き、と言っても慣れた感はしない。
箸をもつ手はプルプルと震えている。もしや鉛筆もじゃないだろうな…?




「左利き、ってわけじゃ…。ただちょっと訳があって…。」
「わけ?」
「あー、うん。トラウマ的な…。」


「なーなー。トラウマってどんな生き物なんだ?」
「あんたはちょっと黙ってなさい。」
「広君、トラウマって言うのはね、」




トラウマについて律儀に教える辺り、教師に向いているなぁと感心するがそれどころじゃない。その訳とやらを聞こうじゃないか。





「み、右手で物を触ると動き出すの。」
「動き出す?」



一希の手をマジマジと見る。
ああ、これは、



「右手に霊力が集中しているな。」
「れいりょく?」
「ああ。そうだ、ちょっと待ってろ。」




職員室に行き自分のカバンから手袋を持って教室に戻る。



「これをやろう。」
「黒い……手袋?」
「ああ。俺が使うのは左手だけだからな。」




一希の頭をなでればキョトンとして「でもこれ何の意味が………。」と呟いている。
あれ?この子もしかして鬼の手知らないオチ?




「あ、先生の左手もれいりょくが高いの?」
「あら?一希知らないの?ぬーべーの鬼の手。」
「ん?孫の手?」
「お に の て。先生は昔ね、ぐだぐだぐだぐだ、ってわけよ。」
「なるほどー。それで鬼の手を封印するために手袋してるのかー。」




大変よく出来ました、と言って一希の頭をなでる郷子。
一希も嬉しそうに喜んでいる。




「まぁ、そんなわけで右手袋だけがどうしても余ってしまってな。その手袋をつければ一希も大丈夫なはずだ。」
「ほ、本当に!?」
「ああ。さっきも言ったように、右手にだけ異様に霊力が集中している。そのせいで物が動く、即ち強制的に九十九神にしてしまったんだ。」




だが手袋をはめれば大丈夫だ、と言えば戸惑いながらもはめ、恐る恐る箸や食器を触る。





「う、動かないっ………!!」



そうとう驚いたように言うと目をキラキラさせて「先生ありがとう!」と言う。




「えへへ。先生と私、おそろいだね。」




な、に。この小動物。
尻尾があったらブンブン振っているだろう。






「ぬーべーと一希って何か兄妹みたいだな。」
「マヌケな兄としっかりした妹よねー。」
「ぬーべーに一希は勿体無いだろ。」
「お前ら、言わせておけば…!」



「♪(ニコニコ)」
「・・・・・(ま、嬉しそうだしいっか。)」





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