鬼灯の冷徹
【最後の日、屋上にて】
冷たい雨が身体を濡らす。長時間こんな所に立っていたからか、私の体温はとっくに下がりきっていた。
「ほんと、最後の最後までいい事なんてなかったな〜・・・・・・」
高いフェンスに座ったまま、自嘲気味に笑う。
人が死んだら・・・・・・やっぱり天国やら地獄やらがあるのだろうか。そしたらそーだな、うん。図々しい事は百も承知だが最後の我が儘だ、聞いてもらいたい。
「天国でも地獄でもいいから、楽しいところでお願いしますね?」
死にかけの目を軽く動かし、私はフェンスを思い切り蹴った。
ジェットコースターが落ちるような感覚を感じながら、私の身体は風をきる。静かに目を閉じてみるとなんだか時間がゆっくりに感じるな。これが世で言う走馬灯ってヤツか。
最後に聞こえてきたのは、自分の口から出された謝罪。それから・・・・・・
「その願いだけは・・・・・・」
久しい、前にも聞いた事があるあの人の声だったーー。
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