[携帯モード] [URL送信]
和尚と雑談




「小松田くん、外出届だ。」
「あ、さくら学園長。お出かけですかぁ?」
「ああ。金楽寺の和尚のところへちょっとな。」




帰りに団子買って来るよ、と言えば喜ぶ小松田くん。
ワンコ系男子とはこの事なのか、「お気を付けて〜。」と手を振って見送ってくれた。忠実だな君は。
まず和尚に土産を買うため、団子屋により帰りもまた寄るから予約頼む、と言って近道して金楽寺に急ぐ。
金楽寺につけばここからが難関だ。
あの階段。老体には厳しい世界だ。そう考えると和尚はすごいなぁ。





「おお、学園長。待っておったぞ。」
「水くれ。」
「はいはい。」



あの階段の厳しさに心打たれながらようやく登りつめれば息はもちろんきれるわけで、和尚に水を催促するのはまぁ当たり前。なんて私は図々しいんだろうな。




「そう言えばこの間、竜王丸が来てな。」
「竜ちゃんが…、なんか言ってなかったか…?」
「『さくらごときのカラクリに引っかかって悔しい!』、と言ってたなぁ。」
「ぷ。」



引っかかったのか!笑えるな。
だがここで一つ、訂正せねばな。



「竜ちゃんが引っかかってなりよりだ。あのカラクリは1年は組の笹山兵太夫にご教授してもらったのだ。」
「ほぉ。兵太夫が。」



すごかろう。兵太夫先生のご教授のおかげで竜ちゃんに目に物見せられたのだ。そしてまこと、嬉しい結果になってまぁ。兵太夫先生に報告だな。




「本当、兵太夫先生のおかげだな。」
「それはそうとさくら。お前はいつになったら忍者に「いやいや、ならないからな?」…勿体無いのぅ。」




和尚も竜ちゃんも…。なぜそんなに人に忍者勧めるのだ。あんたらの勧誘のせいで私、髪色染めたんだからな?
まぁ、あとちょっとしたら元の色に戻すつもりだけど…。




「その衰えぬ体力、老いぬ身体。忍者としてやっていけるんじゃがの…。本当、勿体無い。」
「竜ちゃんも和尚も、何で私を忍者にさせようとするわけ?」



なんか、理由があるんだよね?
そうじゃなきゃこちらも納得しないよ?納得しても忍者にはならないけどさ。




「ただワシらはさくらと何かしら繋がりがほしいだけじゃ。」
「繋がり?」
「うむ。それに一番近いのが『忍者』ってだけの話じゃな。」



まぁ、ムリにとは言わんが…。と言う和尚。
何だ、ちゃんと理由があったのか。まぁ、だからと言って忍者にはならないがな。




「竜ちゃんも和尚も忍者だ。」
「? うむ。」
「そして私は忍者を育てる学園の長。繋がりなんて、ないようでちゃんとあるじゃないか。」



和尚は一瞬、驚いた顔をした後、豪快に笑って「それもそうか!!」と言った。




「お、そろそろ帰らねば。」



小松田くんが首を長くして団子を待っているはずだ。




「じゃあ、和尚。また来る。」



手を振って和尚に挨拶すれば和尚は、また来い。と言ってくれた。
こいつは本当、いい奴だな。



「さて、急いで帰るか。」



団子屋により小松田くんのお土産を受け取れば夕焼けはもう沈みかけていた。
よし、山ん中だが近道だ!




「ひゃあ〜。何か出そうだなぁ…。」



いや別に怖くないからね?ただ不気味なだけであって怖くない。
それに出そうなのは山賊であって幽霊じゃないよ。




「よぉ、姉ちゃん。」
「………。」



ほら出たよ。山賊さんが。



「有り金全部置いていきな。」
「えっと……。」



すみません。有り金全部団子に使いました。ついつい衝動買いをしてしまったんです。
まぁ、ぶっちゃけて言えば




「お前にやる金はねェ。」


だな。
あれ?なんか山賊さん怒りだした?
もしかして声に出してた?さっきのセリフ。あちゃー。
まぁ、逃げるが勝ちって事で。




「さよならー。」



振り返らずに走れば追いかけて来る気配が。
なにこれなんのフラグ?
返り討ち?しないよ。めんどいし。
あ、逃げる方がめんどいか?なら返り討ちする?
モンモンと考えれば後ろでなんか殴る音と倒れる音がした。
何事?




「大丈夫?お嬢さん。」
「…はぁ。」



振り向けば顔が包帯ぐるぐるの忍装束着たお兄さん。
え、このお兄さんもかなり怪しいんだけど。まぁ、お礼言って逃げればいいか。



「お兄さん、ありがとう。助かった。」
「いえいえ。家は近く?送ろうか?」



怪しいお兄さんはなんか部下…尊奈門?って人を呼んだ。



「いえ、本当に大丈夫です。ありがとうございました。」



ぺこりと頭下げてその場を去る。
よし。忍術学園までいけどんマラソンだ。






「ただいま。」
「あ、おかえりなさーい。入門票にサインを〜。」
「はい、あとこれ約束の団子な。」
「わぁ〜。ありがとうございます、さくら学園長。」
「うむ。たくさん食べて大きくなれよ。」
「はぁ〜い。」




ーーーーーーーーーー

流行に乗っかってちゃっかり名前呼びする小松田さん。そしてもう呼びなれちゃって最後まで気付かない学園長。

[*前へ][次へ#]

第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!