進撃の巨人 1話【返して】 トロスト区に残った巨人の駆逐。それが今回、調査兵団に与えられた任務だった。 リヴァイ班に属しているエレンだが、今回は調査兵団全員が分担して活動すると言う事で、ミカサ、アルミン、ジャンと共に行動している。 「この辺りには・・・・・・あまり巨人がいないみたいだね」 そう呟いて、アルミンは周囲を見回した。不自然なほどに静まり返った町は、どこか不気味だ。少しだけ緊張がほどけたのか、ジャンは強張った体を伸ばしながら呟いた。 「もっと他の所に行った方が 「違う。待って」 しかし、そんなジャンの言葉をミカサは遮った。 「あっちだ!!」 エレンも何かを感じ取ったのか、立体機動を使い動き出す。 「待ってエレン!」 その後をすぐさまミカサが追いかけ、後に続くようにジャンとアルミンも動き出した。 「あそこだ!!」 エレンは、前方に見える倒壊した家を指差した。 15メートル級の巨人が、誰かを掴みあげ捕食しようとしていたのだ。 「っの野郎!!」 「エレン!あっちからも巨人が来てるよ!」 飛び出そうとするエレンにアルミンが叫んだ。後方からも7メートル級の巨人が迫っていたのだ。 「ミカサ!あっちは頼んだぞ!」 エレンとジャンで目の前の巨人に向かい、ミカサとアルミンは後方の巨人へと飛んだ。 エレンとジャンが追いつく前に、15メートル級の巨人は掴みあげていた女性を捕食した。 「クソッ遅かったか!」 苦虫を噛み潰したように零すジャン。 「いや・・・・・・あそこに誰かいるぞ!」 エレンの指差した方向には、茫然と立ち尽くす一人の少女の姿があった。15メートル級の巨人もその少女に気づき、手を伸ばしている。 「ヤメロォォォ!!」 叫びながらブレードを構えたエレンだが、切っ先が届く距離ではなかった。 誰もが最悪の事態を想像した時、その少女は動き出した。 巨人の手が少女に最も近づいた時だ。巨人の手の上に飛び乗ると、背中に背負われていた鉈を取り出した。そのまま巨人の腕を駆け上り、首の後ろに回り込むと、手に持った大きな鉈を、うなじめがけて躊躇なく振り下ろしたのだ。 独特の蒸気を出しながら、15メートル級の巨人は崩れ落ちた。 立体機動もなしに己の運動能力のみで巨人を討伐した少女。 呆気に取られてその様子を見ていたエレンとジャンだが、我に帰って件の少女の方向に急ぐ。 「おい大丈夫か!?」 死亡した巨人の近くで何かをしている少女に、エレンは声をかけた。 「おばさんを返して・・・・・・」 虚ろな瞳で巨人の腹部に何度も鉈を振り下ろす少女。そこにミカサとアルミンが戻って来た。 「エレン!!・・・・・・その女は誰?」 訝しげな視線を送るミカサに、ジャンが口を開いた。 「その・・・・・・彼女が巨人を殺したんだ」 信じられないと言うような表情になるアルミン。表情こそ変わらないが、ミカサも同じ気持ちだった。 巨人が完全に蒸気に変わったと同時に、少女の動きも止まる。手にしていた鉈が音を立てて地面に落ちると、鉈を眺めるように少女の顔も下を向いた。 「おい・・・・・・大丈夫か?」 心配げに尋ねるエレンに、少女――ウィルは顔を上げる。その表情からは、感情を一切読み取ることが出来ない。 「・・・・・・」 無言のウィルの手には銀色に輝く十字のネックレスが握られている。 「それは・・・・・・」 エレンが聞こうとした瞬間、ウィルはエレンにもたれるように気を失った。 「・・・・・・!!」 不意に立ち上がるミカサを無視して、エレンはアルミンに尋ねた。 「どうするべきなんだ・・・・・・?」 「どうするって・・・・・・こんな所に置いてけないよ・・・・・・」 突然の事態に戸惑いつつ、エレンはウィルを背負って本部に戻った。 [次へ#] |