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小説

俺、日比谷皇子は至って普通の男子校生だ。
染めた事のない髪は真っ黒で無造作に伸ばしている為、ちょっと長めで母親譲りの天パの所為で所々うねっている。
目がでかい訳でもなければ肌が白い訳でもない、至って普通。数年後、同窓会なんかが行われても「あれ、誰だっけ?」で済まされるだろう。
その他が優れているかと言えばそれも否。成績は中の下でスポーツは授業以外でする事はない。

特に飛び抜けて秀でた部分など微塵もない、「平凡」という言葉が似合う、そんな男だ、と自負している。





「あぁ〜言ってて悲しくなってきた」



科学室に入れば、自分のお気に入りの窓際の一番後ろを陣取る。
隣に自分の教科書を置いて高下の席のキープも忘れずに。


「俺ってばホントやさしー」


落ち込んだ自分を慰めるみたいに自分で自分を褒めれば少しだけ明るくなった気分に、単純だなー、とまた小さく呟いた。




科学室の窓際は俺がこの校内で一番気に入っている場所だ。
窓の外には庭園を挟んで向かいにプールがあって太陽の光りを反射してゆらゆらと水面が揺れている。


時々、柔らかな風が科学室に吹き込んで俺の髪を揺らしていく。



「……綺麗だな。」



何度も揺れては弾く水面に感嘆した様に俺はぽつりと呟いて、じっとそれを見つめる。
昔から、プールやら海やらの類が大好きで水の中に入るのが楽しくてしょうがなかった。


今もそれは変わっていない。

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