D.C.S.B.〜永劫の絆〜
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香恋「ちょっとちょっとちょっとォォっっ!!!?」
豪快に振り回される薙刀。
それは先程の『舞い』を連想させる剣技とは違い、ただ振り回しているだけの単純的な遠心の運動。
先程香恋達に自身が誰なのか判別してもらえなかったことがお気に召さなかったのだろう。
茜華は目尻に若干の涙を浮かばせながら強引に薙刀を振り回している。
香恋「あんた、ちょっと危ないって!?ちょっ!?だから、悪かったって言ってるじゃないのよぅっ!?」
茜華「五月蝿い五月蝿い五月蝿ーいっ!!一目でわっちだと気づかぬ者に、生きている価値などないんじゃぁぁぁぁっっ!!」
香恋「めちゃくちゃ言うなぁぁぁっっ!?」
泣き事を言いたいのは山々だが、今の香恋にそんな余裕などない。
今はただ、如何にして敵の猛攻を躱し、相手の隙を突くかを考えるだけ。
―――――そう、思っていたのだが。
香恋「って、アンタ!なんだってでかくなってんのよっ!?」
茜華「なんじゃ?羨ましいのかえ?わっちのこのないすばでぃな身体がっ」
香恋「はっ。寝言は寝て言いなさいよね。スタイルに関してなら、私のほうがあんたより上よっ!」
茜華「なんじゃとっ!?ならば、どっちが上か測定して比べてみるかえっ!?」
香恋「いいわよぅ。どうせ勝つのは私だしぃっ♪」
茜華「いいじゃろうっ。吠え面かかせてやるわっ」
香恋&茜華『というわけで、測りなさいっ!!』
凍夜「………………どういうワケだ、オイ」
突然過ぎる彼女達の要求に、凍夜は頭を抱えながらそうツッコむほかなかった。
――――――
――――
――
〜管理外世界『クロノス』・某所〜
弾き合う鉄と鉄。
それは美しい花を一輪咲かせて儚く消えていく。
走り抜ける風に乗って刃は振られ、標的の命を刈り奪らんと疾走する。
その直後、再び一輪の花が咲く。
それは、“火花”という名の花ではなく“鮮血”という名の赤き花。
ゼムス「なるほど、思っていたよりもやるようだな」
悠「それって褒め言葉?それともただの皮肉?」
ゼムス「ふっ……両方だ」
悠「減らず口が………減らないね」
ゼムス「それは、お互い様……だろ?」
悠「………っ」
瞬間的に特効する二つの影。
その速度は光速。
あらゆる迅さを凌駕し、ぶつかり合う二つの影。
ぶつかり合う際の衝撃は予想を遥かに超えた破壊構造を以って周囲を完全な荒野へと変貌させる。
悠「―――――破道の一、『衝』」
ゼムス「――――っ!」
鍔擦り合いの最中に至近距離で放たれる鬼道。
殺傷能力は皆無だが、それでも相手を弾き出すだけの質量を充分に備えている。
故に、ゼムスの体躯は大きく弾き飛ばされる。
それも唐突に、それも突然に。
しかし、そのことに驚くことはない。
予想出来る限りのことは全て想定済みだ。
故に、悠の突然の攻撃など彼の持つ戦闘理論の中では想定の範囲内、という事になる。
ゼムス「浅知恵を働かせたようだが、所詮は想定の範囲内だっ!」
悠「想定の範囲内でも、隙が生まれれば油断と変わらないよっ」
吹き飛ぶゼムスの真横に現れた悠は、そのまま剣を真横から降り抜く。
しかし―――――、
ゼムス「想定の範囲内、というのは全てに於ける戦いの流れを読むことを指す―――――即ち、」
悠「なっ―――!?」
ゼムス「貴様の次の攻撃も既に予測済みだという事だっ!」
悠の真横からの攻撃は完全に見切られ、逆に悠の頭上目掛けて刃が振り下ろされる。
反応はした。しかし、肉体はその反応速度に追いつけず、半歩遅れた反応を示す。
そのもどかしさに苛立ちながら、無情にも刃は悠の頭上に喰らい付いた。
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