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進撃の巨人
11話【皆、仲良し・・・・・・】

目の前にあるのは、壁のない世界。無限に広がっているのではないかと錯覚する位の大きさ。これが――自由。
――壁の外に・・・・・・出たんだ。
信じられない光景に、ウィルは胸が高鳴るのを感じていた。物心ついてからずっと憧れていた世界はここまで美しいものだったなんて。自分の想像を遥かに超えた光景に感動し目頭が熱くなった。

悠久な大自然の素晴らしさに浸っていると、突如意識を現実に引き戻す声が響き渡る。
「巨人だ!!」
我に返って周囲を見回すと、遠目に7m程の大きさの巨人が見えた。
――お城に着くまでも巨人がいるんだ。
当たり前の事を考えながらその巨人を眺めていると、巨人は突然走り出した。
「場所が悪いな・・・・・・!」
並んで走っていたエレンが苦々しく呟いた。その表情には明らかな嫌悪と殺意が見て取れる。
「大丈夫だよ。ほら・・・・・・」
ウィルが小さく指差した方向に目を向けると、既に二人の兵士が巨人の駆逐を成功していた。

巨人の様子を見ていた二人とは違い、リヴァイは信煙弾を視界にとらえた。
「巨大樹の森を経由して行くのか・・・・・・?エレン、ウィル離されるなよ」
緑の煙弾を確認したあと、鋭い視線を二人に向ける。巨大樹の森は巨人との戦闘を有利に運ぶ事が出来るが城までの道としてはかなりの遠回りになってしまう。被害を最小に抑えるためだろうか。

「・・・・・・何か凄い煙弾の数だね」
空を眺めながらマイペースに呟くウィルにエレンはギョッとして空を仰いだ。
「黒い煙弾もある・・・・・・奇行種もいるって事じゃねぇか!」
「巨人の大群と遭遇したから一時避難か・・・・・・」
エルヴィンの意図を理解したリヴァイは進行方向を変える。
若干乱れた状態で、調査兵団は巨大樹の森へと向かった。








森に入り立体機動に切り替えたウィル達は、大木の幹の上に足を付けていた。しきりに辺りを見渡すと、ウィルの動きが急に止まる。
「どうしたの?」
ぺトラの問いかけにウィルは少し焦ったように口を開いた。
「雨のニオイがします・・・・・・」
「え?」
ぺトラには感じ取ることが出来ず、驚いたように空を見た。木々の間から僅かに見える空は、出発当初とさほど変わっていない。
「スコール・・・・・・かもです」
フードを握りしめたウィルは静かに目を閉じる。

直後、巨大樹の森に凄まじい爆音が響いた。
「なっ何!?」
驚いた様子のぺトラを慌てて周囲を確認する。オルオに至っては、驚きのあまり自分の舌を噛み切ってしまった。
「あ・・・・・・やっぱり・・・・・・」
突如として振り出した雨にウィルはフードを被りながら呟いた。どうやら先ほど爆音のは、近くに雷が落ちたようだ。

「ッチ・・・・・・めんどくせぇな。お前たち先を急ぐぞ」
リヴァイの声にリヴァイ班の面々はすかさずアンカーを構えた。
―――さすが精鋭班・・・・・・早いなぁ・・・・・・。
自分の前を飛ぶぺトラ達を見て、当たり前のように呟くと、ウィルもスピードをあげる。

熟練兵士のように立体機動を扱うウィルの姿を見て、ぺトラは驚きを隠せなかった。
――エルヴィン団長が自ら勧誘するだけあって・・・・・・素質は計り知れないわね。
当たり前のように付いて来るウィルの表情には、一切の恐怖が無い。そんなウィルを後ろ目に見たエルドはオルオやぺトラとの違いに少し心強く思った。

「止まれ」
突然リヴァイが木の上に停止した。
「どうしたんですか?」
リヴァイのすぐ後ろを飛んでいたグンタが、不思議そうな顔をして尋ねる。
「霧が以上に濃くなってやがる。他の班もうかつに動いてはねぇはずだ・・・・・・一度装備のチェックをしておけ」




「ねぇウィル、あなた巨人が怖くないの?」
ブレードの本数を確認していると、ぺトラが不意に話しかけてきた。
「巨人・・・・・・ですか・・・・・・?」
「そうだよお前・・・・・・巨人を恨んでねぇのかよ」
エレンも不思議そうにウィルに尋ねる。ウィルは少し考えた後、朴訥(ぼくとつ)とした表情で答えた。
「巨人は・・・・・・人間と似ている」
その言葉に一同は怪訝そうな顔になる。
「一人ひとり、に個性が、自己があるのかも、知れません」
視線を下に向けて紡がれれる言葉。
「だから・・・・・・何もして来ない間は、巨人を悪いと思いたくない、です。皆、仲良し・・・・・・」
話終えた後視線を上に向けたウィルは、自分に注目が集まっている事に気づき、顔を赤らめた。
「おい、コイツはクソメガネには近づけさせるな。思考回路が似通っている」
リヴァイの一言に、エレンを除いた班員達は苦笑いした。『くそめがね』が何を(誰を)指すのか分かっていないウィルは首を傾げている。



ようやく霧が収まってきた。まだ完全に見える訳ではないが先ほどに比べたらマシだろう。
「行くぞ」
リヴァイの一言で再び木から飛び立った。しばらく進んで行くと前、左、右の三方向から何かの足音が聞こえ始める。――巨人だ。
「囲まれてるな」
瞬時に周りを見渡したリヴァイは、足音の原因を見つけた。

右側に3メートル級と7メートル級が一体ずつ。前方に16メートル級が一体。そして左側に11メートル級、3メートル級、7メートル級の巨人が迫って来ている。
「ぺトラ、オルオ右側を頼む。エルドとグンタは前方をやれ。俺は左へ行くエレンとウィルは俺について来い」
リヴァイの指示通り、各自動き出した。











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