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Fate/restart my life
8話【懺悔】
眩い閃光に、響き渡る金属音。二つの人間を超えた存在は、凄まじい速さでぶつかり合いながら、教会内を縦横無尽に飛び回っていた。ーーいや、正確に言うと少し違う。トリッキーな動きで襲いかかってくるライダーの攻撃を、アーチャーが双剣で防いでいる、と言った方が正しいだろう。

ライダーの攻撃は、私の目では追うことさえ出来ない。ギリギリ見えるのはアーチャーが攻撃を防ぐために打ち合う一瞬だけだ。
「・・・・・・ん?今ーー」
打ち合いの瞬間、ライダーが奇妙な体制で攻撃をくり出していたことに気づく。右手の杭をアーチャーへ向け、空いた左手は私の方へと向けていた。その体制には微妙な違和感があり、じゃっかんの気味の悪さを感じる。

一進一退の攻防が続き、しばらくたった時、アーチャーの剣に異変が起き始める。その剣の中心、刃の部分から剣先へかけて大きな亀裂が走ったのだ。離れたこの場所からでも確認出来ると言うことは、その傷はかなりの大きさなのだろう。アーチャーもその事に気づいたのか、一瞬だけ視線を短剣へと向けるも、表情を変えることなく次の攻撃を防いだ。

カキンッ、と一際高い音が鳴り響いた瞬間、アーチャーの双剣が砕け散った。
「っ、アーチャー!?」
「終わりですね」
私の叫び声と、ライダーの冷淡な声が重なる。ライダーの銀色の杭が彼の無防備な心臓を貫こうとしたーー瞬間。

「詰めが甘いな・・・・・・ライダー!!」
ーー彼の両手には再び双剣が握られていた。
どこから出したのか、その剣は先ほど出したものと同じ形状であるにも関わらず、ライダーの攻撃によって出来た傷は無い。最初と変わらない状態で、目前まで迫った杭を退けたのだ。流石のライダーもそれには幾分か驚いたようで、低い体制のまま後方へいる夏樹の近くへと飛び退いた。アーチャーも、ライダーから視線をそらすことなく私の横へと飛んだ。

私はチラリとアーチャーの表情を見る。驚いたことに、あれだけの攻防を繰り広げておきながら息切れの一つしていない。そのまま流れるように彼の双剣に目を移すも、やはりその剣に傷は無かった。

「投影魔術か・・・・・・また地味な技を使うんだね」
私が疑問を感じて考えている時だった。夏樹は私の疑問に答えるかのように声を発した。

ーー投影。物体の影を平面に映し出すこと。アーチャーが使う双剣は、つまり、アーチャーの魔力によって作られた虚像という事なのだろうか。

「意外かね?」
「そりゃあまあ。アーチャーのクラスなのに二刀流で白兵戦を行うサーヴァントなんて、君くらいだろう?」
夏樹のその言葉に、アーチャーはニヒルな笑みを浮かべて答えた。
「サーヴァントと言えど、戦い方は千差万別さ。私の場合、このやり方が一番性にあっていてね。だがーー」
アーチャーはそう言うと、持っていた剣を離した。重力に従って落ちていく双剣は地面にぶつかる前に粒子となって消える。それと同時に、彼は小さな声で何かを呟いた。その言葉は、ハッキリ聞き取ることは出来なかったが、日本語ではない言葉だったのは確かだ。呟いた後、一秒と経たない内に、彼の手には大きな弓矢が握られていた。

「ーーお望みの通り、弓兵としての本懐をとげよう」
すぐさま構えると、その弓先を夏樹に向けて、不敵な笑みを浮かべながらそう言った。その横顔はあまりにも冷たいもので、私は思わず戦慄する。それと同時に、この隣に立つ男は、本気で夏樹を殺す気なのだと実感した。

「待ってアーチャー!ーーッ!?」
私が慌ててアーチャーを止めようと、手を伸ばした時だった。
「燈!?」
ーー私の体には銀色の輝きを放つ鎖が巻きついていた。
「な、に、これ・・・・・・!?」
ギリギリという鈍い音をたてながら、私の体を締めつける鎖の先は、ライダーが握っている。
「捕まえましたよ・・・・・・?」
そう言いながら妖しい笑みを浮かべると、ライダーは鎖を無造作に引っ張った。
「うわぁ!?」
「燈ッッ!!」
私の体は、重力を無視して空中へと引っ張られた。アーチャーは私に向かって手を伸ばすも届かず、私はそのまま宙ずりの状態になる。

高い位置から教会を見下ろして、私はようやく状況を理解した。私が立っていた場所を中心に螺旋上に鎖が巻かれている。あの独特な動きは私を捕縛するためのものだったらしい。教会内に張り巡らされた鎖を見て、今更ながらにそう思った。教会の壁に取り付けられた大きな磔刑のキリスト像の首元に鎖を引っ掛けて私を吊るす辺り、なかなか粋なことをしてくれるものだ。

ライダーは鎖を使いキリスト像を登って来ると、私の首元を掴みながら、酷く冷酷に、こう言った。
「さぁ、懺悔の時間ですよ。アーチャー」







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あきゅろす。
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