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『なんでこんなにミンチ切られなきゃなんないんだよ。』
「…………。」
溜め息混じりに呟いた俺の言葉にジャックは無言だった。
いや無言ならまだマシだ。
溜め息つきやがったぞコイツ俺年上だぞちっさいけど年上だぞコノヤロウ。
…あ、自分でちっさいって言っちまった。うわーなにコレすっごい敗北感。
そんな事を考えて歩いていた俺はジャックの心配そうな視線に気付かなかった。
「(…シリウス、そこはミンチじゃなくてメンチだよ。なんかスッゴいみんなミンチを切り刻んでるみたいだから。ある意味異様な光景で怖いけどさ……それに、みんなシリウスに見惚れてるだけだって。)」
途中鋭いツッコミがあったが、ジャックの言う通りシリウスに向けられている視線は憎悪のこもったメンチではなく(勿論ミンチでもない。)中性的な顔を持つシリウスに見惚れてしまった囚人の好意的な視線だった。
強面な囚人が多いため、シリウスがメンチを切られていると勘違いしても無理はないのだが、好意的な視線を送られている事に気付いていないシリウスは無防備極まりない。
「(やっぱり、良い気分じゃないね。)」
ジャックはシリウスの細くしなやかな腕を掴み寄せた。
『…どした?』
「ねぇシリウス。出来るだけ顔伏せてなよ?」
『は?』
「なら“ミンチ”切られる事もないでしょ?」
ニッコリとした笑みをシリウスに向けたジャックは、シリウスが顔を伏せたのを確認すると辺りの囚人達に殺気の隠った視線を向けた。
すると、蜘蛛の子散らす様に囚人達は早々と食堂へと走っていった。
「(…この先不安だなぁ)」
ジャックは、隣をトコトコと歩くシリウスを見て不安気な溜め息をついた。
「(しかもまだ“メンチ”と“ミンチ”の間違いに気付いてないし。)」
深々と別の意味でこの先思いやられると思ったジャックであった。
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