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小説







「…わ、サラサラっすね。本当に切っちゃうんですか?勿体ない。」




結局速攻で観念した俺は、六藤先輩の濡れた髪をまずドライヤーで乾かす事にした。
乾いて軽くなった髪は俺なんかとは比べものにならないくらいにさらさらで指通りが良い。
段々切ってしまうのが勿体なく思えて来て躊躇してしまう。





「いい。どうせまた伸びるだろう…今は邪魔なだけだ。」

「はぁ…」

「それとも…」

「え?」



ハサミを持った手がふいに掴まれて椅子に座った状態で上を向いているからか、上目遣いな先輩と目が合う。

…な、何か可愛い…




「こういう髪型の方が好みだと言うなら、切らないが…。」




……………。




「…は、」






い?



な、何をいきなり言いだすんだこの人は。

そんな、恋する乙女みたいな事、


俺に言ってどうするんですか…!





「…あ、う、いや、やっぱり髪は短い方がさっぱりしてていいかもしれません…ね、」




勿論、心の中で思った事なんて本人に言える訳ないからそれらしい事をしどろもどろになりながらも返せば、六藤先輩は優しく笑って前に向き直る。



「そうか…じゃあ、好きにやってくれ。」




「……はい、了解しました」



いつか、きちんとNOと言える人間になりたい。




そう思いながらも、恐る恐るその艶やかな髪にハサミを入れた。







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