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銀色
雨にひとり泣こうか 土方 悲恋



書類整理に一段落着き、外を見ると雨が降っていた。
あいつがいないのは頭でわかっていて、でも身体が理解しない。
気づくと、夜の街を歩いていた。

どこまで行っても月が見えなくて、空が雲に覆われていることに気づいた。
俺を濡らす雨は理解していたのに。
立ち止まったのは丘の上。
煙草は雨で湿っていた。
腕の中にいないあいつを思う。
全てを理解できるはずなどなかったのか?
悲劇気取って、俺の思ったことは足りなかったのか、間違っていたのか?
この厚い雲の上に月があることすら、今の俺にはわからない。
虚勢と見栄が、愛を語ることすら躊躇わせた?
あいつが離れてゆくことなどないと、高をくくっていた?
あいつは俺以外の誰かの腕の中、この空を見上げているのか。
俺には見えない月が見えているのか。
あいつの声も表情も、何もかもに俺は今も縋っている。
自分自身に嫌悪する。
幻が愛していると言う。
愛しているかと尋ねる。
くだらないことを言うなといつかの俺は言う。
そうやってあいつの全てを失った自分に気づく。
いつになったら月は見える?雨はやむ?


愛が見えないのなら
二人瞼を閉じればよかった。
今更一人で愛を、お前を見る。
毎夜それを繰り返す。
お前がここにいなくても。
今宵、月が見えずとも








あとがき
ポルノグラフィティより『今宵、月が見えずとも』を
イメージに書かせていただきました。
書いている間中リピート再生していました。
悲恋は苦手です……

081114

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