D.C.S.B.〜永劫の絆〜
出会い
〜人界・初音島光陽町某所〜
燦々と照らされる晴天下の下、多くの人々が行き交う。
その中に、気だるそうな影を一つ見つけた。
刹那だ。
刹那「あっづ〜〜〜〜〜。そういえば人界(こっち)って、今何月だったっけ?霊界だと、気候が整ってるから天候を気にする必要がなかったからなぁ………いきなりのこれは不意打ちだ……」
人界に一時帰郷した彼だったが、こちらの突然変異する気候を忘れてしまっていたためか、不意打ちのような温暖にノックダウンし掛けている。
さて、彼は今なぜここにいるのだろうか?
まあ、理由は至極簡単なものなのだが……
刹那「神王や魔王のオッサンには少しの間だけ時間潰してろって言われたけど、人界(こっち)の情報が皆無な俺にとってはどう暇を潰せばいいのだろうか?」
つまりはそういうことである。
やはりなにをするのでもなくブラブラするしかない彼の目に、一つのやり取りが映り込んできた。
…………
………
「ちょっ、止めてってばっ!ボクは今急いでるんだって言ってるでしょっ!?人の話聞きなさいよっ!」
男1「え〜?いいじゃんかよォ。そんなめんどくさそうなことなんて放りだしちゃってさぁ〜」
男2「そんなことよりも、俺達と良いことして楽しもうぜぇっ♪」
「だ〜か〜ら〜、ボクはあなたたちのような人には興味なんてこれっっぽっちもないのっ!だから、どいてちょうだい!!」
男1「そんなつれないこと言わないでさぁ〜。いいでしょ〜」
「あ〜もう〜っ!!」
…………
………
刹那「あれって、確かナンパってやつだよな………?うわ〜、俺初めて見たよ本物。あっちゃ〜、アレじゃあの女の人逃げられそうもないなぁ。周りの人達は我関与せずって感じだし………………さて、どうすっかなぁ」
うーん、と唸るように考えながら、刹那は目的の場所へと歩を進めるのだった。
男1「だから、ねっ?いいでしょ?」
「いいわけないでしょっ!?ボクの予定をなんだと思ってんのよ、あんたたちはっ!」
男2「っんだとこのアマッ!人が優しく言ってれば調子に乗りやがってっ。おい、もうめんどくせえから無理矢理連れて行こうぜ」
男1「バカっ!こういうときこそ慎重にやるんだろうがっ。もうチョイ待てってのっ」
男2「けどよォ〜」
あまりにも女性が頷かないことに苛立ちを見せる男2をなんとか治め、女性をもう一度説得?させようとしたときだった。
「どんなこと言われても、ボクは絶対にうん、なんて言わないからねっ!!」
男1「あのさ?君、自分の状況わかって言ってんの?俺とこいつは魔族と神族だぜ?だからこういう風に、力ずくで「どっかーーーーーんっ!」……プラメータっっっっ!!!!??」
男1が女性を脅そうと魔法をチラつかせた瞬間だった。
彼の顔面を台無しレベルにまで粉砕するほどの鉄拳が、女性の前を通り過ぎたのだ。
男1は当たり前のように面白い具合に放物線を描き、近くにあったゴミ捨て場に激突する。
「?、???」
あまりに突然の事態に困惑してしまう女性と男2。
そんな彼らを尻目に、青みがかった銀髪とサイレントブルーと呼ばれるまでに深い蒼をした瞳を持った少年が、呆れた息を吐いていた。
その声に反応した男2はその者に喰ってかかる。
男2「て、テメエいきなりなにしやがるっ!?」
刹那「あ?なにって、鉄拳制裁ですがなにか?」
男からの質問にも、まったく動じずあっけからんと答える。
その態度はまさに相手にしていないと言っても過言ではないのかもしれないほどに。
刹那「てゆーかさぁ。なに人の連れに手ぇ出しちゃってんの?死にたいの?御宅ら」
まるで射殺すような視線で男2を見据える刹那。
男2も自分の目の前に立つ男が只者でないことを本能的に感じ取ったのか、慌てて立ち上がり、そして、
男2「けっ。お、男がいるんだったら最初から言えってーのっ。マジでムカつくっ!覚えてろよォォっ!!」
なんともまあ、情けない言葉を吐き捨てて仲間である男1を抱えながらそそくさと退散すろのであった。
刹那「ふぅ。大丈夫ですか?」
「あ、ハイ。どうもありがとうございます!」
刹那「それにしても、災難でしたね。あんな変な奴に絡まれるなんてさ」
「ホントに助かりました。改めてお礼を……」
刹那「別に気にしなくてもいいよ。俺が助けたいと思って助けただけだからさ」
「そうなんですか……(なんだか、“稟”ちゃんみたいな人だなぁ)」
刹那「まあ、今度からは気を付けてね。それじゃあ」
「は、はいっ。それでは!」
軽く手を振って、刹那は女性と別れた。
………………
…………
……
〜??side〜
「……行っちゃった…」
折角助けてもらったのに、お礼の一つも出来なかったな。
それにしても、助けたいと思ったから助けた…か。
今時の男の子にしては珍しいなぁ。
まるで、ボクのよく知っている後輩くんみたい。
そんな思考に更けていると、急に後ろから呼びかけられた。
「っ!?」
その声に驚き振り返る。
するとそこには、
「ま・ま・まぁ♪」
「“カレハ”………」
他種族でボクの親友である“カレハ”の姿があった。
しかも、今の彼女の瞳には星が見える。
これは、絶対に“スイッチ”が入っているに違いない。
カレハ「まままぁ♪“亜沙”ちゃんがまだ知り合って間もない殿方と恋に落ちてっ。そしてその道は茨の……………」
これは完全に入ってるかなぁ。
はぁ、と小さくため息を零した。
それにしても、あの男の子とは、また会えないかな?
そのときは、きちんと今日のお礼をしようっ。
そう心に誓って、僕は未だに妄想の海へとダイブしてしまっている親友を現実の世界へと戻すため、サルベージを開始した。
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