D.C.S.B.〜永劫の絆〜 Page23 士郎「まずい……………遠坂に殺される遠坂に殺される遠坂に殺される遠坂に殺される遠坂に殺される遠坂に殺される遠坂に殺される遠坂に殺される…………――――」 ゼルレッチがいなくなってから数分。 場は静まり返り、誰もが事の状況を理解出来ずにいる中で、士郎は一人念仏のようにぶつぶつと後に起こる身の危険に悶えていた。 悠「さてっと、意外な邪魔があって熱が冷めちゃったけど、仕切り直しと行こうか……?」 ゼムス「………そうだな。興が冷めては折角の殺し合いが台無しだ。その前に聞かせろ。あの“万華鏡”とはどのような関係だ?現存する“五人の魔法使い”の一人とあれほど親しげに話す者など皆無と聞くが……?」 悠「あー……、昔にちょっとあってね。あの人がさっき言ってた弟子ってヤツと俺達は少しだけ繋がりがあってさ。それ以来仲良くさせてもらってるだけの話だよ。まあ、仲良くさせてもらってるのは俺を含めた三人だけだけどね…………――――――それとキミの言葉を少し訂正させてもらおうかな。現存する“魔法使い”は“五人”じゃない。正確には“四人”だよ―――魔術師の端くれなら、それくらい頭に入れておいたほうが恥をかかずに済む回数が増えるよ」 ゼムス「そうか。ならば――――――」 瞬発的に地を蹴り、飛びかかってくるゼムス。 そして―――――――、 ゼムス「貴様を殺してからじっくりと頭に入れておこうっ!!」 魔術師、天空のゼムスは魔術を用いながら襲いかかってきた。 その瞬間、爆発的に戦闘が開始される。 ぶつかり合うのは己の意地と意地。 魂と魂の叫び同士がぶつかり合う。 そこにあるのは一つの結果をもたらそうとする意識のみ。 その中に善悪など存在しない。 否、元々争いに善悪など存在しないのだ。 どちらが正しくて、どちらが間違っているのかなど、誰にも判るわけもなく。 ただ己を信じ、正しいと思う道こそが“正義”であり、それとは真逆の位置に存在するモノこそが“悪”なのだと、人々は多くの戦いの中で実感していることだろう。 故に、この戦いにも善悪という概念は存在しない。 善悪など、元は人の持つ価値観から生まれ出た“偏見”の何物でもないのだから。 純一「さぁてと、俺の相手はお前か………。円卓の騎士団・第三騎士、朝倉純一だ。名前はなんて言うんだ、真・七宝聖天さんよ?」 「真・七宝聖天、“五月雨の時雨”だ。気軽に“しーちゃん”と呼んでくれっ」 純一「誰が呼ぶかよっ!?敵を目の前にしてなんつー自己紹介の仕方だよ、オイっ!?」 時雨「そうか、呼んでもらえないか……………しーちゃん、ちょっとだけ寂しいな」 純一「気色悪い奴とあたっちまったな……………」 純一の目の前に立ちはだかる男、“五月雨の時雨”。 一見律儀そうな彼なのだが、外見とは裏腹に中身は何気に傷つきやすい硝子のハートを保持しているようだ。 そのことを悟り、純一はうんざりしたようにうな垂れるほかなかった。 ――――――― ――――― ――― ― 〜虚空神殿・某所〜 振るわれる刃達。 それは主の命により、刈り奪るべき獲物の命を刈るために。 一つの影が後方に吹き飛び、体勢を崩す。 そこへ叩き込まれる怒涛の剣嵐。 まるで獲物に喰らい付く様は、獣の牙のようだ。 しかし、その剣嵐も目標を捉えることはなく。 目標に叩き込まれた時には、ソレは空を切っていた。 目標を失った対象は空を切ると同時に風を起こし、周囲の瓦礫から砂埃を発生させる。 その中で、目標となった者はさらにその者より距離を離す。 雷景「ちィ―――!?なんつー剣技してやがんだ、あの野郎っ!!」 毒づきながら周囲を警戒しつつ、砂埃より飛び出す。 砂埃から出てくる雷景の身体には、無数の切り傷が出来ていた。 どの傷も決して浅いとは言い切れるモノではなく、下手をすれば致命傷になり兼ねないほどの重症でもある。 しかし、今の彼はその傷達に構っていられる余裕などない。 それは――――――― 凍夜「どうした、真・七宝聖天。逃げてばかりでは戦いにならんだろう」 雷景「っ!?くそ―――!」 雷景が砂埃を凝視しながら後退を続けていると、砂埃より飛び出してくる影が一つ。 そう。彼と戦っている凍夜だ。 凍夜は彼の真横に移動すると、瞬時に横薙ぎの一閃を見舞ってくる。 その攻撃を身を反転させながら触れさせてはならない個所よりズラし、そして最低限の防御を敷く。 次の瞬間、浅目の切り傷とともに吹き飛ぶ体躯。 致命傷はこれで何度も免れている雷景だが、それもいつまでも続くほど甘くないことは理解していることだろう。 故に、反撃の糸口を探す。だが――――― 凍夜「どうした?動きが最初に比べ鈍くなっているぞ、出雲雷景」 雷景「―――――――っ!」 声が聞こえたと思えば既に背後に回られ、間合いは完全に凍夜が掌握している。 完全な凍夜の間合いにより防御は間に合わず、致命傷を逃れようと身を捻らせようとするが、恐らくそれも間に合わない。 次々と頭に浮かぶ策が潰されていく中で、自身の胸に走る痛み。 それが自分が斬られたのだという事に気が付けたのは、自身の胸から血が出血しているのを見てからだった。 雷景「く………そ―――――っ(…………………姉、貴………)」 今まで以上に深く、そして重い一撃を受けた雷景は、まどろみになる意識の中でたった一人の肉親のことを思い浮かべながら意識を手放した。 [Back][Next] [戻る] |