POEM 桜が緑に変わる頃 君に出会ったのは桜が緑に変わる頃だった。 ドアを開けると眠たそうにこっちを見た君と目があった。 君と初めて話したのは雨の振る日が多く綺麗な紫の花が咲いていた時。 偶然隣に座った君に『おはよう』と言ってみた。一瞬驚いた顔をしたけどすぐに恥ずかしそうな笑みを浮かべて『おはよう』と君は言った。 向日葵が太陽のほうを力強く向いている。 そんな時久しぶりに君と会ってびっくりした。 君の背がぐっと高くなっていたから―。 君がどこか遠くに言ってしまう気がした…。 体育祭のあの日。君が一番輝いていたよ。一生懸命頑張る姿がいとおしかった。 イルミネーションで街がキラキラしていたとき君と私は小さなケーキを二人で食べた。ケーキの上に乗っていた一粒のイチゴは切ないほど甘酸っぱかった。 いつしか君が当たり前のように隣にいた どんな時でも。 もちろん君を失うことなんて考えてもみなかった。 桜の花がつぼみになって君と出会った季節がまた来る。 色とりどりの魚が空を気持ちよさそうに泳いでいるのを見ながら君とお餅を食べて話したね。 いつまでも子供でいたいなんて笑いながら。 君と花火を見た。今までに見たどの花火よりも美しかった。 下駄を履いていた私を気遣ってくれるきみに改めていとおしさを覚えた。 落ち葉の上を歩きながら君と話した。 風は冷たかったけれどギュッと握った手から君のぬくもりが伝わった。 あれからどれくらい過ぎただろう。何度あの季節が来ただろう。空いっぱいのピンクの花がいつしか緑色に変わり,夏が過ぎ,冬が来てまたあの季節が来る。 もうじき桜が咲く季節。 君は今何をしているだろう。 君に出会ったの朝倉が緑に変わる頃だった。 [前へ][次へ] |