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D.C.S.B.〜永劫の絆〜
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〜虚空神殿・神殿前管理局機動部隊待機拠点地〜



クロノ「そちらの状況はどうなっている?」

局員A『依然として次元振は治まる兆候が見られません。暫くは続くものかと……っ』

クロノ「了解した。では、引き続き調査と索敵、そして中和のほうを頼む」


向こうからの返事を待ってから通信を切る。

一つ息を吐いたクロノの表情は、いつにも増して疲れているようだ。


フェイト「ごめんね……クロノ。私たちのためにわざわざ来てくれて」

クロノ「気にする必要はない。それに、今次元(うみ)は荒れ狂っている状態だ。そんな場所にいられるわけがないし、僕もこの戦いに関わる者として当然の義務でもある」

はやて「それにしても、クロノくんたちアースラ艦隊が来てくれたのは不幸中の幸いや。これなら私らの手に負えんような傷の手当ても充分出来るし」

なのは「にゃはは。そうだね」


無理を通してまでやってきてくれたアースラクルーのメンバーに、若手三大エースである彼女達は心からの謝礼を送る。

本来、このような戦場地にクロノのような提督クラスの幹部が来ることはない。

だが、現在頻繁に多発している“次元振”の影響もあり、近くまで来て作戦の指揮をとっていたクロノ・ハラオウン提督率いる『アースラ艦隊』は次元の海に居ることを得策と思わず、大至急彼女達が戦闘を行っているこの世界へと降り立ったというワケだ。


クロノ「それにしても、本来ならばこのような傷の治療は行う予定はなかったのだが…………」


多少呆れも混じった声でクロノは現在傷の治療を受けている円卓の騎士団のメンバーを凝視する。

彼らの負っている傷は、正に管理局が忌み嫌う物理破壊に特化した質量兵器で受けたものだ。

管理局の上層部にはあくまで“魔法の力を行使した武力組織による反乱”として事件の内容を提出している。

上層部の御偉い方も過去に起こった『PT(プレシア・テスタロッサ)事件』や『闇の書事件』を知っているが為に簡単に騙すことが出来たのだが、流石に彼らの負った傷を説明するには充分に証拠や資料が不足してしまっている。

それに加え、敵の首謀者が従えていた“十刃”のメンバーも生きている者を上げればたったの二人だけ。

つまり残りのメンバーは死亡したという事になる。


管理局は法やその罪状に対しての罪滅ぼしに関してかなり口煩い連中が多い場所だ。

そんな者達が多い場所に、敵のメンバーをほとんど“殺した”などと言えばどうなるのか考えるだけでも頭が痛いのは目に見えている。


クロノ「(なんとかして報告書を誤魔化さないとな。あんまり公(おおやけ)に出来ない能力(チカラ)も関係しているわけだし……………はあ。エイミィ、僕は鬱になりそうだよ………)」


これから行う一部の改竄(かいざん)と捏造作業を思うとクロノの悩みは後になるまで消える気配はなさそうだ。

そんな苦悩しているクロノを他所に、純一達はこれからの出来事について話し込んでいた。


純一「とりあえず、管理局に在籍するんだったら死神の力は伏せておいたほうがいいよな?」

稟「そうだな。死神の力は、管理局にとっても脅威になるのは目に見えてるし……」

なのは「にゃはは…………ごめんね、二人とも。その代わり、二人に合ったデバイスを最高級の機関で造らせるからっ♪」

フェイト「流石にどうなるかはわからないけど…………でも、出来るだけ二人に早く馴染めるようなものにするつもりだから、安心して」

純一「お気遣いどうも。だけど、合間見て力の鍛錬だけはしとくかな。必要なときに使えなくなってたら堪らないし」

稟「その意見には同感だな。さてっと、ほかのみんなはこれが終わったらどうするつもりなんだ?」


純一の物言いに苦笑しながらも頷く稟は、ふと思ったことを口にした。

彼もそうだが、これからの進路はみんな同じというわけではない。

確かに大体のメンバーは固まった状態で短期間だが管理局入りするわけで、その後はどうなるかは判らない。


諒「僕は昔の生活に戻るだけだよ。ただ、一人旅しながら皆に手紙を出すってことだけだけどね」

香恋「私はどうしよっかなぁ?芸能活動も再開しなくちゃならないし……多分、みんなと遊んでいられなくなるかもしれないわねぇ………」

創「あ、そういえばお前アイドルだったっけか。随分長いこと一緒にいるもんだからすっかり忘れてた」

サクヤ「そういえば、私たちが出会って既に半月。長いようで短かったですねぇ」

稟「いや、長くないぞ。事実、短い方が強いから」


稟のサクヤに対する静かなツッコミにみんなが一斉に笑いだす。

安寧な時を目前とした結果がこれ。

とても安らかで、そして落ち着いた雰囲気。


しかし、彼らの笑顔の裏側には、世界が破壊されてしまうかもしれないという恐怖が張り付いていることを誰もが知っている。

否。知らない者はいないだろう。

そう。この戦いは“この世界”の命運を賭けた戦い。

故に笑っていられるうちは笑って過ごそう。

だが、それも場所を考えての話だ。

それが出来るから彼らは笑う。

今は笑っていなければ先に進めないような状況ではないにしろ、笑う事で気を紛らわすことは出来る。

それのみが、彼らが無意識のうちに実感していることなのだから。



ライガ「………………三人とも、大丈夫なのかな」


心配そうな面持ちの少年は、遥か彼方となってしまった場所にいる者達のことを想う。

今の彼の表情は暗く重い。

大切な者達が心配でならない者の顔だ。


ルン「きっと大丈夫だよライガ。だって、みんな私たちよりずっと強いもん」


そんな彼の言葉に確信を持って少女は返す。

そう。彼女は知っている。

彼らの持つ強さを。

端に力が自分達より強いという意味で言っているのではない。

彼らの心の強さを知っているから言えることなのだ。


ライガ「ルン………」

ルン「だから、父さんたちが帰ってきたとき安心させてあげられるよう、私たちはせめて笑顔でいようよ。ね?」

ライガ「………………うん」


あどけない少女の言葉に、少年は静かに頷く。

子供心に理解した、彼らの心の強さ。

それを知っているからこそ、ライガは頷ける。

そして、彼は思う。


ライガ「ねえ、ルン―――」

ルン「なに?」

ライガ「俺、強くなるよ…。父さんみたいに心も体も…………そして、いつか父さんたちみたいにルンやほかのみんなを護りたいっ!」

ルン「ライガならきっとなれるよ。私はそう思う♪」

ライガ「―――――ありがとう、ルン」


少年の想いは少女に伝わり、少女はその想いに応えるように彼にそっと手を伸ばす。

少年も少女の伸ばされた手を取り、互いに誓いを立てる。

それは、いつしか語られるであろう物語を築くような『願い』を以って。




ライガとルンの二人が年齢とはあまりにも不釣り合いな接し方、そして想いの表し方をしている最中、それを物陰から見守るのはかなりいやらしい笑みを浮かべたはやて(たぬき娘)と、それを見て呆れてため息を吐く者、そしてなにより二人の信頼関係の構築の速さに目を奪われる者と、その種類は多様だったようだ。

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あきゅろす。
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