[通常モード] [URL送信]

D.C.S.B.〜永劫の絆〜
終局―――その対価
〜初音島・柊邸寝室(刹那)〜


程良い体温と、心地よいさえずりが朝の寝室を満たしていく。

じんわりとした心地よさに、この部屋の主は静かに目を覚ました。



刹那「……………あ………れ?」


目の前に広がる見覚えのある風景。

そのことに多少の疑問と違和感を感じながら、刹那はベッドから身体を起こす。


刹那「……ぐっ、…つぅ…………なんだ、いった――――――っ!?」


身体を起こしてすぐに体中に走る痛み。

そのことに疑問を抱きながら、己の肉体へと視線を落とす。

そこには、治療によって巻かれた痛々しい包帯が、自身の身体を覆っていた。



刹那「え……?なん、で……?」


ふと零れた疑問。

それは、治療を受けた肉体に対してではなく、もっと“別なモノ”に対して。


刹那「えっと……確か、あの時俺は………っ」


自身の記憶を探る。

そう。あの時、刹那は――――――――




――――――
――――
――




刹那「くそ………、身体が、動か…ねえ………」


揺れ響く崩壊の音。

それを耳にしながら刹那は膝を屈する。


動かなければ閉じ込められると知りつつも、身体は言う事を聞いてはくれない。

そのことに悔みながらも刹那は諦めた。


人間、無理なことは所詮無理なのだ。

それを覆せるのは神かそれと同等の存在だけ。

ならばこれ以上足掻くことは無意味だろう。


これを終焉と呼ぶのなら、確かに自分はその時を迎えている。

それに抗う事はせずに、潔く迎えられるのも悪くはない。

そう思いながら、刹那は仰向けとなり、目蓋を閉じた。


その時――――――



「いつまでも寝てんじゃねえよガキがっ」

刹那「――――んぎッ!?」


突然の声と突然の鉄拳制裁。

そのことに頭を抱えながら悶えていると、急に身体を誰かに持ち上げられる浮遊感に襲われる。



刹那「っ!?だ、誰だっ!」


突然の出来事だが、対処できないレベルではない。

そう思い、今自分を担いでいる人物を跳ね除けようと顔を上げた時だった。


刹那「オヤ……じ……っ」

羅刹「よォ。我が愚息よっ」


そこには、紛れもない父、羅刹の姿があった。


刹那「アンタ……こんな場所でなにしてんだよ?」

羅刹「あ?なにって、そりゃあお前。“後始末”だよ、“後始末”」

刹那「“後始末”………?それって、一体なんのことだよ?」

羅刹「詳しく説明してる暇はねえんでな。そいじゃ、頼んだぜ“セフィム”」

刹那「セフィム……?って、あの“セフィム・ブランカ”っ!?」

セフィム「そうだが…?なにか問題でもあるのか?」


驚く刹那を他所に、セフィムの声がかなり近くから聞こえてくる。

そのことに刹那は辺りの見渡す。

しかし、セフィムの姿は何処にもない。


つまり、考えられる答えは一つ。



羅刹「つーわけなんでな。きちんと帰ってやれ。そんで、彼女達を幸せにしてやれ……っ」

刹那「待てよ親父っ!?あんたはどうする気だっ!まさか、この世界に残るつもりじゃねえだろうなっ?!」

セフィム「その通りだ。柊羅刹は、この世界に残る」

刹那「!?」


羅刹が言い掛けた言葉を、セフィムが代弁する形で速やかに口にする。

その事実に両目を大きく見開き、刹那は信じられないものを見るかのような眼でその“驚き”を現す。


そして、一方の羅刹はなんともバツの悪そうな表情で頬を軽く掻いているだけ。

詫びようにも言葉が見つからず、困っているような様だ。

いや、事実困っているのだろう。

そうでなければ、大雑把な彼があそこまでバツの悪そうな顔をするはずが無いのだから。



刹那「待てよ親父っ!おい!クソ親父ぃぃぃぃぃっっ!!!!」


虚しく響く、少年の叫び。

その声に、男は静かに手を上げて応えるだけ。


離れゆく背中。

その背中は、かつて理想を追いかけた男の背中。

叫びは次第に涙に変わり、彼の眼(まなこ)を歪ませる。


そして、扉が閉じる瞬間、




羅刹「――――――刹那、幸せになれ。そして、テメエの“道”を見つけ出せ。その先にあるモノを、見届けろ。テメエの仲間を信じて、テメエの誇りを信じて。その先へ、力強く突き進めっ」


父である男の、最後の遺言が、彼の胸へと刻み込まれた。

[Next]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!