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交差する思い(side ジャック)








「あのフォルスナーまで…」

「裏切り者を助けるなんざアイツも落ちたよな。」



あちらこちらで聞こえてくるシリウス達を批判する声。
僕はそれを聞こえないフリを演じ、殴り倒したくなる衝動を理性で押さえ込んだ。

口では批判しても、シリウスに対して欲望の視線を向けている奴らはきっとこの場にいる大半の者だろう。
シリウスは自分の容姿に対して自覚はあるが…興味があまり無い。

少し中性的な顔立ちで強気な性格。
けれど時々見せる儚げな表情とか、笑うと幼く見える彼は見る者を虜にする。



「(まぁ、僕もその中の一人だけど)」



そんな無防備極まりない彼はどうやらここの奴らをも虜にしてしまったらしい。



「ジャックー?どうしたのボォーっとしちゃって。」

「……なんでもないよ。」



隣から見上げてくる顔の整った小柄な男。
なぜあんな事をしたのか問い掛けても彼はサラリと受け流すだろう。


…殺すのは簡単だ。
けれどそんな事をしてもなんの解決にもならない。
むしろ僕にとっては都合が悪い。

お人好しな彼がそれを嫌うから。



「……はぁ。」


重い溜め息をついた僕は2人が去って行った食堂の出入り口に視線を移した。


本当なら助けたかった。
けれどあの場で僕が出ていったら確実に状態は悪化していただろう。




「(…ゴメンねシリウス)」



助けに行けなかった事を心の中で詫びを入れ、隣の女装趣味馬鹿に視線を移した。

元々素が敬語チックで、皆が抱くような"王子様"の様な金髪碧眼の僕はこういう乙女チックな男に好かれやすい。

紳士的に接すればどんな相手にだって大概対応できる…世渡りが楽になる。
そんな理由もあって皆が勝手に抱いた王子様というポジションを敢えて否定しなかった僕。




―――本当は自分のこんな容姿が嫌いだった。



『お前…なんか王子様みたいだな。』



いつだっただろうか。
"王子"と呼ばれても嫌ではなくなったのは。



記憶を辿れば息をのむほど綺麗な笑みを見せたシリウスが脳裏に映る。



今の僕があるのはきっと…否確実にシリウスのお陰。

彼を尊敬し始めたのがいつだったかはわからない。
気付いた時にはそれ以上の気持ちが心にあった。





そんな彼を貶した奴らの事なんて見たくもないけど、ここで僕が暴れたってなんの意味もなさない。
シリウスが男達に手を上げなかったのに僕がコイツらに手を上げてしまったら、シリウスの努力が水の泡になってしまう。


おおよそ手を上げなかった理由は、いつものお人好し精神からくるものだと思うけど…。




本当に彼は賢いのか馬鹿なのか……。






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