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長編ホラー
階段の先
「……」


夜風はジッと階段の先を見つめた。
ゆっくり冷静に見てみても、立海の階段ではない。そこで夜風の頭の中に一つの可能性が浮かんだ。
その可能性を確かめようと無意識に階段に足をかける。
そのとき、腕が誰かにパシッと捕まれた。


「あっ弦一郎…」
「勝手にのぼろうとしただろう。1人行動はするなと言われたはずだ」
「…そうだよ? 俺の言ったこと忘れたの?
「……ご、ごめんなさい」


夜風は真剣な瞳に思わずたじろぐ。幸村はそのまま、はぁっとため息をついた。


「別にね、怖がらせたいわけじゃないんだよ?危険だから言ってるんだ」
「…ほんとにごめん。気を付ける」
「で、何でいきなりのぼろうとしたの?」
「私が知っているところかもしれないから、確かめたくて」


夜風の言葉に幸村の視線が階段の上へと向けられる。
確かに階段の上は立海ではなさそうだ。
同じく階段の上を見上げていたブン太が口を開いた。


「じゃあ、確かめに行ってやるよ…ジャッカルが」
「俺かよっ!!……たくっしょうがねぇな」
「嘘だって…え?マジで行くの!?」
「あ?お前がそう言ったんだろ」
「いや、そうだけど。ちゃんと俺も行くって!!」


先に階段をのぼるのはブン太とジャッカルになった。
残りは階段下で待機だ。
一段一段上がって行きながら、ジャッカルが肝心なことを聞いてなかったことに気付く。

「どうしたら、知っているとこって分かるんだ?」
「上がって左の突き当りに音楽室か、生物室か物理実験室があるかどうか見える?」
「…あー…」


ブン太が階段に体を残したまま、頭だけを突き出して左の突き当りを覗き込む。ジャッカルは周囲を警戒していた。
沈黙がしばらく続き遠くて見えないだろうかと心配になり始める。


「…たぶん、音楽室だぜぃ」
「なんか立海より廊下が狭いな」
「どう?何か分かった?」
「ここはお前が通っていた学校だろう。違うか?」
「えっなんで分かるの!?」


柳の推理力に夜風は驚く。フッと柳が笑いながら答えた。


「普通に考えればわかるだろう。学校の地図を完璧に覚えているようだったんでな。そんなものは数回行っただけでは覚えられない。つまり、お前が通っていた学校という結論になるはずだ」
「なるほど〜確かにそうッスね」


柳の言葉を聞いて、ジャッカルが慌てだす。


「わ、悪い。狭いとか言って」
「? 別に気にしないよ?だってその通りじゃん。私立の学校と比べたら、狭いし汚いし。それより音楽室って言ったよね?」
「言った」
「だったら…きっとここは三階だ」


それが分かったところで、何も解決はしていない。一体どうするべきか。


夜風がそう考えている横で、赤也が素朴な疑問を思い浮かべた。


「七不思議に夜風先輩がいた学校のも加わるんですか…?」
「うむ。全部加われば七を超えるから全部ではないのだろうが」
「夜風は七不思議知ってる?」
「ちょっと待って…」


以前聞いた七不思議を糸を、手繰り寄せるように思い出していく


「…『理科室の変人』、『テケテケとトコトコ』、『異世界へ誘う魔鏡』…」
「やっぱろくなのないッスね」
「…あっ!三階なら『トイレの花子さん』がいるよ!!」
「なんでそんなに嬉しそうなんじゃ?『トイレの花子さん』も危険じゃろう?」


仁王にはなぜ夜風がひらめいた的な顔で発言しているのかが分からない。
その言い方では、まるで良い人のような発言にしか聞こえない。
仁王の問いに夜風が自信満々に答えた。


「それが、私の学校の花子さんは敵じゃないの!前も助けてもらったんだ。今回も助けてくれるよきっと」
「分からんじゃろ?前回助けてくれたって、今回も助けてくれるとは限らんぜよ」
「何もしないでいるよりは希望につながる方へ進みたい。雅治もそうでしょ?」


仁王の瞳を見据えて夜風は真剣に訴える。
夜風には花子さんは協力してくれるという確信に近い思いがあった。


「それは、そうじゃけど…」
「そんなに嫌なの?女子トイレに入ることが」
「っ!?そういえばそうじゃった…」


『トイレの花子さん』は花子さんなのだから当然女の子だ。
絶対男子トイレにはいない。


「そんなに広くないし、全員は無理だから安心して?じゃあ、今決めとく?ジャンケンか何かで」


夜風はトイレは三階の右に曲がって少しのところにあるという説明を付け加える。
だから、今決めようと主張した。


「トイレの目の前で決めねぇか?」
「なぁそうしようぜ」


緊急で非常な事態だとしても、男が女子トイレに入るのは勇気がいる。
夜風を1人で入らせるのは論外だが、それでも男としてのプライドがある。
結論を少しでも先へと伸ばしたかった。


「それはダメだよ」


キッパリとした拒絶。夜風としてはトイレの前で決めるのだけは避けたい。


「万が一襲われたらどうするの?ジャンケンで争っててとっさに反応できないなんて絶対嫌なんだけど」
「それは一理あるね。この場で決めよう」


幸村が夜風の意見に同意を表す。
これでこの場で勝負することはほぼ確定だろう。
それを悟って、何人かが頭を垂れた。


「じゃ、私を入れて3人位かな…?多すぎても、身動きできないし」


多すぎず、少なすぎず。夜風は自分以外に2人決めるように促す。


「どうして夜風さんが既に決まってるんでしょうか」
「私がいなかったら、誰が花子さんとコンタクトをとるの?」
「そ、そうですね」
「じゃいくよ〜」


やや強引にジャンケンをしない夜風が代表で指揮をとる。


「最初は、グー。…ジャンケンッ…」
「「ポン」」


あれ?なんかジャンケン始めちゃったんですけど。
若干ほのぼの化し始めてる…?
今回はジャッカルとブン太が目立ってますね。
ヒロインの性格が分からない…(オイッ)
2011 6/9 更新

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