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長編ホラー
初めての遭遇
図書館は2階にある。
玄関に一番近い階段を上って2階へと向かった。
図書館は大きいので廊下の一番端にある。まだ離れてはいるが、あとはまっすぐ進むだけだ。


「…良かった。何もいなさそう」
「安心するのは早いぞ。油断しないように行こう」
「副部長ソレ、青学のパクリッスか…?」
「む?そんなつもりはなかったのだが」
「確かに少し違うな。手塚は『油断せずに行こう』だ」


…カツン…カツン…カツン…カツン


「…ん?」


不意に小さく誰かの足音が夜風の耳に届いた。
まるでハイヒールで歩いているような音が響く。


「ねぇ何か聞こえない…?」
「そうか?」


…カツン…カツン…カツン…カツン


もう一度聞こえた。夜風の聞き間違いではないようだ。
心なしか音が近くなっているような気がする。


「やっぱり聞こえる…。足音みたいな……」
「怖いこと言わないでくださいよ」
「残念じゃのう赤也。俺にも聞こえるぜよ」
「そっそんな!?」


…カツン…カツン…カツン…カツン


足音は全員に聞こえるくらい近づいてきている。
夜風は怖くて出来ることなら振り向きたくはなかったが、確認しないといけない。
数人が恐る恐る振り向いた。


…カツン…カツン…ピタッ


「…………」


ハイヒールを履いて、顔を覆うようにマスクをしている女と。
目が、合った。


「…ひっ!」


間違いない。アレは口裂け女だ。
思った以上に距離が近い。
…どうしたら良い…?口裂け女を退ける呪文が出てこない…!


…カツン…カツン…カツカツカツ


口裂け女は、スピードを上げて迫ってくる。
恐怖のあまり皆の足が止まった。


「……!」
「…走って!!まだ、死にたくないだろ!」


幸村が叫んだ。
その声を聴いて我に返る。慌てて図書館に向けて走り出した。


「……はぁ…はぁ…」


図書館までの道のりがいつもより遠く感じる。
流石は全国レベルのテニス部である。
ただのマネージャーである夜風とは体力が違う。ただでさえ運動神経が良くないのだ。
気づけば最後尾に近かった。


…カツカツカツカツカツ…



「はぁ……はぁ…も、無理…こんな、長かった…?」
「夜風ほら、手出せ!」
「…ん……手…?」


ブン太に言われるまま手を出す。ブン太は夜風の手を取って、引っ張るように走り始めた。


「…う…わッ…」


グンッと引っ張られる感覚に足がもつれそうになる。
でも、繋がれた手の温かさに安心し、少し余裕が出来た。


あれ…?あんなところに階段なんて、あった…?


少し余裕が出来た分、周りの景色が目に入る。
いくら夜風がまだ校内で迷子になるっといっても、階段の位置位分かる。
自分たちが上がってきた階段から右に階段はなかった。


…でも、見たことあるような…?
後で皆に聞いてみよう…


「あとちょっとだ」
「先輩!頑張ってください」

全員が図書館に入ったのを確認すると、ピシャッと思い切り扉を閉めた。


…カツカツカツ…ピタッ……カツン…カツン


口裂け女は諦めたのか、足音が遠ざかっていく。
夜風は疲労と安堵からペタンと床に座り込んだ。
ブン太が引っ張ってくれなかったら追いつかれていたかもしれない、と考えるとぞっとする。


「…はぁはぁ……げほっ…ブ、ン太…ありがと」
「それくらいいいけどよ。大丈夫か?」
「…ん…大丈夫…」


もう少し体力をつけておけば良かった。
これだけで息があがっていてはこれから先不安すぎる。


「調べるっていってもどんな資料を探すんじゃ?闇雲に探してもダメじゃろ」


仁王の言うとおりだ。立海の図書館は無駄に広い。ある程度目星をつけて探さないと、いつまで経っても終わらないだろう。


「じゃあ、大まかにだけ決めるよ。ジャッカルとブン太と夜風と柳生で七不思議関係を。俺と真田と仁王と柳と赤也でそれ以外の怪異のことを」
「あれも探して。えっと…お化けの対処法みたいな感じの。絶対さっきの口裂け女だし。私も少しは知ってるんだけど、本番で出てこないかもしれないから。皆も知っていた方が良いでしょ?」
「…俺、七不思議が良かったッス」
「ふふ、何が嫌なのかな?」
「…何でもないです…」


一部文句があがったものの、幸村に逆らえるはずもなく変更は許されない。
しぶしぶ諦め、さっそく本を探しに行く。
不真面目にやっていて収穫がなかったら、真田の鉄拳が飛ぶ可能性がある。
赤也は既に一回喰らっている。これ以上は避けたい。


「じゃあ私達も探そうか?バラバラに探す?あっブン太もしも、さぼったら弦一郎の鉄拳だよ」
「俺だけ念押すとかひどくねぇ?まぁ任せとけよ」
「2つに分かれましょう。1人は危険ですから」
「それじゃあ、ブン太とジャッカルであっちの本棚ね。私と柳生はこっち」


夜風は素早く仕事を振り分ける。
こんなところに時間を取られている時間はない。


「ん〜七不思議かぁ。夏とかに学校新聞でそういう話題とか取り上げそうなんだけどな…」
「校内新聞ですか。見る価値はありそうですね。確かカウンターの横に整理してまとめてあったはずですが」
「それじゃ、最初はそこだね」


柳生と夜風はカウンターに近づこうとした瞬間。
扉の前で誰かの足音が聞こえた。
ひょっとしたら口裂け女が戻ってきて中に入ってくるのかもしれないと思い、柳生はとっさに夜風の腕を引き近くの本棚に隠れる。
幸いなことに扉から見える範囲にはだれもいない。
物音を立てなければ見つからないだろう。


「…わわ……」
「すみません。扉の向こうに何かいます」


ガラッ


いきなり扉が音を立て思い切り開く。
思わず夜風の体がビクリと反応した。


「誰かいませんかぁ…?」


すっごい微妙なとこですけど…区切ります
まだ図書館で何も見つけられてないです
次回予告?と違ってすみません
次こそ頑張ります…!!
5/20 更新

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あきゅろす。
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