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進撃の巨人
14話【異常だな】

「天候の悪化による隊列の乱れが今回の敗因か・・・・・・」
エレンから聞いた話を思い出しながら、ウィルは怪我の手当てを受けていた。
「ん?何か言った??」
呑気な声をあげるハンジに慌てて首を振る。

「それにしても凄い傷だね・・・・・・痛かったろうに・・・・・・」
心配そうにウィルの傷を見るとゆっくりと包帯を巻き始めた。
「いえ・・・・・・私は全然」
――私はただ、ちょっとだけ横腹を食われただけ。
自分の目の前で肉塊へと変わって行った先輩兵士の姿を思い出し、自然と拳に力が入った。

「あの、ハンジさん」
包帯の巻き終わったハンジに頭を下げた後、ウィルは真剣な眼差しで口を開いた。
「何?」
「リヴァイ兵士長がどこにいるか知っていますか?」












布のこすれ合う僅かな音しか聞こえない一室で、エルヴィンとリヴァイは話していた。
「奇妙な事が分かった」
何枚かの紙をリヴァイに渡しながら、エルヴィンは静かに口を開いた。

受け取った用紙に目を通す。そこには最近リヴァイ班に回された新人兵士――ウィル・アルバードについて詳細に書かれていた。
「あいつが妙なのは、今に始まった事じゃねぇ」
「性格的な事を言っている訳ではない。彼女の出生についてだ」

それがどうしたと言わんばかりのリヴァイの表情に、エルヴィンは気にせず話を続ける。
「彼女の両親や出身地は不明になっているが恐らく・・・・・・ある少数民族の末裔だ」
「少数民族・・・・・・?」
リヴァイは眉を顰めた。
「その民族は、人の手が入っていないような密林で生活し、異常に発達した身体能力や回復力を有している」

彼女が兵団に来てからの事を思い出す。

巨人の腕を駆け上る脚力。大きな鉈を振り上げる腕力。僅かな天候の変化を嗅ぎわける嗅覚。常人には聞こえない人工的な音を拾った聴力。大怪我をしてもすぐに動き出す回復力。
「・・・・・・異常だな」
これまでの事を思い出したリヴァイは今更ながらに実感した。

「アイツがスゲェのは分かったが・・・・・・それだけの事だろ?」
エルヴィンは静かに首を振った。
「更にその民族は異常なまでに好戦的な性格の者が多いらしい」
「ウィルに限ってそんな・・・・・・」
普段の気の弱い姿を思い浮かべ一蹴しようとしたリヴァイだが、言葉が詰まった。
――あいつ、時々やけに強気に睨んできやがったな・・・・・・。

「思い当たる節があるのか」
「あぁ・・・・・・」
リヴァイは呆れたように呟いた。
「そこでだ。もしもウィルが無茶をしそうになったら・・・・・・お前が止めてくれないか。彼女は大切な仲間であり大きな戦力だ。危険な行動はとってほしくない」
重みのあるその一言に、リヴァイは真顔のまま頷いた。
「骨をへし折ってでも止めてやる」







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